マルコ社会人編 | ナノ

#36 不安な未來



《は?#name#がいない?》

《あぁ…何度チャイムを鳴らしても反応がねぇんだが…》

《買い物か…病院でもいってんじゃねぇか?》

《なら…いいんだが…携帯は?》

《あー、持ってねぇんだ》

《そう…かい》


早る気持ちを抑え、漸く彼女との再会が叶うと思っていたオレはこの結果にがくりと肩を落とした。
夜には必ず帰ってくるだろうと言うエースの言葉に、結局オレは、彼女に逢えず終いで会社へと逆戻りだ。

だが彼女の居場所は突き止めた。これからは幾らでも逢えるし支えてあげられる。それだけでも十分オレの心は満たされていた。

「夜か…待ちどうしいねい」

そんなオレの期待と優越は、見事に裏切られる事になろうとは…この時のオレは思いもしなかった。






《もしもし!#name#何処にいんだよ!?》

《あ、あのね、エース…実は》

《それより大事な話があんだよ!今日トラファルガーがマルコん所に来てよぉ、んでーーーー》



《ぇ……マルコさんに…バレた?》

《あぁ。もう隠しようがねぇな。んでよぉ、マルコなんだが》

《いやっ!いや…だ…》

《#name#…大丈夫だってマルコは》

《マルコさんにはっ!マルコさんだけには死んでも知られたくなかったの!》

《だが…もう仕方が》

《ダメだょ…私…暫くそっちには帰らないからっ!また連絡するね》

《はっ?あ、おいっ!?》


エースにシャンクスさんの事を話そうと掛けた電話で、思いも寄らぬ驚愕の言葉を耳にした私は頭が真っ白になり勢い任せに電話を切ってしまった。

マルコさんに…知られてしまった。でも何故ローはマルコさんの元へ?何故?
まさかこんな最悪な結末になるなんて…。

あの日から決死の覚悟でこの決断をし、今まで順調に進んでいたというのに…
ローに話してしまった事で、一番私が恐れていた事態になろうとは…

でも、絶対にマルコさんには逢いたくない。否、会わす顔なんかない。

そんなこの世の終わりの様な顔で一人頭を抱えていた所に、席を外していたシャンクスさんが戻ってき、私を捉えた途端駆け寄ってくる。

「どうした!?具合でも悪いのか?」

「……」

私は顔を両手で覆ったまま首を振った。思考がぐちゃぐちゃ過ぎて思う様に声が出ない。

「な、なにかあったのか?どうしたんだ?」

「っ…ヒッ…」

「な、泣いてるのか!?ちょ、#name#?どうした?」

「…ック…シャン…クス…さん」

「おぉぅ。よしよし、泣きたい時は思いっきし泣いておけ」

思いも寄らぬこの事態に不安と絶望的ななにかが折り重なり、それは涙となって次から次に溢れてきた。

そんな私を優しく包み込むようにあやしてくれているシャンクスさんの胸の中で、何か居心地のいい温もりを感じた私は少し落ち着きを取り戻し、マルコさんに知られてしまった事を途切れ途切れに伝えた。


「ありゃ…マルコに…か。」

「っ…は…い」

「話し合ってみたら…どうだ?」

「…いや…です。逢いたくないんです」

「これから一生か?その子が…マルコの子でも?」

「はい」

「んー…わかった。じゃあ行くか?」

「…?何処に…?」

「あぁ、大丈夫だよ、マルコんとこじゃない。オレの家だ」

「ぁ…はい」

「…よし。行こう」


全て任せておけと言う彼に申し訳なさ一杯にお礼をし、私は彼の家へと向かった。

これからどうなるのだろうか?
エースの元で育てて行こうと言う当初の計画が駄目になりつつある今、私はこの子をちゃんと産み育てる事が出来るのだろうか?

不安は止めどなく溢れてくる。今の私には全くと言っていい程、未來への光明は見えなかった。


そんな曇った表情の私に気付いたシャンクスさんは、ハンドルを握っていない方の手で優しく頭を撫でてくれる。その大きな手の温もりを感じながら、人に頼りっぱなしの自分にひしひしと無力感を感じていた。

「大丈夫だ。な?」

「っ…はい…ありがとうございます」


そうして到着した彼の家で、私の新たな生活が…始まろうとしていた。

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