ナルシストなマルコ byサティコ様



右よし。
左よし。
正面…非の打ち所がない。
右斜め…!?

「今の角度の付け方、なかなかキてるねい。候補にいれとくかよい」

マルコはそう呟くと、心の決めポーズリストにしっかり焼き付けて、洋服棚を開いた。
ぴしりと余計なシワのないシャツに腕を通すと、再び鏡の前に腰を下ろす。

「む…ここら辺のエリアの髭がちとバランスが悪いねい…」

ここだ。ここが大事だよい。
無精髭だが、それでいて整えられた配置…完璧だよい。

カミソリを手に、マルコは髭と眉などをきれいに整えて満足げに頷く。

よし、今日もカッコいいよい。
やっぱり一番隊隊長の俺が、船員の期待を裏切っちゃいけねぇ。
すでに皆の望む通り、見た目、強さ、性格、ともに最高の男ではあるが、そこで傲ることなく謙虚に己を磨き続けるのが俺だ。

あぁ、今俺のことをナルシストだと思っただろ?

そうじゃねぇ、客観的事実ってやつだよい。
事実なんだからしょうがねぇ。

「よし、じゃあ朝飯前にかるくゲットしてくるかねい」

ふ、と息を吐きながらマルコは立ち上がると、ぷらぴらと船内を散策し始めた。

「マルコさんおはようございます!今日もカッコいいッスね!」
「はは、おはようさん。ありがとよい」

にこやかに挨拶してきたクルーに向かって、軽く手を上げる。
すると、また向こうから別のクルーがやって来る。

「マルコさん、そのシャツキマってますね!カッコいいなぁ〜、俺なんかタンクトップしか似合わなくて…」
「自分を磨く努力を怠んなきゃ、お前ェもいつか似合う男になる…頑張れよい」
「はい!あざっす!!」

ペコリと頭を下げたクルーに頷いて、マルコはまた歩き出した。



「今朝は3カッコいいゲット、と…」

きゅきゅきゅ、とマルコは自室の壁に貼ってある張り紙に正の字を足す。

「もうすぐ500カッコいいかい…そしたら皆に酒でも呑ましてやりながら、渋さの秘訣でも教えてやるかねい」

それが、完璧な人間の使命ってやつだからねい。

そして腕を組んだまま、その紙の前でマルコは満足げに頷いたのだった。




「なぁサッチ、そろそろまたマルコ奢ってくれるんじゃねぇか?」
「そうだなぁ、ちょっとうちの部下に誉めペース上げさせるか…」
「あの長い話さえなければ最高なんだけどなぁ」


知らぬは本人ばかりなり…
ちゃんちゃん。






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