君の光と僕の影 | ナノ
#24 涙影
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毎日使ってる部屋なのにあんまり概視感が無くて、やたらと腕の中の#name#の感触ばかり意識の中に溶け込む。
余裕がない。
まさしく、俺はそんな感じなんだろう。
抱くだけなら、いくらでも相手は調達出来る。そういう女に困った事は無い。
#name#をベッドへゆっくり降ろして、跪く格好で肩口に手を添えてただ真っ直ぐ見据える。皮肉の1つ位言えればコイツを安心させる事が出来るだろうが、それすら叶わないと思う。
「…お前が嫌がっても、止めてやる自信がねぇんだい。勝手なのは解ってるよい。だから、」
せめて、マルコだと思えなんて、鬼畜だなと自分でも白ける言い分だ。そう思った時だった。
手が、
俺の
頬に触れた。
「#name#…?」
「クロが、マルコな訳ないじゃない。全然違うよ。何もかも、全然、違う。」
ヒドく胸が痛かった。当たり前の事を言われただけなのだが、ズキズキと痛む。
俺は、マルコには成れない。
当たり前の、事なんだっていうのに。
「…そうかい。じゃあ、せいぜい嫌がれよい。」
#name#を抱きたい。
#name#に触れたい。
#name#でなければ意味がない。
そう純粋に執着して、欲情するなんてのは初めてかもしれなかった。
だから、止め方がわからないんだよい。
ヒドいことをしているのに、優しく優しく俺の指先は#name#に触れて、#name#が嫌がって泣いたら、俺も何だか泣く様な気がした。そっと、触れるだけの口付けで#name#の反応に集中…いや、#name#の反応にビビってる俺は矛盾そのものだ。
――欲しい
怖い
――奪う
逃げないで欲しい
自分を誤魔化すように#name#の後頭部を掌で押さえて、舌先を差し入れる。
#name#に抵抗されてないと気付いたのは、暫く口内を味わってから後の事だ。
「っ…ハァ…。何で、逃げねえんだよい」
額を、#name#の額にくっつけて思わず零した。もっと、泣くんじゃねえかと思っていたから。
「マルコの…代わりなんて言わないでよ」
「……な、に?」
「クロが、こう、したいんでしょう?」
俺の顔を両手で包んで、今度は#name#が真っ直ぐ俺を見据える。
「クロが私を好きなんでしょう?」
ポロリと#name#が涙を零す。泣きながら笑ってて、俺は無意識に、親指でソレを拭った。
拭いながら、泣きたくなった。
「…ああ。俺が、#name#を欲しいんだい。兄貴のモンだとしてもよい、構わねえ位…な。狡いのは、解ってるよい。」
キュッと俺の胸元のシャツを握って、#name#が笑った。
「私の方が、狡いよ。」
「……は?何言って…」
「マルコと違うから、クロが好き。2人が好き。本当は優しいクロが、すごく愛おしい。」
パタパタと零れ落ちる涙をもう拭ってやることは出来なくて、#name#を強く抱きしめて静かにベッドへ沈んだ。
触れる手も唇も壊れたように歯止めが利かなくなって焦る反面、嬉しかった。
「#name#、後悔しねえかい?」
「…多分、クロと同じ、気持ち。」
ポツリと呟いた言葉に、胸が熱くなった。
再び唇を合わせ、#name#の上着に手を差し入れる。
甘く熱い息を#name#が吐いた時、
ベッドサイドに放っておいた俺の携帯が鳴り響く。
チラリとみえた電話の主に、
冷や汗が出た。
――――着信:マルコ―――――
何故ソレに手を伸ばしたのか、
よくわからないまま、
通話のボタンを押した。
#name#を見下ろしたまま。