一周年記念頂き物



一周年記念に頂きました!ロー小説でございます!
ローの変態変人っぷりを惜しみ無く発揮してくださいました(^^)mochaさん脅迫紛いにも関わらず書いてくださってありがとうございましたm(__)m






世の中には変わり者という類に分類される人間がいる。
変わり者とはつまり普通ではないということで、要は、ちょっと理解できないなこいつという意味合いを多分に含んでいる。
個性があると言い換えれば、羨ましいという憧れに似た感情は生まれるかもしれない。
ただ、やはり個性も度を越えると傍迷惑でしかない。

例えば、こんな人とか、


「そんなに俺のことが知りたいのか」
「ただのアンケートです」


6月5日火曜日。
きっとどこかでは様々な記念日として祝われていたりするに違いなくて、大好きなカラバコスというサイトの一周年記念日でもある。
読みたい。でも読めない、今は。なぜなら私は今、バイト中だからだ。

ここは若者が多く集まる繁華街のアーケードから3歩ほど出た信号の前。
私は道行く人にアンケートをとるというバイトをしていた。

新発売の清涼飲料について、すごくおいしい、おいしい、ふつう、ややおいしくない、まずいなどということを答えてもらって、協力への感謝として白くまのストラップを渡している。
ただそれだけの仕事。
立ちっぱなしは辛いけど、人と接することが苦じゃない私にとっては比較的楽しめるバイトだ。
ユニフォームも可愛いし、なにより時給もいいしね。


「何が知りたい?」
「え、あぁはい」

変な男に捕まった。
いや、捕まえたのは私なんだけど。

背が高くて、一見ひょろっとしてそうだけど筋肉もあって、顔は・・・隈?でも文句なしにかっこいい。
つまり私のタイプだったわけだ。
だから声を掛けた。どうせお願いするなら自分も楽しめるほうがいいに決まってるし。

アンケートをお願いした後に返ってきた第一声で、私は即座に過ちに気づいた。
第一声とはつまり冒頭のあれだ。
ご協力お願いしますと笑顔で声を掛けたら、俺のことが知りたいのかと聞き返された。

は?
しまった。変人だったか。


とはいっても、やっぱりいいですと断るわけにもいかないからところどころ端折りながら質問をする。

「年齢は?」
「24」

「ご職業は?」
「学生」

「ローだ」
「聞いてません。名前は要りませ、」

「好きなタイプはお前だ」
「ごめんなさいもういいです今すぐ立ち去ってください」


言葉尻をかき消すかのように返ってきたわけのわからない情報に、私はガバっとお辞儀して、横断歩道に向かって左手を差し出した。
行って下さい、さぁ今すぐライトナウ!
満面の作り笑いを浮かべたまま随分上にある顔を見上げて、さぁと再度手を揺らして促す。


パチリ


ぶつかったその目は思いがけず優しい孤を描いていた。
か、かっこいいな、ちきしょう。

「なっ、んですか?」

思わず赤面してしまう。
そのまますっと腕が伸びてきて私の左手をそっと包んだ。


ドキン


「指輪を買ってほしいのか。積極的なところもキライじゃない」
「もうお前、死ねよ!」

っていうか何なの、あの帽子。今6月だけど!?
暴言と共に、右手で抱えていたバインダーを投げつけてしまった。
正当防衛といっても過言はない気もするけど、今はバイト中で、近くにいたバイトの仲間もぎょっとしている。
私は反省した。即座に反省した。
そもそも物を投げつけるなんて最低だ。私、人として最低。


「ごめんなさい」

先ほどとは違う誠心誠意の謝罪を込めたお辞儀。
下げた頭をそのままに冷や汗をかきながら地面を見つめていると、頭の上でフッと空気が揺れた。

視界の端に長くて綺麗な指が伸びてきて、地面に落ちたバインダーをひょいと拾う。
宙を舞うバインダーにつられるように顔をあげると、男はアンケート用紙になにやらすらすらとペンを走らせていた。


「番号とアドレスと家の住所と研究室の電話番号と、フェイスムックのIDだ」

まずは今夜ケータイに電話しろ。
淡々と一息で言ってのけたその男は、あっという間に人ごみに消えた。
去り際にひょいと白くまのストラップを手にして。


ぽかん

とても目立つもふもふの帽子が完全に見えなくなるまで、私はその姿を見つめ立ち尽くしていた。
呆然としたままアンケート用紙を見ると、男にしては繊細で小さな文字がとても綺麗に並んでいた。




世の中には変わり者という類に分類される人間がいる。
個性があると言い換えれば、憧れに似た感情も生まれるかもしれないけど、やはりそれも度を越えると傍迷惑でしかない。


でも、


「か、かけるわけないじゃない」

どもってしまった言葉と、バクバク鳴る心臓が、
予想外の感情を呼び起こし焚きつけているような気がして。




「・・・トラファルガー・ロー」

指でなぞった文字を呟く。
その口許が緩んでいるということは、
つまりはもう始まっているのかもしれなくて、


私もきっと、

それを望んでる。






6月5日、
何気ない一日が、
【記念日に変わった日】






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