リクエスト キリ番 | ナノ

過去clap 彼女の幸せ



お相手はマルコ先生です(´ω`)

「…狭ぇよい」

「だって…」

「落とす気かい?」

「だって…寒いんです」

「…もうちょい向こういけよい」

「ひど…愛しのハニーが震えてるのに」

「くっつくのはいいんだよい…だが押しやるない」

「ぁ…はい」

最近やけに冷え込みが厳しくなったこの季節。
異常な程寒がりな彼女は、布団に入り込むなりまるで軟体動物の様にその体を絡ませてくる。

絡み付くのは構わねぇ、だがベットから落とされるのは御免だよい!

「わかったなら元の位置に戻れよい」

「マルも一緒に移動してくださいね?」

「…あぁ」

片時も離れたくない。そんな眼差しを受けながら要は寒いだけだろうと内心呆れにも似た思いを抱きつつ、絡み付く力を緩めない彼女を今度はオレが押しやるようにベットの中心へと体を移動させる。

「んー、マルは温かいですね」

「普通だろい」

「私よりは断然温かいですよ」

「そうかい」

「んーマルの温もりに包まれて寝れるなんて幸せです」

「……よかったねい」

可愛い婚約者の我儘だ。素っ気ない素振りを見せながらも僅に頬が緩んじまう。

思えば彼女とこんな風に馴れ合えるまでは苦労したなと、幸せそうにオレの胸に頬を寄せる彼女をチラリと伺いその馴れ初めに想い耽った。

まさかこんなにも歳の離れた、しかも教え子と恋に落ち婚約までしちまうなんて。
現実となった今でさえ頬をつねりたくなる程だ。

そんな想いに浸っていると、今では目に入れても痛くないだろう彼女が何か思い出したかの様に眠たげな声色で口を開いた。

「ぁ…そうだ。マル、私欲しい物があるんです」

「ん?なんだい?」

「こたつ。こたつ欲しいです」

「こたつ?…なんで?」

「こたつに入ってお菓子食べながらテレビ観たいんです」

「……」

「それからー」

つらつらとこたつで過ごしたい思いを口にする彼女に、直ぐ様その邪心的な思考に気付いたオレは少しだけ意地悪心が顔を出す。

「ダメだよい」

「えっ!?なんでですか?」

「さっきから聞いてりゃ食ってばっかじゃねぇかい」

「食っ…べ、勉強もしますよ」

「へぇ…」

「だから…ね?」

「じゃぁこたつで物食うなよい?」

「えー!?それは無理ですよっ」

「なら諦めろい」

「……マル」

「……」

「お願いします」

「ククッ。仕方ないねぃ」

「やった!大好きです」

「グッェ…苦しい…よい」


そうしてやはりと言うか彼女にベタ甘なオレはお望み通り次の休みに買いに行く約束をし、嬉しさの反動の様に更に絡み付く彼女と眠りに就いた。

そして約束の日。

朝から張り切る彼女に促され、午前中から出歩く羽目になったオレは眠い瞼を擦りながらもハンドルを握る。

店に着くなり一目散に目的の代物が置いてあるコーナーへと引き摺られ、あっという間に決めてしまった彼女は次のお目当てへと移動していく。

「次はテレビ!あ、小さいのでいいですからね!」

「テレビも買うのかい?」

「え?だって和室テレビないし…」

「はぁ…」

「テレビテレビ…あ!あっちですよ、テレビ」

「…はいはい」

少し投げ槍になりながらも目をキラキラと輝かせる彼女には勝てず、結局テレビまで購入し、当日配達という便利なサービスを利用してにこにこ顔の彼女と家路に着いた。

夕方に届くというお目当てにそわそわとする事数時間。指定の時間十分前に鳴ったインターフォンに素早く対応した彼女は、届くや否や目にも止まらぬ速さでこたつを設置していく。

女一人では重かろう天板も軽々持ち上げその道の職人かの様に組み立てていく彼女に、テレビを設置している電気屋も驚きの眼差しを向けている。

そうしてテレビの設置よりも早くこたつを仕上げた彼女は、待ってましたと言わんばかりに布団の中に潜り込み今では後頭部しか見えない。

「おぃ…」

「やっぱりいいですね!こたつ!」

「はぁ…。なんか忘れてるだろい?」

「…?………あっ!!」

「ほら、わかったならさっさと」

「座椅子!座椅子買うの忘れてました!」

「は?」

電気屋に茶でも淹れろと言おうとしていたオレは、そんな予想外な返答をした彼女に驚きを通り越して返す言葉も失ってしまった。

暫くして終わった電気屋にこころばかりのチップを渡し、未だこたつに入ったままぶつぶつと座椅子を惜しむ彼女に歩み寄る。

「おい。寛ぐのはいいけどよい、終わったのかい?」

「え?何がですか?」

「昨日出しただろい?宿題。明日提出だよい」

「ぁ…あれは…ぅ…」

「ほれ、さっさと片付ろよい。それまでこたつは禁止だい」

「えー!?こたつでします!」

「ダメだ」

「なっ!そ、それに出し過ぎですよ!あの宿題の量!」

「ふん。進学してぇならあれくらいやらなきゃねい」

「む…………鬼」

「こたつ…捨てられてぇのかい?」

「っ!しますしますよっ!もうっ」

「……ふっ」

ヤドカリの様にこたつから出てこなくなるだろう彼女を予想していたオレは、昨日、大量の宿題を彼女のクラスにだけ、出してやった。
まぁ、他の生徒にはとばっちりもいい所だがして損はない筈だ。

ぶつぶつと文句を言い机と向き合っている姿を眺めながら、それでも愛しくて堪らない彼女に何か温かい飲み物でも持って行ってやろうかと、オレは緩みきった顔で幸せを噛み締めキッチンへと足を向けたのだった。






「はっ?こたつで寝るだと!?」

「はい。こたつで寝ます」

「アホか。ダメだよい」

「やだやだ!こたつの温もりで寝たいんです!」

「…オレは?昨日までオレの温もりが良いって言ってたろい?」

「………はて?」

「………」




マルちゃん不憫!
あ!拍手ありがとうございました!
いつもこんな駄文をお読みいただきありがとうございます!







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