青い三角定義 U



「#name#、もう帰るのか?」
「あっ、エースさん!」

そんな愛情セールスを続けることさらに数日。
いつものやりとりの後マルコの部屋を出てすぐにかけられた声に、#name#は笑顔で振り向く。

「はい、また明日来いと言われたので!」
「おう…聞いてはねぇが、多分そういう意味じゃないと思うぜ!」
「そんな気がします!」

ハハハ、と二人して笑ったあと、エースがおもむろに#name#の手をとる。

「今サッチがおやつできたって言ってたからさ、食っていけよ」

そう言ってにっこり笑うエースにつられるように、#name#は大きく頷く。

「はいはい!いただきます!」
「そうこなくっちゃ!」

わーいわーいと喜びながらキッチンへ入ると、上機嫌で迎えたサッチがティラミスを出してくれた。

「わー美味しそう!美味しい!いただいてます!」

忙しなく笑顔で食べ始める#name#の前に、サッチは椅子を持ってきてどっかりと座り込む。

「そりゃよかった。#name#ちゃん、毎日頑張ってるから労いにと思ってさ」
「えへへ、ありがとうございます!」

そう、私は絶賛頑張り中の恋する乙女。

どこから話しましょうか、あれは十日ほど前のことです。
私が歩いていたら、買い物袋からリンゴが転がっていってしまって…それを爽やかな笑顔で拾ってくれたのがマルコさんでした。
もうね、一目でビビビッときたんです!恋の雷が!

「…俺の記憶ではリンゴっつーか買い物袋ぶちまけてた感じだったけどな」
「それに爽やかな笑顔じゃなくてあれは呆れ顔だと思うけどな」
「そこら辺は脳内修正済みです!ってか心を読まないでください!」
「声に出てんだよお前…」

まぁとにかく、これは運命と思って告白したわけです!即!
しかしハイと言ってくれたにも関わらず、照れて逃げ出すマルコさん…
そこで、その場にいたエースさんとサッチさんに居場所を聞いて、毎日愛情表現に来ているというわけです!

「まさか自分で船に縄引っ掻けて上ってくるとは思わなかったけどな!」
「#name#ちゃんに気付いたのが俺じゃなかったら危なかったんだぜ?」

大笑いするエースに、やれやれと苦笑するサッチ。

「だから読まないでくださいってば!でも本当にお二人には感謝してます」
「まぁ俺たちは応援するぜ!#name#ちゃんみたいな度胸のあるかわいい子なら大歓迎だ!」
「えへへー」

しかし脳内修正版はさておき、マルコさんのことは本当に好きだ。
一目惚れなんてしたことなかったし、あまり男の人に恋愛感情を持ったことはないんだけれど、彼は別だ。
勘としか言い様がないが、この勘にはなぜか自信がある。

「運命、なんでしょうねぇ」

#name#はぽつりと呟くと、御馳走様でしたと手を合わせて席を立つ。

「それじゃあまた明日来ますね!」
「おう!また呼んでくれれば乗せてあげるからさ」

無茶するなよ、と笑うサッチとエースにお辞儀をする。

マルコさんたちがこの島を出るまであと数日。
振り向いてくれないかもしれない。好きだと言ってくれないかもしれない。
ただ、もっと伝えておけばよかった、なんて後悔だけはしないように。

「よーし、明日こそ!」

#name#は少しだけ上を向くと、にっこり笑いながら町への道を駆け出した。






*prev next#



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -