君の光と僕の影 | ナノ
#08 謎光
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あの日マルコに見えない壁を感じてから心の中に不安が生まれた。
何か隠し事をされている。でもそれを訊くなと言わんばかりの雰囲気に益々壁が高くなっていくのを感じていた。
なるべく態度には出すまいと努めていたが、マルコは何かを悟った様に切ない目をしたまま何も言わずにいた。その態度が更に心を抉り胸がぎしりと軋んだ。
クロとの関係は益々悪い展開になっていく。この間なんか俺の物に一切触るなと凄い剣幕で怒鳴られ泣きそうになった。
どうしてそんなに壁を作るのか、そして何故マルコと別れさせたいのか、考えても考えても出口の見えない問題に正直今にも心が折れそうだ。
そうして未だ晴れない心を抱えたまま、立て込んだ仕事を片付けた時には真夜中をとうに過ぎていた。
疲れた身体と憂鬱な気持ちでやっと帰宅すれば、目に飛び込んできたデジャブのような光景に思わず身を固くする。
「…クロ」
「…遅ぇんだよい」
「なに?言っとくけど部屋にはあげないからね」
「…ここでいいよい」
クロにもだいぶ慣れてはいたが、やはりあの日を思わせる光景に身体が強張るのは仕方がない。
ぎこちなく隣に座れば、少しいつもと違う雰囲気を漂わせながら、親は何をしているのかなど意味の分からぬ問を投げ掛けるクロに思わず首を傾げた。
親?私の両親がどうかしたのだろうか?そんな事を訊く為にこんな夜中まで待っていたのか?
疑問は益々広がったが、初めてこんなに長くクロと話したなと思いつつやはり気になるのはあの日の事だ。
「それより…なんであんな事したの?」
「……。あんたどんな事があってもマルコとは別れねぇ気かい?」
「その…つもりだけど、ねぇ、何でそんなに別れさせたいわけ?」
「…、きっと別れるよい。遅かれ早かれ、いずれな」
「っ!なんなのよ、理由も言わないで!マルコもクロも隠してる事があるなら言いなさいよね!」
「マルコから聞けよい」
「いや!今聞きたい!」
「……チッ、来い」
私の問い掛けには答えず、必ず別れると嘲笑うように告げられカッと頭に血が上った。
マルコに聞けと踵を返すクロを咄嗟に掴み、こうなったら厭でも聞き出してやると食い付けば、鬱陶しそうに舌打ちを返され腕を取られる。
クロの愛車であるバイクに跨がりマルコの元へと向かう中、初めて乗る不安定な乗り物に腰が引け震える私を、あのクロが気遣うように手を重ね握り締めてきた。
そんな初めて見せるクロの優しさに背中がむず痒くなった。今日のクロは様子がおかし過ぎる。
そんな疑問だらけの頭だったが、重ねられた手から伝わる温もりに不安な心がじわじわと溶け出していくのを感じていた。