君の光と僕の影 | ナノ
#19 友光
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工場に戻ったら…居た。
「ヨォ!さっき振りだなぁ!」
「女好きリーゼント…?!」
「「ブッ!!ギャハハハハ!!」」
思わず零した一言に、クロとエースが吹き出して腹を抱えて笑い死にそうになっている。本当に、口は災いの元なんである。
「えー?!ひでぇなぁ。俺、まだ自己紹介しかしてねぇのに。」
引きつった笑いを浮かべるサッチさんは、参ったなーと言いながらリーゼントの後ろ側をガシガシと掻いている。そこに、クロがニヤニヤしながら口を開いた。
「行いってのは滲み出んじゃねえのかい、なぁ?エース。ブッ!クククッ!!」
「うんうん!!サッチはヒワイなんだよなっ、居るだけで。ブッ!!ウヒヒヒ!!」
「お前らなぁ…。否定はしねぇけど。」
し、しないんだ?
ヘラヘラと笑って、冗談にしてくれているサッチさんに若干救われつつ買ってきた飲み物を袋ごとクロへ差し出した。
「あー、お前が来るんなら余分に買っときゃよかったねい。」
チラッとサッチさんに目をやってクロがガサガサと袋を開く。その様子にサッチさんが目を丸くした。
「な、き、気持ち悪ぃ!クロ。何で?俺なんかしたか?!毒でも盛んのかよ?」
「ハハッ!違うって、サッチ。#name#ちゃんが居るだけでクロこんなんなんだよ。」
エースがニカッと笑って私を指差しながらそう言うと、サッチさんは丸くした目をゆっくり、細めた。
「へぇ…。エースの彼女じゃなかったのか。クロの彼女なんて初めてだな。」
どうやらお客さんという訳でもなさそうなサッチさんに、どこまでを言っていいか分からずに私は曖昧に笑ってみる。
すると、低い声でボソリとクロが答えた。
「俺じゃねぇよい。…マルコのだい。」
「へぇ!?マルコ、こんな可愛いコ捕まえたなんて全っ然聞いてねぇぞ俺?」
「当たり前だよい。サッチに言ったらシレッと横取りすんのがみえみえだろい!」
「「あー。うん、うん。」」
横槍を入れるように私とエースが頷くと、サッチさんはガックリうなだれてそれから暫く一人、ボヤいていた。
「ひでぇ…仮にも親友で、ここのオーナーだぜ、俺ってば…。」
「え?…サッチさんがクロの共同経営者ってこと?」
驚く私にクロがひどく不快そうに頷く。
「こんな奴でも、商才だけはあんだよい。まぁ、本業はシェフだからよい、毎日居ねえのは助かるよい。」
「だから、ひどいってんだよっっ!!」
サッチさんが来て、急に三倍くらい騒がしくなった工場はそれでも居心地が良くて、初めにこの仕事を好きだと言ったクロの気持ちが何となく分かった気がしたのだった。
「あらためて、宜しく#name#ちゃん。俺は、サッチ。マルコとクロの幼なじみで、親友だ。…マルコに飽きたら、いつでも…グェッ?!」
「ク、クロっ!!」
「いっぺん、死んどくかよいサッチ?」
クロの回し蹴りを派手に食らって涙目になりながらそれでも、笑ってウィンクしてみせるサッチさんに、思わずつられ笑いをしてしまう。
「よかった!クロとマルコにこんな楽しい仲間が居て。…ね、クロ?」
嬉しくなってクロにそう笑いかけると、クロは顔を少し赤くして「そんなことねぇよい」とボヤキながら、誤魔化すようにぬるくなり始めたカフェオレを飲み干していた。
嬉しい。
クロとマルコしか知らなかった私にも、エースとサッチさんの存在は大きく、大切なものになっていくだろう予感がしていた。