マルコ社会人編 | ナノ
#28 頼りな存在
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やはりと言うか、まるで当たり前の様にエースは直ぐに駆け付けてくれた。
そして彼の顔を見た瞬間、残りの涙が溢れる様に湧き出てくる。
「っ…エースっ…」
「うぉ!?お、おい、どうしたんだ?」
幼い頃から喜怒哀楽その他諸々…。彼にはいろんな私を見せてきたが、彼の胸で泣くのは小学生以来だ。
「っ…ぅっ…」
「#name#…?何があった?」
「…っ、…た…の…」
「お、おう。全く聞こえねぇ」
「…に…し……た」
「うーん…悪ぃ。何だって?」
「…妊娠…した…」
「……………は?」
それから質問攻めの彼に、途切れ途切れだがなんとか全て話終えると、深く長い溜め息を吐かれ嗚咽で震える肩を撫でられる。
「…で?どうするんだよ?」
「……産み…たい」
「産みたいって…どっちの子か解らねぇんだろ?」
「っ…でもっ…中絶なんて…出来ないよっ」
「っ…でもよぉ…はぁ。そんな甘いもんじゃねぇと思うぞ?父親なしでよぉ…」
「わかってるよ…それでも…中絶だけはしたくない」
「…じ、じゃぁよ、産まれてきて父親がわかったら結婚するなりなんな」
「ダメ!」
「え…いや、でもよぉ」
「だって…そんな事したら…」
そんなの…そんな変な期待はダメだ。
私は…マルコさんの子どもならいいなと思う気持ちが大きい。
そんな私が、もし産まれてきてローの子どもだったら…きっとその子に良くない思いを抱いてしまうかもしれない。それならば初めから父親なんて居ないと思っていた方が絶対いい。
それに、何て話せばいい?産まれてこなければ解らないけど、産んだ後にあなたの子どもだったから結婚か認知でもしてくれと言えと?
そんなバカな話…あり得ない。
私は定かでない頭で思い描いた事をエースに話し、最後まで優しく背中を撫でながら聞いてくれた彼は、それもそうだなと私の思いを汲んでくれた。
「…それにしても…まだあいつと続いてたのかよ?」
「ぅ…うん…」
「そうか。はぁ……しかし、そうなると色々と対策立てないといけねぇな」
「…グス…対策…?」
「あぁ。腹がでかくなったら隠しようがねぇだろ?それに、相当な理由がねぇとマルコはお前を手離さねぇぞ?」
「…う、うん」
「んー、まぁ。オレに任せとけ!」
「エー…ス…」
「大丈夫だ。後…オレん家に引っ越して来い」
「ぇ?エースん家に…?」
「おう!それからよぉ…#name#とガキの面倒はオレが責任もって看てやる」
「なっ!だ、ダメだよ!そんな事したら…ただでさえ彼女もいないのに…」
「いいんだよ。彼女も要らねぇし、結婚なんてする気ねぇからな」
「えっ?何で?エース…まさか…ホ」
「ホモじゃねぇよ!まー、あーアレだ。オレは#name#以外の奴を女と思った事ねぇからな」
「……………ん?」
「……………悪ぃ。今のは聞き流してくれ」
「……………う、うん」
エースの言葉に少々ドキリとしたが、忘れてくれと言うのだから聞かなかった事にした。
そらから私が辞めても大丈夫な様に仕事の内容を確認し、辞める理由を考えと私達の密かな計画は着々と立てられていく。
「よし。これで大丈夫だろ」
「うん…。エース…ありがとう」
「気にすんなって!これから母親になるやつがそんな弱気でどうすんだ?」
「ん、うん。そうだね」
「それにオレがついてるんだからなっ!」
「う、うん!」
今の私には絶大に頼りになる存在の彼に心の底から感謝をし、取り敢えず無事会社を辞めるまでは気を引き締めようと誓った所で、これからの未來に少し希望が持てた私は、優しくお腹を撫でたのだった。