マルコ社会人編 | ナノ

#15 彼女の存在



マルコside




唐突に言い渡された彼女の辞表宣言。
初めは何をバカな事をと思っていたが、話を聞いてみるとどうやら第三者からの入れ知恵に担がれた様だ。

しかし、思い当たる節もチラホラある内容に、それもそうだと。彼女が皆にどう思われるかなんて考えもしなかった自分を呪った。

ったく、何て事だい…
泣きながら部屋を飛びだして行く彼女を見つめながら自分への嫌悪感で一杯だったオレは、呼び止める言葉が見付からず、ただ、扉が閉まる音だけが耳にこびり付いていた。


正直、彼女の気持ちが分からない。
あの素面で抱いた時の彼女は、まるで恋人にする様に擦り寄って離れなかった。
あの時は、やっと心まで手に入れたかと少し期待したのだが、その後の彼女の行動はまるで距離を置くかの様に、ぎこちない態度で接してきた。

余りにもあからさまな態度に、痺れを切らしたオレは彼女を無理矢理膝の上に座らせ、腹を割って話そうとしたのだが、泣きながら降ろしてくれと言う。

オレが何かしたのかい?
抱かれている時はあんなに甘えてきた彼女の豹変振りに、ただ謝る事しか出来ずにいた。


そんな彼女が飛び出して行った後、携帯に掛けるも電源を切っており、家に行っても留守だった。

さてどうしたものかと、頭を抱えながら暫く車の中で考える。

確かに彼女を採用したのはオレの一存だ。
まぁ、自ら小細工しなくとも、彼女が入社出来ていた確率は高いのだが、今となっては言い訳にしか聞こえないだろう。

さぁ、どうやって彼女を引き戻すか…
傍に居て欲しいのは紛れもない事実だか、これだけでは彼女は戻ってきてはくれないだろう。
何か他に、彼女を引き戻させる方法はないものか…

そう頭を捻っていると、胸元で震える携帯電話。
間違いなく彼女からの連絡ではないと悟ったオレは、出ようか迷ったが、仕事の癖か、無意識に手が伸びちまっていた。

「エースかい…」

エース…。そうだ、エースは#name#の幼なじみじゃねぇか。
まさかの期待を胸に通話ボタンを押した。
そんな期待を裏切る事なく、エースの元に居ると言う彼女。
直ぐに会いに行こうとしたのだが、奴に止められた。

なんでも、彼女がまた会社に戻るように説得してくれるらしい。
本心を言えば、その役目はオレのだと言いたい処だったが、今日の処は奴に任せようと、その場は身を引く事にしたのだが…

『遊びならこのままそっとしておいてくれ』

これが本題だと言わんばかりに告げられた言葉。
オレは即答で本気だと返した。
それを聞いたエースの野郎は、安心したかの様に溜め息を吐き、後は任せろと電話を切る。

お前は#name#の保護者かよいと若干突っ込みたかったが、寸前で飲み込んだ。どんな形にしろ、今はエースが頼りだ。本気で頼んだよい。

そして翌日。
やはりと言うか、彼女は出社してこなかった。
一体エースは何をしてるんだい…
そんな愚痴を頭で呟きながら溜め息を吐く。

愚痴っても仕方がない。
彼女がいなかろうが、やらねばならない事は山程あるのだ。

「はぁ。まずは、今日の日程は何なんだい…」

彼女に任せっきりだった日程は、オレの頭には入ってなく、朝から彼女のパソコンを開かねばならなかった。

「はいはい。後は…」

次は確認しなくてはならない書類だが…、どこにあるんだよい…

あー、確か明日の会議の書類も要るねぃ、後は…

「…チッ」

煩わしい作業に思わず舌打ちが出た。
彼女が秘書についてから数ヶ月。こんなにも任せっきりだったとは…

今まで一人でこなしてい業務。只単に、他人にちょこまかとされるよりは気が楽だと、そして何よりも信用の置ける相手ではないとオレの秘書なんて務まらない。

あぁ、そうか。
オレは恋愛感情無しでも、彼女の事をこんなにも必要としていたのか…

「早く戻って来てくれよい…」

そんな悲願とも言える思いを口にしながら、今は主の居ない机に突っ伏して項垂れる様に彼女の事を想うのだった。









『マルコ専務、アメリカから専務に会わせろと…』

「あ?誰だい?そんな予定はないよい」

『はぁ、中々しぶとくて…』

「まさか、あのメールの奴かい…通してくれ」

『は、はい!』


この突然の訪問者が、彼女を呼び戻す鍵になるのではないかと、そんな淡い期待を抱いたオレは、少しだけ胸が高鳴ったのだった。

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