マルコ社会人編 | ナノ
#25 睡魔と彼
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初の徹夜を成し遂げた私は、エースと共に栄養ドリンクを飲み干し、目眩ましの様に輝く朝日にうんざりとしながらほぼ同時に溜め息を吐いた。
「朝日が憎いぜ…」
「ん。激しく同感です」
結局、陽が登る頃に目を覚ましたマルコさんは、すまないと何度も謝罪をしていたが、シャンクスさんによって写真を撮られた事実を話した所、鬼の形相で追い掛けっこを始めてしまった。
その様子を寝不足で不機嫌なエースと飽きれ眼で見つめながら、いつまでも続くそれに見切りをつけた私達は、お先に失礼させてもらったのだ。
「そのまま会社行く?」
「あーそうだな…。でもよ、#name#着替えなくていいのかよ?」
「ん。会社に着替えあるもん」
「そうか…じゃぁ飯食って会社行くか」
「ご飯は外せない訳ね…」
本音を言えばシャワーを浴びたかったが、朝御飯を食べるとなるとその時間は無いに等しい。
シャワーは諦めるとして、マルコさんより先に会社に行かなければと、変な意気込みを入れる私を他所に、食べ物で頭が一杯の彼は至極楽しそうにハンドルを握っていた。
「あー食ったぜ。ま、今回で通ればひとまず安心だな」
「そだね。そしたらエースともお去らばだね」
「ハハッ。結構楽しかったけどな。じゃ、オレ顔洗ってくるわ」
朝食の後、とても徹夜明けとは思えない回復振りを見せた彼と別れ、私も専務室に向かった。
マルコさんがまだ来ていなかった事に一安心した所で、そそくさと着替えを済ませ身支度を整える。
そうして徹夜の甲斐あって、3パターン程出来上がったファイルを抱え自分のデスクに突っ伏した。
目を瞑ると急速に睡魔が襲ってくる。
しかし先程エースが言った様に、これが通ればひとまず終わる。
私はそんな《これ》を見つめながら、無意識に溜め息が出た。
徹夜をしようが休みなく働こうが、やはり決め手は結果だ。結果がだせなければ成功とは言えない。
もし、この企画が失敗に終わったらどうなるのだろう?
勿論お咎めは私にくるだろうが、マルコさんにも多大な迷惑が掛かるだろう。
それだけは…避けたいと切に思った。
そんな思いに耽っていると、エースと共にマルコさんが顔を出す。
「#name#おはよう。昨日は悪かったねい」
「大丈夫です。おはようございます」
「いや、ほんとにすまねぇ。じゃぁ…早速会議に行くかねい」
「おう!今度こそ押し通せよな!」
「…頑張るよい」
「エース…あっ、行ってらっしゃい」
「あぁ。行ってくるよい」
未だに申し訳なさ気な彼を見送り、私も仕事に取り掛かった。
今日の会議で決まらなければ、最悪今夜も徹夜覚悟だ。エースなんか未だにマルコさんが消えた扉に祈っている。
「エース!祈った所でどうにもならないでしょ?仕事してよ!特にこれ!」
「あ?お、おう…って打ち込みかよ、嫌だぜ目が痛ぇ」
「私だって嫌だよ。目が痛い」
そんなくだらないやり取りをしながらも、内心会議の結果が気になって仕方がない私は、無理矢理彼が帰ってくれば分かる事だと自分に言い聞かせ作業を進めた。
そうして睡魔と戦う事数時間。勢いよく開いた扉にビクリと体が跳ねる。
「通ったよい!良かったねい#name#!」
「…ぇ…本当ですか?」
「あぁ!徹夜の甲斐があったってもんだい」
「あー、これで一安心だぜ」
「……よかった」
それから少しの打ち合わせをした後、もう帰って休んでくれと半ば強引に帰された私達。
マルコさんも十分に休んでいないのにと、申し訳ない気持ちで一杯だったが、眠さ限界のエースに引き摺られる様に車に乗せられてしまった。
「帰って爆睡だな」
「うん…マルコさんは大丈夫かな…」
「あ?大丈夫だ。マルコは徹夜なんて日常茶飯事だからな」
「…そっか」
私達とは違い、徹夜慣れしていると言う彼に少しだけ安心した所で自宅に到着し、エースと別れた。
気だるい体でがさごそと鞄から鍵を漁っていると、聞き慣れた声が耳を掠める。
「#name#…お疲れさん」
「…ロー。どうしたの?」
「待ってたに決まってんだろ。予想外に早かったがな」
「…そう。悪いけど私昨日徹夜で眠さ限界なんだよね」
「フフ…そうか」
約束などしていないにも関わらず待ち伏せをしていた彼に、私は今日はダメだと断りを入れたつもりだったが、どうやら彼には通じなかった様で部屋まで着いてくる始末だ。
「もう…眠いから帰ってよ」
「寝てていいぞ」
「……」
既に部屋まで上がり込んでいる彼を追い返す気力さえなかった私は、お言葉通り彼を無視してお風呂に入りベッドに雪崩れ込んだ。
「あー、布団が気持ちい…」
「よくするのか?徹夜」
「いや…初めて…」
「ククッ。もう目が開いてねぇな」
「う…ん…」
「明日は?何時起きだ?」
「七時…」
「そうか…」
「…ちょっと、寝るんですけど?」
「あぁ…寝てていいぞ」
「んっ…い、やっ!無理!」
「いいから黙って抱かれてろ」
徹夜明けの体力では到底彼の力に勝てる筈もなく、抵抗するのも煩わしい程疲れ果てていた私はされるがままに彼に抱かれてしまった。
事が終わった頃には、既に目も開けられない程体力を消費していた私は、薄れ逝く意識の中で彼に一言。《最低バカ》と最後の気力を振り絞り呟いたのだった。