マルコ社会人編 | ナノ
#27 困惑の事実
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結局その日はあの一度だけの嘔吐でおさまったが、あの日から頻繁に私は胸のムカつきを覚えるようになった。
それでも仕事は待ってはくれず、一段落したと思いきや意外と以前と変わらぬ忙しさだ。
そんな日々を送っていた昼下がり、マルコさんが心配した面持ちで口を開いた。
「#name#体調悪いのかい?」
「は、はい…少し。今までのリバウンドですかね?」
「…今日はもう帰れよい。病院連れてってやろうかい?」
「だ、大丈夫です!すみません」
「いや。帰れ。送ってくよい」
「ほんとに大丈夫ですから!」
「#name#!!無理すんない」
「…っ」
少し威圧感を込め帰れと言う彼に、確かに体の不調を感じていた私は、しっかり休んで明日に備えるのも一理あると考え渋々腰を上げ帰り支度を始めた。
流石に送ってもらうのは気が引けたので、そこは強引にお断りし、疲れが溜まっているのなら栄養剤でも打ってもらおうと病院に向かう事にしたのだ。
そうして会社近くの大きな病院に足を向けた私は暫し立ち尽くす。
総合病院はいつ来ても迷い悩んでしまう。
自分の勘だが内科を受診する事にした私は、長い待ち時間を何とかやり過ごし、漸く呼ばれた部屋で告げられた診察結果に、時が止まった様に動けなくなってしまった。
「ぇ…?いまなんて?」
「ん?だからおめでたですよ。えー、今は五週目だね」
「五…週目…?」
「そう。えーっと、…この四日の間で出来た子だね」
「ぇっ?どの四日ですか!?」
妊娠という事実にもかなりの驚きだったが、日にちまで分かると言う先生に、私は食い入る様にその日にちと自分の手帳を見比べた。
そして照らし合わせた結果を見て愕然と肩を落とす。何故ならその四日間とは、ローとマルコさん。二人と関わった日にちだったからだ。
「あ、あの…もう少し詳しく日にちの特定はできないんですか?」
「ん?自分の排卵日把握してる?」
「い、いえ」
「だったら分からないね。この四日間っていう事しか」
「そ、そうですか…」
「ん。じゃぁ予定日はこの辺かな―――」
先生が今後の予定やら注意事項やらを告げていたが、私の頭は完全に真っ白で全く耳に入っていなかった。
自宅に帰り着いても私の頭は真っ白のまま、愕然とソファーに座り込む。
せめて相手が特定しているのならまだいい。
しかし、正直どちらが父親なのか…産んでみなければ分からないと言うこの状況。
これからどうすればいいのか…今の私には考えもつかなかった。
マルコさんの子どもならいいなと思う自分。
じゃぁローの子どもだったら?
しかも産んでみなければ分からないと言うのに、妊娠の事実を二人に漏らす訳にはいかないだろう。
じゃぁどうすれば?
…中絶する?
マルコさんの子どもかもしれないのに?
否、それ以前にこの子にはなんの罪もないじゃないか。
私の独断でこの子の命を奪っていいのだろうか?
私は妊娠していると言う事実を告げられてから、急に母性愛が目覚めてしまったようで、中絶なんてダメだと新たな自分が叫び出す。
しかし押し寄せてくる不安は止めどなく溢れ、気付けは幾つもの滴が頬を伝っていた。
やっと想いを告げ今が幸せ絶頂だった私は、この非常事態に一人では対処出来そうもなく、気付けば無意識に、そう。本当に無意識に携帯を手に取り通話ボタンを押していたのだった。
《おぅ!どうした?》
「…っ…エース…」
《げっ!お前泣いてんのかよ?…今どこだ?》
「…………」