靴擦れを我慢するマルコ byサティコ様



「マルコさんってスーツも似合うんですね!かっこいい〜」
「ホント!この仕事が終わっても着ていてほしいくらい!」

ある日のこと。マルコは甲板で数人のナースに囲まれていた。
今回上陸した島での仕事先に、どうもドレスコードがあるというので、全身ビシリとキメている。
堅苦しい服は好まないが、褒められればそれはそれ、やはり嬉しいものである。

「そんなに言うなら、今日一日くらいはこの格好でいてやってもいいよい」
「ホントですか!」
「きゃー!目の保養!マルコさん素敵!」

キャーキャーと騒がれてご機嫌なところに、水を差すような声が響いた。

「なに鼻の下伸ばしてんですか。情けない」
「#name#、なんだ嫉妬かよい?」

マルコがにやりと笑うと、#name#は呆れたように溜息をついた。

「呆れてるんですよ。浮かれてトチらないでくださいよ」
「誰にモノ言ってんだよい」

#name#は今回の仕事のパートナーだ。
白ひげ海賊団でも珍しい、女の戦闘員である。
#name#もまた、すらりとしたイブニングドレスに身を包んでいる。

…こうやって見ると、意外といい女なんだがねい。

「何見てるんですか」
「後は性格だねい」
「殴りますよ」

…よい。



仕事自体は首尾よくいった。
手にした宝の地図をしまい、後は船に帰るだけである。

「ちょっと手間取りましたね」
「…まぁ、こんなもんだろい」

手間取った。確かに。
動きが冴えなかったのはマルコである。
戦いこそなかったが、どうも動きがおかしいのだ。
というのも…

言えねぇよい…靴擦れ起こしたなんて口が裂けても言えねぇよい!

そう。靴擦れである。
常にサンダルばりに足の指を出しているマルコにとって、革靴というのはまさに拷問器具。
両足の指の間接たちは、一人残らずハゲ剥けてしまっているに違いない。

全滅だよい!
ちくしょう…両踵もかなりのダメージだ…こいつらも危ねぇよい!

人通りの多いこの町で、再生の炎を出すわけにもいかない。
騒がれたくないし、なにより#name#に靴擦れのことがばれてしまう。

…そんな醜態晒すわけにはいかねぇよい!プライドってもんがあらい!

「マルコ隊長?…足がどうかしましたか?さっきから気にしているようですが」

ぎくっ!

「い、いや?なんでもねぇよい」
「まさか…」
「な、なんでもねぇって言ってるだろい!」
「…水虫ですか?」

あ、危ねぇよい…。

「違ぇよい…」
「ならいいんですが」

とにかくこのまま船に戻れば終わりだ、と気合を入れるマルコの前に、数人の女が近づいてきた。

「マルコ隊長っ!やっぱりかっこいいです!」
「待ちきれなくて来ちゃいましたぁ!」

それは、私服に身を包んだ朝のナースたち。

「このままご飯食べに行きましょう!」
「あ?あ、いや、俺はよい…」
「キャーホントかっこいい!」
「…しょ、しょうがないねい…行くよい!」

断りきれないマルコの後姿を、#name#は溜息を吐いて見送った。



「…し、死ぬよい…足が…死ぬ…よいっ」

ひょこひょこと情けなく両足を引きずりながら、マルコは大通りを歩いていた。
靴擦れの痛みはもちろん引くことなどなく、指先に至っては燃えているようだ。
ナースたちはなんとか理由をつけて先に帰した。後は自分の部屋に帰るだけである。

「マルコ隊長」
「!!#name#!?」

突然かけられた声に、マルコは一瞬にして背筋が伸びる。

「ど、どうかしたかよい」
「……反省しましたか?」
「んな!?何がだよい!?」

焦るマルコに、スッと差し出されたのは、いつものグラディエーター。

「…靴擦れしてるんでしょう?ほら、これ履いてください」
「!…お、お前…なんでそれを…」
「見ていればバレバレです」

ここで炎出すわけにいかないでしょう、と#name#はその靴を地面に置く。

「…#name#…」
「鼻の下なんか伸ばしてるからですよ!」
「#name#ー!!お前はいい女だよい!!」
「わっ!!ちょっと、マルコ隊長!抱きつかないでください!」

あわあわしている#name#を見て、マルコに恋心が芽生えたとかなんとか…
それはまた別のお話。



END






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