マルコ社会人編 | ナノ
#22 好印象な彼
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以前よりは共に過ごせる時間は減ったが、それでも彼も同じ想いを抱いていてくれていると思うと少し気持ちが軽くなった。
あの日「やっと気兼ねなく触れられる」と言った彼。
それはただの体目当てかもしれない。恋焦がれる私の気持ちとは違うかもしれない。
それでも、私を求めてくれるという事実が嬉しかった。
「それでは行って来ますね。帰りは先方次第なので何時になるか分かりませんが…」
「あぁ。途中で連絡してくれよい」
「はい。それでは」
「あー、#name#。アイツ、あー、シャンクスとはあまり馴れ合うなよい」
「馴れ合う?何か問題でも…?」
「大丈夫だマルコ。オレが付いてるからな」
「あぁそうだな。頼んだよい」
「…?」
今から向かう広告代理店。その代表をしているのが先程名が上がったシャンクスと言う人物だ。
本来ならば代理店側から出向くのが当たり前なのだが、今回依頼したこの会社は、どうも高飛車な所があるらしく此方から出向かなくてはならない。
だがそれなりの実力と実績がある業界トップクラスの会社だ。文句は言えない。
そしてその人と馴れ合うなと言う彼。具体的な内容を言ってもらわないと、こちらも対処しようがない。
そうしてエースと共に今回のソフト発売に向けての広告戦略を練るために、馴れ合うなと念を押された人物の元へ向かったのだ。
「おっ!久し振りだな、エース!元気か?」
「おぉ!元気だ!シャンクスも相変わらずそうだな」
「ん?この子が担当か?」
「あ、初めまして。今回担当させて頂く#name#と申します。宜しくお願いします」
「あぁ、オレはシャンクスだ。宜しく頼むよ。」
どうやらエースとは知り合いらしい彼と、形式上の挨拶を交わしながら名刺交換をし、早速打ち合わせに入った。
彼はとても斬新でユニークなプレゼンばかり上げ、私を驚かせる。
しかし、どれも効果的でかなりのクオリティーを持ち合わせていた。
そんな彼の印象はとても良く、その様々な分野の知識や鋭い時代感覚を述べる所も尊敬に値する程だった。
そして何より、初心者の私にも分かり易く接してくれ、遠慮なくこちらも意見を述べれる雰囲気を作ってくれている所なんかはかなりの好印象だ。
マルコさんが言う、馴れ合うなと言う指示に少し疑問をもってしまうのも仕方がない。
「じゃぁ、取り合えずこんな感じで製作してみようか」
「そうですね。何パターンかお願いできますか?」
「はい。了解しました。で、これから飯食いにいかないか?」
「えっ?あ、でも…」
「おっ!行こうぜ#name#?オレ腹減ってんだよな」
「ハハ、エースはいつも腹ペコだな。じゃぁ行こうか?」
「あ、はい。あ、少し電話いいですか?」
「どうぞどうぞ。エース、先に駐車場行っとくか?」
「そうだな。#name#早くしろよ!?」
打ち合わせが終わったのはもう日が傾きかけている頃だった。そんな中、食事を誘われてしまった私は、今日はもうマルコさんには逢えないだろうと考え、報告も兼ねて彼に電話を掛ける事にした。
「…ダメだよい」
「ぇ…、あの、でももう了承しちゃってて、それにエースも一緒なので」
「…………はぁ、分かった。終わったら連絡しろよい」
「は、はい…」
打ち合わせの内容を報告し終わった後、これから食事に行くと告げれば直ぐにダメだと返ってくる。
しかし今更断る訳にはいかないと言葉を繋げば、渋々といった感じで了承する彼。
何をそんなにシャンクスさんを犬猿しているのか。その意味は教えてもらってないが、彼が言うほどシャンクスさんは悪い人ではないと思う。
そうして私達は仕事から頭を離れ、エースとシャンクスさんの馴れ初めや、昔話を訊きながら楽しい時を過ごした。
「じゃぁ、ルフィとも知り合いなんですか?」
「あぁ。ルフィの方が先に知り合ったんだ」
「そうなんですね。幼い頃から一緒でしたが初めて聞きました」
「そうか。ルフィも紹介してくれれば良かったのにな。」
「ふふ、そうですね」
「そしたら、もっと早く#name#ちゃんに出会えてたのにな?」
「そうですね」
「…ハハ。#name#ちゃんは、結構疎いって言われるだろ?」
「え?何にですか?」
「男と女の関係にだよ」
「シャンクス!#name#を口説くんじゃねぇよ!」
「何だエース?過保護だな?」
「そんなんじゃねぇよ…。それに#name#はマルコのだからな」
「ちょっとエース!!」
「マルコの…?なんだ、マルコの女なのか?」
「い、いえ。私は……私はマルコ専務の秘書なんです」
「マルコの秘書?あのマルコのか?」
「? はい」
「へぇー。成る程ねぇ」
「分かったなら変な唾付けんなよ?頼むから!」
「エース…オレを何だと思ってんだ?」
そんな遣り取りをしながらも余計な事を口走るエースに睨みを利かせ、今日のところはお開きとなった。
帰り際に何かあったらいけないと連絡先を交換したのだが、打ち合わせの時とは打って変わって、急に艶のある声色で「いつでも電話をしてくれ」と耳打ちをされる。
その時私は、大人のコミュニケーションの一つなんだろうと特に気には留めなかった。
帰りの車の中、エースが腹が一杯だの上手かっただのと感想を述べている傍らで、彼とならいい物が作れそうだと、好印象の彼とこれから行う仕事に少し胸が膨らんでいたのだった。
「今自宅に帰ってきました」
「お疲れさん。何もされなかったかい?」
「されませんよ…」
「くれぐれも、アイツには気を付けろよい」
「?…はい」