ナルシストなマルコ byノア
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オレはモテる。
自意識過剰?んな訳あるかい。これは紛れもねぇ事実だよい。
顔良し。スタイル良し。センス良し。おまけに金なんざ捨てる程ある。
そんなオレを女がほっとく筈がねぇ。
それを証拠に口説いた女は皆落ちる。
街を歩けば逆ナンは当たり前。すれ違う女は皆目を潤ませ視線を送ってきやがる。
そう。オレは正真正銘モテ男だ。
そんなオレは今街を歩いている。特に用はない。暇潰しだ。
暫くふらふらと歩いていると、不意に声を掛けられた。内心『またか』と溜め息を吐きながらも、声のする方へ視線を向ける。
まぁ、タイプと言えばタイプだろう容姿の女に、何か用かという眼差しを送った。
『あ、あの…』
もじもじと顔を赤らめ、俯いたまま言葉を濁す女に徐々に苛々が募ってくる。
用があるならさっさと言えと、どうせ彼女はいるのかか、連絡先教えて下さいとでも言ってくるのだろうと、大方予想が付く相手に先を促す様に少し鋭い視線を送る。
『何だい?』
しかしオレは紳士だ。
至って優しい声色で問い掛けてやる。
『ぇっ…と…』
オレの問い掛けに漸く顔を上げた女は、それはもう今から愛の告白でもするような面持ちだ。
『オレに用かい?』
告白か…まぁ、一度くらいなら抱いてやってもいいがねい。
『その…あの…』
チッ…苛々するねい。早く言えよい。なんならオレから誘ってやろうかい?
『あー、あれだ』
『開いてます!!』
『あ?』
オレの言葉を遮るように突然女が声を上げた。空いてます?今から用事はないと言う事か?
『あーまぁ、構わないよい』
女の誘いに乗ってやった。どうせ予定もないしねい。
『いやっ、その…違うんです』
違う?更に顔を赤らめた女は、再び俯き蚊の鳴くような声でそう告げる。
『じゃぁ何だい?』
おれも再度問い掛けた。
幾らこのオレでも流石に女の意図が分からない。
『前が…』
前?以前からオレを知ってるのか?あー、前から好きで今私はフリーだと言いたいのか。
『悪いがその願いは聞いてあげられないねい』
思わせ振りはいけねぇ。しっかりと断りを入れ、それでも構わないという奴じゃねぇと後々面倒臭いからねい。
『ぇ?でも…』
『でも何だい?』
あぁ、こいつはダメなタイプだねい。お堅い女は御免だよい。
『もぅいいかい?急いでるんでねい』
話すだけ無駄だ。他の男と宜しくやれよい。
『あっ!待って!』
『チッ』
しつこい女に思わず舌打ちが出た。
あーもう何だよい!?そんなにオレの事が好きならつべこべ言わずに頷けってんだい。
『何だよい!』
今度は苛つく心を隠す事なく、呼び止める女に噛みついた。
『ズボンの前が開いてます!!』
『はっ!!!?』
『す、すみません!失礼します!』
そう勢いよく言い切った女は、真っ赤な顔で走り去った。
『…………………おっと』
何事もなかった様にチャックを上げたオレは、先程の恥ずかし過ぎる台詞を聞いていた周囲を一睨みし、平静を装って再び歩き出す。
ふっ、オレとした事がなんたる失態。
まぁ、まぁアリだろ。なんせこのオレだ。
チャックが開いてる?
態とに決まってるだろい?
サービスだよい、サービス。
そうして今日もオレは歩き出す。
そう。この世の女共の目の保養に…
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