マルコ社会人編 | ナノ

#39 悲痛の溜息



「#name#が…シャンクスの所にだと!?」

「あぁ。今朝電話があってよ」

「シャンクス………だと!?」

「あ、あぁ…」

「クッ……あの糞がっ!!」

「っ!マ、マルコ落ち着けよ…」


朝っぱらから#name#と共に生活をしているなどと許すまじ事実を突き付けられたオレは、すぐさま受話器に手を伸ばす。それに相手があいつなら尚更だ。

そんな怒り露なオレからの電話に気だるそうに応答した奴に、出だしから遠慮なく罵声を冒頭に問い質した。


「てめぇ!糞シャンクス!#name#は無事なんだろうねい!?」

《……あぁ、マルコか?なんだ、いきなり?それに無事ってお前…》

「とぼけんじゃねぇよい!#name#は?今何処だ?」

《…朝っぱらからうるさいな、落ち着け、マルコ》

「いいからさっさと答えろよい!」

「あー……今朝出て行った」

「……あ?」

「いやだから今朝な、お前に嗅ぎ付かれたかもしれないって…出て行ったんだ」

「な…なんだと!?」


糞シャンクスの話によると、エースからオレの耳に入るやも知れないと不安がった彼女は、荷物を纏め制止の言葉も聞かず出て行ったらしい。

が、そんなもん素直にこのオレが信じるわけがねぇ。
なんせ糞シャンクスの言う事だ。こいつは昔から嘘がずば抜けて上手い。浅い付き合いの奴ならどんな難題でも十中八九騙せるだろう。
しかしオレくらい長い付き合いになると奴の嘘を見抜くコツを心得ている。

そうして一旦電話を雑に切り、エースを引き連れ奴の居る会社へと車を飛ばす。
このコツを使うには直接奴に会わないと発揮しない。


「オイ!!てめぇ…よくも抜け抜けと…」

「ハハッ、相変わらず行動が早いな」

「ニタニタ笑うんじゃねぇよい!#name#はどこだい!?」

「はぁ…お前も困った奴だな。今朝出ていったって言っただろ?」

「んなもん信じるかよいっ!」

「はぁ……エース。お前なら信じてくれるだろ?お前にさえ行き先を告げなかったんだ。俺ごときに教える訳がない」

「お、おぅ…。それもそうだな」

「エース!騙されんないっ!こいつは嘘が十八番だよい」

「え…そうなのか?」

相変わらず飄々とシラを切る奴をまじまじと観察する。
こいつは嘘を付いている時、ほんの僅か、ほんとに一瞬だけ鼻の穴が膨らむんだよい。オレはそれを見逃さぬ様奴を凝視する。

「ったく、いい歳したおっさんが…少しは落ち着けよ」

「#name#はどこにいる?」

「まーだ言ってんのか?信用ないなぁオレ」

「シャンクス…そろそろ足が出るよい」

「おっと、勘弁してくれ。それよりも…マルコ。#name#に逢ってどうするつもりだ?」

「っ…そんなもん…傍に置いておくに決まってんだろい」

「彼女は望んでいないのに…か?」

「っ!#name#は誤解してんだよい!直接逢って、納得させる」

「へぇ…それで、#name#が納得しなかったらどうするんだ?」

「…な…納得するまで離さねェ」

「横暴だな。話しにならん」

「っ!てめェに言われる筋合いはねェんだよい!いいから吐け!#name#の居場所をよい!」

「わからず屋だな。彼女は死んでもお前に逢いたくないと言っていたぞ?」

「…てめェ…ふざけんなよい!」

他人に、ましてやコイツに聞きたくもない彼女の本音を聞かされ、どうしようもないくらい気持ちがぐらついた。

何故そんなにオレを避ける?オレは逢いたくて恋しくて仕方がないと言うのに。
彼女に逢えさえすれば、確実にその不安も何もかも受け止め傍に置かせる自信があった。
なのにこうも避けられ拒まれるとは…

それにだ。シャンクスの野郎全く尻尾を見せねぇ…
本当に知らないのか?いや、信じられないよい。

「シャンクス…頼む。#name#に逢わせてくれ」

「…マルコ。残念だが本当に知らないんだ」

「っ…頼むよいっ!オレは腹の子が誰の子であっても、そんなもんどうだっていいんだい!ただ…ただ#name#の傍で支えてやりてェ……どうしようもねぇくらい…愛してるんだよい」

「マルコ…」

「頼む!#name#に逢わせてくれよい!」

「……お前そこまで…。よし。協力しよう。って事でまず探さないとな」

「………ほんとに知らねぇのかい?」

「さっきから何度も言ってるだろ?お前も疑い深いな」

「………」

「さ、エース。#name#の友人やら行きそうな場所を思い出せ」

「ん?あ、あぁ…」


絶対に居場所を知っていると踏んで、見せたくもねェ心内を恥を忍んでさらけ出したと言うのに…糞が。

そうして協力すると言い出した奴を未だ疑いの眼差しで見据えながら、深い溜息を吐く。


#name#。逃げ回らねェでオレの話を聞いてくれよい…
お前が頼っていいのはオレだけだ。
オレの傍で安心して子育てでも何でもすりゃいいんだい。

そんな想いを、苦しいくらいに締め付けられる胸中で訴えながら、彼女と繋がっているだろう空を見上げ先程よりも重く深い溜息を吐いたのだった。

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