マルコ社会人編 | ナノ

#23 彼と言う男



いよいよ大詰めとなったこのプロジェクト。商品はほぼ完成しており、後は最終確認と宣伝用の広告を決定すると言う段階だけとなった。

しかしこの最後の仕上げがまた一苦労で、誰かが納得すれば誰かが反対すると言う悪循環を繰り返し、中々完成には辿り着けないでいたのだ。


「はぁ………上手く行きませんね」

「そうだな………各々感性が違うからねい」

「ほっんと、面倒臭ぇ!!マルコの力で押し通せよ!?」

「無茶言うなよい。こればっかりはどうしようもないよい」

「もう、エース。もう一度シャンクスさんの所行こ!」

「はぁ…何回ボツになったら気が済むんだよ」

「ほらほら。じゃぁ行ってきますね」

「…あぁ。気を付けてな」


夜も遅くまで仕事をし、帰ったらなだれ込む様に眠りに就きという生活サイクルを送っている今、全くと言っていい程マルコさんと共に過ごす時間が取れないでいた。

僅かに寂しげな光を宿した彼に見送られ、後ろ髪を引かれながらも私は扉を潜る。
皆が納得する仕上がりを早く作り上げ、そして早く終わらせ彼の傍に居たいと強く願った。

そうして私達は、もう何度目か分からぬ修正をしにシャンクスさんの元へ向かったのだ。



「またダメだったのか!?」

「あぁ。6対4ってとこだ」

「はぁ、全くどこが気に食わないんだか…なぁ?#name#?」

「そうですね…今回はイケると思ったんですが」


打ち合わせの度に顔を合わしていく内に、いつの間にかシャンクスさんは私を呼び捨てで呼ぶようになった。

それは別に構わないのだけれど、しいて言うなら無駄に体に触れてくるのは止めて欲しいと思う。
そう今だって…

「期限はいつまでだ?」

「…っ!あ、来週末です」

「来週末…じゃぁ、今日から徹夜だな」

「徹夜?嫌だぜそんなの。…それよりよぉ、その手は何だよ!?」

「痛って!叩く事ないだろう、スキンシップだよな?#name#?」

「え、あー、そうなんですか?てっきりセクハラだと」

「っ!?酷い!オレセクハラなんてしないよなぁ?エース?」

「知らねぇよ…」

さも当たり前の様に腰に手を回す彼に、私は苦笑いで返すしかない。

露骨に嫌がって業務に支障が出てしまうのもいけないし、かといって嫌がらないのも頂けない。思わせ振りな態度は後に後悔となって自分に降り注いでくるだろう。それだけは避けたい。


「しかし…今日明日で新しいデザイン決めないと、本気で間に合わないぞ?」

「そうですね…」

「あー、じゃぁとっとと始めようぜ?この時間さえ勿体ねぇ」

「そうだな。よし始めよう」


そうして期限に追われる私達は、徹夜覚悟で打ち込む事になったのだが…

「はっ!?ダメに決まってるだろい!」

「ぇ、いや…ですが期限が」

「絶対ダメだ。あいつと一晩中…ダメだよい!!」

「そんな事…じゃぁ、どうしたらいいんですか?」

「…オレも行くよい」

「だ、ダメですよ!!徹夜になるかもしれませんし、マルコさん倒れちゃいます!!」

「大丈夫だ。じゃぁ待ってろい」

「あっ!ちょ…もう」


何をそんなにムキになるのかは分からないが、今夜徹夜になると報告すれば今から来ると言うマルコさん。
そんなにシャンクスさんを信用していないのか、少し二人の馴れ初めが気になる。

再び持ち場に戻った私はこの事を皆に伝えると、ケラケラと愉快そうな声を上げ笑い転げるシャンクスさん。

「何がそんなに可笑しいいんですか?」

「ククッ、ハハッだってよ、あのマルコが…ククッ」

「…あのマルコ専務が…何ですか?エース?」

「ん?あぁ、まぁあれだ。焼きもち妬いてるマルコが面白いんだろ」

「焼きもち…」

「ハハッ…ククッよ、よっぽど#name#ちゃんが大切なんだろな?あのマルコが…ククッ」

「っっ!そ、そんなんじゃありませんっ!」

「ひぃー腹痛ぇ。いやぁー、実に面白い」

「…………」

「ククッ…わ、悪ぃ。はぁーー。だってな?あのマルコが焼きもち妬くなんて意外過ぎて笑わずにはいられねぇんだ」

「意外…過ぎてですか」

そんなお腹を抱えて笑う程意外なのだろうか?
ローとの電話の件で思ったが、マルコさんは普通に焼きもちを妬く人だと思っていた。

「オレの知ってるマルコはなぁ?それはそれは女に冷たい…そうだな。女を道端に落ちている石ころみたいに蹴飛ばす男なんだぜ?」

「けっ、蹴飛ばすんですか?あっ…!」

「あぁそうさ。地も涙もない冷血男。それがマルっって!!」

「誰か冷血男だよいっ!!」

「マルコ専務…」

「よぉマルコ」

「あぁお疲れさん」

「マ、マルコ…お早いお着きで」

「てめぇ…チッ。#name#、こいつの言う事は信じるなよい」

「は、はい」

「そんなに怒るなよ、オレとお前の仲だろ?」

「…馴れ合ったつもりはねぇよい」

「へぇー。そんな事言っていいのか?なら#name#にお前の昔話をたんまりしてやろうかな」

「なっ!そんな事してみろい…この会社潰してやるよい」

「はんっ、潰せるものなら潰してみろよ」

「さっきからてめぇは…」

顔を合わせるなり噛み付くように言い合いを始めた二人を余所に、エースは黙々と夜食を食べ、私はと言うと…ただ、唖然と二人を見守るしか出来ずにいたのだった。





「なぁ、#name#!マルコは昔」

「それ以上口開くなよいっ!!」

「ってーよ!暴力反対!#name#助けてー」

「さっきから馴れ馴れしく#name#を呼び捨てにすんない!!」

「ギャー!たんまたんまっ」

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