先生ver vol
| ナノ
#57 彼の沸点
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彼の実家に来て約二週間。やっとハルタさんのお許しがでた私達は、本日から元のマンションへ帰る事になった。
「またいつでもおいでね?」
「はい!」
「当分御免だよい」
「マルコには言ってないよ。車は治っても僕の心はまだ治ってないんだからね!」
「はっ、男の癖に未練たらしいねい」
「……マルコ、まだ泊まっとく?」
「げっ、#name#帰るよい」
「はい。それではお世話になりました」
「うん!またね!」
「マル!私運転しましょうか?」
「ご遠慮願うよい」
「むー大丈夫なのに…」
そうして、機嫌のいい時にしか運転させてくれない彼を一度つねってから助手席に乗り込み、我が家へとタイヤを走らせた。
「あー、やっぱりいいねい、我が家は」
「ふふ、もうすっかり我が家なんですね?」
「ん?あー、いつの間にか…そうだねい」
「愛の巣ではなくてですか?」
「愛の巣…巣ってフレーズが嫌だねい、住んでるのが鳥みたいでよい」
「そこ?いいじゃないですか、鳥でも」
「嫌だよい…」
「ふふ、分かりましたよ。珈琲淹れましょうか?」
「あぁ、頼むよい」
彼が我が家と言ってくれた時、正直心の底から嬉しかった。
彼と私の家。落ち着く場所。そんなとこまで深く彼と関わりあっている現状がこの上ない幸せを運んでくる。
「あっ!車何にしようか選ぼうかな」
「軽自動車は止めとけよい、事故ったら一発だ」
「はーい。何がいいですかね?」
「乗りやすいのでいいんじゃねいかい?」
「乗りやすいたって…うーん」
「ククッ、まぁボチボチ決めろよい。それより…#name#」
「はい?」
それから何やら魅惑的な目付きを纏い、私の腰を引き寄せた彼は…
「さっき…つねったろい!?」
「きゃぁぁぁー!!ご、ごめんな、さい!も、も、もうしませんからー!」
「よし。次はないと思えよい」
「はぁはぁ…何で、いきなり、思い出すんですか?」
「あ?思い出したも何も、初めから忘れてねぇよい」
「げ……マルってねちっこい上に執念深いんですね」
「#name#…もう一度擽られたいのかい?」
「すみませんでした」
てっきりキスでもされると思っていた私は、彼の仕打ちに嫌味の一つも言いたくなったのだが、どうやら口を開いたのが間違いだったようだ。どうしてこうも彼の威嚇は凄まじいのだろうか…。本気で怖い。
「あ、晩御飯何にします?作るなら買い物行かないと…」
「あー、外食しようかい?」
「ん?いいですよ。マルの気分は何ですか?」
「そうだねい、あっさり系がいいねい」
「あっさり系ですね!マルはもう夜に、こってりが食べれないお年頃ですからね!」
「#name#!やっぱりこっちこい!」
「っ!?え?何で怒るんですか?」
「お前には色々と教えなきゃいけない事が山済みだよい」
「あっさりと…こってりの違いですか…?」
「あぁ、そうだ…」
どんな地雷を踏んでしまったのかは謎だが、それからまた擽り地獄にあった私は、笑い過ぎて筋肉痛を伴うというおまけ付きで翌日を向かえる事になったのだった。
「もう…私マルの沸点が分かりません」
「沸点?そんなの気分次第だよい」
「ダメですよ!大人のクセに喜怒哀楽激しいのは!一定に保つ努力をしてください!」
「ほぉー、オレに説教かい?#name#?」
「ぅ…説教と言うか…お願いと言うか」
「あ?何だい?」
「怖っ!マルの目付きの悪さは最強ですね…」
「それはオレを産んでくれた親をバカにしてんのかい?」
「わっもう!怖いですって!」