冷え性なマルコ byサティコ様



「なぁ、マルコ隊長って実は…」
「あぁ、ありゃ間違いねぇよ…朝からずっとだぜ?」
「まさかそっちだったとはなぁ…」

ひそひそとクルーの話し声を背中に受けながら、エースはげんなりとした顔でマルコを見る。

「おいマルコ…マジで勘弁してくれよ…」
「…なにがだよい」
「なにがだじゃねぇ!朝からずっとベタベタしやがって!」

エースが青筋を立てて怒鳴り散らしたとおり、マルコは両手をべったりとエースの腕に、時には背中にと、とにかく素肌にくっつけたままなのだ。

「気持ち悪ィんだよ!さっきから変な目で見られっぱなしじゃねぇか!!」
「あァ!?こっちは切羽詰まってんだよい!他人の目なんか知るかァ!」

真正面から言い返しているときも、マルコの手のひらはエースの肩を掴んだままである。

「やっぱりな…マルコ隊長男が趣味なんだよ…」
「あぁ、しかしまさか相手がエース隊長だとはなぁ…」

いよいよもって真実味を増した後ろ指に、エースは悲鳴じみた怒鳴り声を撒き散らした。

「俺はッ!ホモじゃねえぇぇェェ!」
「俺だって違ェよい!!無駄口叩いてねぇでちゃんと熱量上げねぇか!指が凍っちまうよい!!」

手はそのままに、げしっとマルコがエースに蹴りを入れる。
エースはほろほろと涙を流しながら、がっくりと肩を落とした。

「…だから冬島近くなるとイヤなんだよ…海賊が冷え性とかわけわかんねぇよ…」
「俺が一番そう思ってるよい…」




「相変わらず災難だな、エースは」

大声でサッチが笑いながら、エースのグラスに酒を注ぐ。

「マルコのやつ、俺をカイロか湯タンポだと思ってやがる…」
「出たアアァァァ!!」

そんなエースの愚痴を遮って、情けない声を上げながら一人のクルーが食堂に駆け込んできたのは、深夜も深夜、早朝はまだ程遠い午前2時のことだった。

「おいおい、何時だと思ってんだ、静かにしろよ」

暖炉の前でちびちびと呑んでいた二人は、その男を見て目をぱちくりさせた。

「落ち着けよ、何が出たって?」
「お化けですよ!でかい人魂が浮かんでるのを、俺、確かに見たんです!!」
「…ヒトダマぁ?」

オウム返しにサッチが聞くが、男は確かに見たの一点張り。
話のタネにと、二人は男が人魂を見たという場所まで行ってみることにした。

「そ、そこを曲がった甲板の上に…」

震えながら男が指差す方へ歩くサッチ。
そこでふと彼は立ち止まる。

「…こっちって、見張り台の方じゃねえか?」
「そうだな」

頷くエースに、サッチは振り返りながら再度問う。

「………今晩の見張りって、マルコじゃねえか?」
「………そうだな」

暫しの沈黙のあと、二人は揃って目標の方角を見上げる。

「…」
「…」
「ほ、ほら、あれ!ひ、ひと、人魂!」

そこには確かに、やたらとでかい青白い発光体が浮いていた。
いや、見張り台に乗っかっていた。

「…あれはな、マルコだ」
「…へ?」

男の間の抜けた声が響く。

「よく寒いと鳥が羽膨らませて丸まってるだろ…あれだ」
「あれ暖かいのか…?」

二人は絶句している男を背に、げんなりして空を見つめるのだった。



「むにゃ…手足が凍っちまうよい…もう冬島はイヤだよい…」




END






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