マルコ社会人編 | ナノ
#35 狂う歯車
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昨日偶然ローに会いこの秘密を打ち明けてしまった事を、一夜明けた今日も酷く後悔していた。
最後の最後まで隠し通せばよかった。
彼に話したからといって、私はなにも望んではいないのだから。
もし産まれてきた子どもがローの子だったとしても、私は彼と共に過ごすつもりは…ない。
しかし話してしまったものは仕方がない。姿を消すか…両親のいる海外にでも行くか…。
取り敢えず、この家に居るのは危険だと感じた。ローはルフィとも仲がよかった。となれば、自ずとエースの家を知っている。
私は何か嫌な予感に駆り立てられる様に、数日分の着替えやらを鞄に詰め家を出る事にした。
スーツケースを引きながら、今日の処はロビンの家にでも泊めてもらおうと駅に向かう。
こんな事をするのなら、何故話してしまったのか…
そんな後悔ばかりが頭をぐるぐると支配する中、自分の名を呼ぶ声にはたりと足が止まった。
「おっ?#name#じゃないか?久し振りだな……ん?」
「シャンクス…さん…」
「ん?んん?#name#…お前…その腹」
「あっ…あのこれは…」
「なんだよ!マルコと結婚したのか?あっ!?オレ結婚式呼ばれてないぞ!?ひでぇなぁ…」
「いぇ…その…違う…んです」
「ん?なんだ?マルコの子じゃねぇのか?」
「っ…」
「訳あり…みたいだな」
何かを察したシャンクスさんは、私を半ば強引に以前よく出入りしていた彼のオフィスへと連れて来た。
彼に会うのも随分久し振りだ。しかし、なんと説明しよう…マルコさんと繋がりのある彼に、包み隠さず事実を語るのは…
そんな私の動揺を知る由もない彼は、簡易キッチンに立ち忙しそうに手を動かしている。
「珈琲は…妊婦はダメだったか?じゃぁ…オレンジジュース?」
「あ、すみません」
「ん、しかし…驚いたな。会社も辞めたのか?」
「はい…」
「エースの奴一言いってくれりゃ…な?」
「…っですね」
「エースは勿論知ってるんだよな?その…何もかも」
「はい。知ってます」
「だよな。マルコ…は?」
「知りま…せん」
「んー、なんだかプンプン匂うな!やばい、オレこう言うの堪らなく好きなんだよな!」
「…その、マルコさんには…絶対に秘密にしてください」
「あ、やっぱり?了解。で?オレには話してくれるのか?勿論、全力で協力するが?」
「……いえ。今日私に会った事、見た事全て忘れてください」
「それは聞けないお願いだな」
「シャンクスさんっ!」
「大丈夫。オレ口は固いし、それにだ。#name#の困る様な事望む筈がないだろ?」
「っ…でも…」
「オレに会っちまった時点で諦めが必要だな。話すまで帰さない…つもりだが?」
「…っ」
少し脅迫めいたその言葉と、好奇心有り有りな態度にかなりの不安が過ったが、帰さないという言葉には本気が伺えた。
彼も立派な大人だ。
事実を話しても…大丈夫だと無理矢理思い込み、渋々感を醸し出しながら私は口を開いていった。
「うぉ…それはそれは…かなりダークな話だな」
「…はい」
「そうか…で、友達の家に一時非難すると?」
「はい…」
「ふーん…じゃぁこうしよう!家に来い!」
「っ!?いえ、無理です」
「大丈夫だ。家政婦もいるし、落ち着くまでゆっくりしておけばいい」
「いえっ!ご遠慮します」
「#name#…?マルコに…ばらされたいのか?」
「っ!ひ、卑怯です…」
「ははっ、じゃぁ決まりだな」
「っっ…」
マルコさんの事をつつかれては反論する余地もない私は、かなり不本意だか、今日からシャンクスさんのお宅でお世話になる事になってしまった。
しかし、これでローからは確実に姿を眩ませられるだろう。その不安が解消されただけでも良かったと、そんな暢気な事を考えていた私は、まさか今この時、彼が…マルコさんが、私を訪ねてエースの家に向かっていた事など…思いもしなかったのだった。