先生ver vol
| ナノ
#43 動かぬ証拠
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マルコ先生の愛情を再び疑ったあの日から、数週間後。
週末の今日、彼に泊まりに来てくれとお願いしたにも関わらず、"今日はダメだ"と断られ、一人寂しくテレビゲームをしている処だ。
この間彼に出された大量のプリントを制覇したご褒美に買ってもらった、体全体とシンクロしてコントロールするというこのゲーム。
意外と面白く、夜な夜な一人楽しんでいた。
そんなかなりゲームにエキサイティングしてきた処で、部屋に響き渡る訪問者を知らせる呼び出し音。
「もう!!今いいとこなのに…」
誰だ?と、ちらりと時計を見れば、深夜一時。
こんな時間に気兼ねなくチャイムを鳴らすのは…彼しかいないと、慌ててモニターを確認すれば案の定マルコ先生。とプラスアルファ。
よく見れば、彼はハルタさんとサッチさんに支えられ、頭を下げうな垂れている。
《どうしたんですか?》
《あ、ごめんね。こんな夜中に、寝てた?》
そうハルタさんの問い掛けに問題ないと答え、どうぞとロックを外す。
暫くして部屋へと到着した彼らは、酔い潰れているのだろう彼をかなり雑にソファーに投げ捨て、
「すまないな、#name#ちゃん。マルコの奴がさぁ…ぷぷっ」
「え?どうしたんですか?」
そう問い掛けながらも、彼の頭の下にクッションを置いてあげる。
これで少しは楽だろう。
「いや、悪りぃ。マルコがさぁ、急に#name#ちゃんに逢いたいってきかなくて」
「ぇっ!?」
「そ。だからこうやって運んであげた訳だよ」
「あ、ありがとうございます」
そんな恥ずかしくなる事実を聞いて、一気に顔に熱が集まった。
「#name#…#name#!!」
「おい、マルコ・・・。#name#ちゃんならここに居るぜ。」
「気持ち悪いよね?酔ったおっさん。」
「え…いえ、全然大丈夫です」
「じゃ、悪いが後は任せたぜ?」
「オレ達はこの辺で…後大丈夫?」
「はい!全く大丈夫です!!」
うざかったらその辺に捨てておけなどど、冗談を言う彼らを玄関まで見送りソファーに寝そべる彼に歩み寄る。
「マルコ先生?起きてくださいよ」
「ぅ…ぅぅー#name#?」
「ふふ、そうですよ。マルコ先生可愛すぎです」
「…逢いに来てやったよい」
「引き摺られてですか?」
「…おう」
「でも凄く嬉しいですっ!」
そんな言葉を吐いた途端、引き寄せられ力強く抱き締められる。
「何か…あったんですか?」
こんな彼を見るのは初めてだ。酔っている所為?それにしてもあまりにも変わり過ぎだ。
私の胸にすりすりと頬を擦り付けながら、甘えているのだろう彼の背中を撫でていると、ごにょごにょと何かを呟きだしたマルコ先生。
「兄弟達が…よい…」
「ん?何ですか?」
「…だよい」
「え?聞えませんよ?」
「#name#に…#name#に振られるって…言うんだよい」
「は?」
それからぼそりぼそりと呟く様に言葉を繋ぐ彼に、何度も聞き直しやっと言っている意味と経緯が分かったのは、彼が部屋に現れてから一時間以上経った頃だった。
「それで、いきなり逢いに来たと?」
「おう…オレはちゃんと…#name#を愛してるよい」
「っ! マルコ先生ー!私も愛してます!!」
そんな彼を掻き立てた、兄弟から言われた言葉とは…
《は?お仕置きにプリントさせたのか?》
《あぁ》
《お前…そりゃあんまりだぜ》
《じゃぁどんなお仕置きがあるんだい?SMでもやれっていうのかよい?》
《いや、極端過ぎだな、お前の思考…他にあるだろ?》
《そうだよ、マルコは#name#ちゃんに冷たいんだよ》
《そ、そんな事ないよい》
《いや、あるね。プリントなんて恋人がするお仕置きじゃないよ》
《…》
《そんな事ばっかりしてると、振られっぞ。まぁ、それもおもしろいな》
《……》
《そうそう。振られちゃえばいい》
《………グビグビ》
《うぉ!!お前それロックだぜ?やけ酒か?》
《…オレは振られねぇよい。酒もっともってこい》
《はいお酒。いや、そんな態度だったら時間の問題だね。》
《あ? んな訳あるかい。#name#はオレにベタ惚れだい》
《あー!その余裕が危ないんだよ!》
《ハルタ、アドバイスなんかしてやるな。このまま振られちゃえばいいんだ。そのほうが断然おもしろい》
《…ふ、振られねぇよい。グビグビ…》
それから暫く強いお酒をどんどん飲んだらしい彼は、
《#name#んとこ行って来るよい》
《は?そんななりでか?止めとけよ。》
《行くったら行くんだよい!!》
《止めときなよ、更に嫌われちゃうよ?》
《嫌われてねぇ…》
《わっ!そんな睨まないでよ》
《オレは嫌われてねぇし、振られねぇよい!!》
《わわっ!!車で行くのか?危ないぜ!!》
そうして、見るに見かねた彼等に送ってもらったと。
全て話し終え何故か満足げな彼を見詰めながら、彼の真意を知れた私は更に愛しさが増すのを感じ、そして幸福感で一杯になったのだった。
「そんなに愛してくれているんですか?」
「あぁ。愛してるよい」
「じゃぁ…結婚してください!!」
「あぁ。いいよい」
「え!?本当ですか?」
「ん…いいよい」
「ちょと、待ってくださいね…えっと…あった!よし。マルコ先生、もう一度お願いします。結婚してくれるって言ってください」
「いいよい。結婚してくれよい、#name#」
「よし。録音完了」
「#name#何してるんだい?」
「いいえ。気になさらずに。マルコ先生!!大好きです」
「オレもだよい」
私は彼をここまで掻き立てたサッチさんとハルタさんに最大限の感謝をし、動かぬ証拠品を握り締めながら彼の胸に顔を埋め、にやりと笑ったのだった。
20011/07/30