隠れスイーツ男子なマルコ by サティコ様
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マルコがぶらっと船内をうろついて、ちょうど自室に戻ってきたときのことだった。
扉の前で、掃除用具を抱えた一人の女性と鉢合わせた。
「#name#、どうかしたかい?」
「ちょうど今近くを掃除してきたので、よろしければマルコ隊長の部屋もお掃除させていただこうかなと思いまして」
にこ、と可愛らしく微笑む姿に、マルコの頬が緩む。
彼女は恋人というわけではないが、マルコの癒しなのである。
…いずれ振り向かせてみせるよい!
「マルコ隊長?ご都合が悪ければまたにしますよ?」
「あ、あぁ、いや、大丈夫だよい。それじゃあ頼めるかい?」
遠慮がちに覗き込んできた#name#に、慌ててマルコは扉を開けた。
「失礼します!…わぁ、掃除いらないくらいキレイですね!」
くるりと部屋を見回して、#name#は感心したように声を上げた。
「いや、それでも細かいところはおざなりだからねい」
謙遜しつつ、マルコは心中でガッツポーズをする。
海賊=ガサツで汚いイメージだが、これで自分の株は急上昇間違いなし。
クールでカッコよくてデキる大人の男として認識されたに違いない!
完璧だよい!
勿論見られて困るようなものなど置いていない。
どこかのサッチと違って、(自主規制)な本を置きっぱなしにしてビンタをくらうようなヘマはしないのである。
「よしと!では次はあの棚を、と…」
そう、勿論棚だって…棚!?
「#name#ちょっと待て…」
「…!!こ、これは!?」
何かを思い出したように、半ば悲鳴に近い声でマルコが#name#を止めにかかるが、時すでに遅し。
棚の前で目を見開き、両手で口を押さえた#name#が、恐る恐るといったふうにマルコを見た。
「これは…名店『不死屋』のミルキー苺タルトじゃないですか!!」
し、しまったよい!!
「ただでさえ数時間待ちの不死屋で、一日3ホール限定の新商品…並べて10分経たずに店頭から消えるという噂のタルト…」
そうだよい!わざわざ深夜から並びに行ってもなかなか間に合わず、5日目でギリギリやっと手に入れたんだよい!
「さくさくとしたタルト生地に、濃厚な甘味のミルキークリームと酸味の効いた苺のハーモニーが素晴らしいと絶品のスイーツ…」
詳しいねい…確かにその通り、ここ最近で類い稀な出来のスイーツだよい!
今晩辺り、皆が寝てからこっそり食おうと思っていたのを忘れてたよい…。
「これ、マルコ隊長が…?」
「いっ、いや!違うんだよい!」
ヤバい!クリーム大好きスイーツ大好きなオッサンだなんてバレるわけにはいかねぇよい!
そんなことが知れ渡った日には、俺のイメージってもんが…沽券に関わるよい!!
「そう!なんか貰ったんだよい!道すがら人助けをしたら礼に…お、俺は甘いものはダメだからって断ったんだがよい、どうしてもって…」
「そうなんですか?これすごく美味しいって有名なんですよ!?」
詰め寄る#name#に、マルコはしめたと心中でガッツポーズをする。
「そ、そうかい。ならせっかくだから食べてみる…」
「あぁ、でも確かにマルコ隊長って甘いもの食べるイメージじゃないですもんね」
…よい。
「あ、あぁ、甘いもんはな、やっぱり女の食うもんつーかねい、俺はちょっと…な、なんなら#name#、持ってくかい?」
「えっ!!いいんですか!?わー!ありがとうございます!!」
頬を染めて、満面の笑みで振り向くその姿に、何故だかマルコは心の涙が止まらなかった。
「いや…いいんだよい…掃除もしてくれたしねい…」
「マルコ隊長、大好きです!!」
…その言葉の代償は…でかかったよい…。
……せめて一口…俺の…5日間…。
END
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