一周年記念頂き物



もぅサイトを始める以前から好きで好きで悶えていたきりんさんからこんな素敵なローのお話を頂きました(´ω`)
頂きましたといってもあつかましくくれくれとねだったのですが、ここは大海原のように広い心の持ち主きりんさん!
書いていただきました(☆ε☆)
きりんさん!いや、神様!本当にありがとうございましたm(__)m







『…あー…いや、簡単なリボンだけでいい』



佇むのは、自分に似つかわしくない場所

そして手渡される、自分との組み合わせに違和感しかない“モノ”


柄にもないことをしているという自覚はある

片手にひらひらとリボンの揺れるソイツを持つ様子に…



『…とんだ見せ物だな』



などという呟きが漏れてしまうのも、最早仕方がないことで



『まあ…いいか』



しかし、結局この結論に達してしまうあたり

相当…いや、どうしようもない程……そう…アイツに……





『……さて…』



確認した時刻は、待ち合わせジャスト

だが、落ち合う場所はここからさらに5分程先


走るか?

いいや、そんな馬鹿なことはしない


きっと、アイツは呑気にそこでフレーバーティーでも飲んでるはず

その為に、待ち合わせ場所をオープンカフェにしたんだ



『……快晴だな』



数日前の予報では、曇ると言っていた

雨じゃないだけマシか…と思っていたが、嬉しい誤算というものは存在する


まあ、それでもアイツは「暑いから曇ってる方がいい」なんて

可愛げのないことを言うんだろう



走るなんて馬鹿なことはしない、と言っておきながら

若干、早足になっている自分に苦笑してしまうのも事実で


気持ちがはやってんのか…はたまた…



『………あれか』



視界に入って来たカフェ

そうして参道側に沿い、パラソルの掲げられたいくつかのテーブル席

その一つに腰掛けている、後ろ姿


間違いない、#name#だ



『…賭けてみるか』



アイツの飲んでいるモノ


ホット、ではないはず

フレーバーティー…そうだな…


ごろごろとカットされたフルーツ入りの…



『……ああ、やっぱりな』

『っ?!』

『正解』

『ロー!なに、…びっくりするじゃない…!いきなり驚かせないでっ』



ムッと表情を歪めた彼女の正面の席へ腰を下ろすと

こちらに気付いた店員に軽く手を上げ、「アイスコーヒー」とだけ口にする



『…さっきの、どういう意味?』

『なんだ』

『だから、正解、ってやつ』

『あー』



ここで、開口一番、「どうして遅刻したの」と問わない辺りが流石だな

彼女の感覚は、おれと良く似ている


なので、こっちも素直に答えてやろう



『お前の飲んでるモノ』

『え?…フルーツアイスティー?』

『そう、きっとソイツを飲んでるだろうと賭けてたんだよ』

『…誰と?』

『一人で』

『…なにそれ、ばかじゃないの』

『くくっ』

『んー…でも…それなら、わたしも正解』

『?』

『絶対、ローはアイスコーヒー頼むと思ってたから』

『へえ?見破られてたのか』

『そうだね、お見通しでした』

『くくく』



タイミング良く運ばれてきたアイスコーヒーは

少し、火照る身体を冷ますのにちょうどいい


目の前では、ぷかぷかと浮かぶフルーツの上で

ハートのピックをうろうろさせている彼女



『#name#、リンゴ』

『え?』

『そのリンゴ』

『食べたいの?』

『ああ』

『マスカットじゃなくて?』

『今はリンゴの気分だな』

『なにそれ』



言いながらも、迷わせていたピックをリンゴへ突き刺し

「はい、あーん」なんて茶目っ気のあることは言わず、手渡してくる彼女へ



『なんだ、食わしてくれねェのか』

『…暑さで頭がやられちゃったの?』

『くくっ、今日はいい陽気だろ』

『なら、頭の中が春色?』

『お前はほんと、可愛げがねェな』

『そうね』



ツンとした物言いながら、表情は緩く微笑んでいる様子に

こちらまで瞳が細くなる


口へと運んだリンゴは、紅茶の香る味


ああ…そうだ、…そろそろ不意を突くのも悪くねェな



『#name#』

『なに?やっぱりマスカットも食べ……』



言葉が途切れたのは、おれが何気なく差し出した贈り物のせい


その様子に文字通り、目を点にして固まる彼女へ

もう一度、「ほら」と言って催促すると



『………』

『どうした』

『……なに…ええと……なに…?』

『くくっ、そんなに珍しいか?』

『え…』

『おれがお前に、“花”を贈るのは』



そう、冒頭で寄っていた店はフラワーショップ

そして、当然そこで購入したのは花…それも花束ではなく、たった一輪の花だ



『…いろいろと、こんらんしてる…』

『なら、一つずつ解決してやるから言ってみろ』

『……この花…どうしたの?』

『買った』

『…どうして?』

『今日が記念日だから』

『……え?』

『記念日』

『……うそ…』

『なんだ』

『…まさか…おぼえてたの…?』



記念日…そう、記念日だ

何のかって?


おれと彼女が一緒になって、ちょうど一年

まあ言うなれば、一周年記念、ってやつだ



『らしくねェ、って思うだろ』

『うん』

『くくっ』

『でも、嬉しいよ』

『そうか』



本当に嬉しそうに、一輪の花を眺める彼女は

そこで、まじまじと花弁を見つめ



『…これ、ダリアだよね?』

『ああ』

『ダリアにした意味って…何かあるの?』

『今日にぴったりな意味がある』

『え?』

『ソイツは、今日の誕生花だ』

『え!』

『6月5日』

『……そうなんだ…』



意味を知ったことで、さらに愛おしそうに花弁を少し撫でる様子に

柄にもなく、“幸せ”というヤツを感じる自分は…


まあ、仕方ない、と言っておこう



『そうだ』

『?』

『贈るついでだが…実はソイツには釘を刺す目的もある』

『…くぎ?』

『ああ、…ダリアの花言葉は“移り気”』

『………』

『なあ、#name#…わかるよな?』

『………』

『余所見は花だけにしておけよ?』



移ろう心は繋ぎとめ、ココにしっかり打ちつける


だから…そうだな



『“いい子”でいたら、来年は“誕生石”を贈ってやるよ』



な?

簡単だろ


ほら、その願いが熱で萎れてしまう前に






Anniversaryに誓いのキスを






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