先生ver vol<img src="//img.mobilerz.net/img/i/63880.gif" border=0 align=absmiddle /> | ナノ

#56 プラスアルファ




彼の実家に来てからもう一週間が過ぎようとしていた。
未だに何故かタイミングが合わず、彼とは体を交えていないのだが、まぁ、仕方がない。

そしていつもの様にハルタさんに迎えに来てもらった私は、帰るや否や免許取得の勉強に励んでいた。

「えーっと、普通自動車免許で運転できるのは…普通自動車、小型特殊自動車、原付自転車か…」

小型特殊自動車って何?あぁ、農作業で使うあれかぁ…免許いるんだアレ。
後は…法廷速度60km/hで…停車してもいいが駐車はダメ?何が違うんだろ?
そんな未知な勉強に取り組んでいると、気だるそうな顔をして彼が部屋へと入ってきた。

「あ、おかえりなさい!!」

「あぁ、ただいま。勉強中かい?」

「はい!免許の勉強です」

「あー成る程ねい」

さも興味がなさそうな彼に歩み寄り、着替えの手伝いをする。
上半身が裸になった所でまじまじとその肉体美を眺めていると、頭上からくつくつと声を殺して笑う彼。

「そんな涎垂らしながら見るなよい」

「ぇっ!?涎垂れて…ませんよ、もう」

「あれ?おかしいねい」

「っ…! マルー」

大人の余裕でからかう彼に、愛しさのあまり抱き付いた。
直に伝わる彼の熱と大好きな匂いに、私はふるふると頬を擦りつけながら甘える。

「あー、#name#。そんなされたらよい…」

「ん?されたら?」

「…#name#、今から出掛けるかい?」

「今から、ですか?いいですよ」

そうして話の途中だというのに外出しようと言い出した彼に促され、駐車場までやって来た処で、何故かご機嫌な彼は運転してみるかと提案してきたのだ。

「え?いいんですか?」

「あぁ、少しだけな。」

「ぶつけても怒りません?」

「ぶつけない様に見張っとくよい」

「でも、夜道は無理ですよ?」

「ククッ、まだ日没まで随分あるだろい?いいからほれ、」

嬉しさ半分怖さ半分の私は、押し込む様に運転席に押し込まれた。
この前の事が頭を過ぎりかなり不安なのだが、彼が隣にいるのなら大丈夫だと、気持ちを運転モードに切り替え気合を入れた。

「シートベルトよーし!ミラーよーし!仮免許書よーし!後は?何ですか?」

「ハハッ、もう大丈夫だよい。ほら、サイドブレーキはハンドルの下な」

「はい!では行きますよ!……エンジンキーがないんですけど…」

「…そこのボタン押すんだよい」

「へぇー、教習所の車とは違いますね。ハイテクです」

「一緒にすんじゃねぇ…ほら、行くよい」

「は、はい!では今度こそ」

そうして教習所とはあまりにも違い過ぎる高級車にかなり戸惑っていると、横から本日の先生が声を抑える事なく笑い出した。

「もう!笑わないで下さいよ、事故りそうです」

「あぁ悪い。でもこの車には慣れとかないとな、まぁ免許取ったら#name#用に買ってやるけどねい」

「え?車買ってくれるんですか!?」

「あぁ、何にするか候補だしとけよい」

「やったー!何にしようかなぁー、うーん」

「それはいいが、前ちゃんと見とけよい」

「あ、はい!」

それから順調に私の痛々しい運転は進み、途中何度も隣から腕が伸びてきてビクリとする事数回、そして只今私達の乗る車はかれこれ数分同じ場所に佇んでいた。

「今行け!あー、何してんだい…」

「だ、だって、あの車がいきなりスピード上げたりしたら…」

「上げねぇよい!相手だって事故りたくなんかないんだい、ほら、車の流れをよく見とけよい」

「う、ぅ…はい」

そう。私達は今、大きな交差点のど真ん中で右折をしようとしているのだ。
これがまた私には難し過ぎ、彼の指示通りにアクセルを踏むも寸前で尻込んでしまうという感じで全く曲がれずにいた。

「あーもう#name#代われい」

「え?ここでですか?」

「ほら、早く後ろに移動しろよい」

「う…はーい」

そうして痺れを切らした彼は、私の体が半分後ろに行った所で、邪魔だと言わんばかりにお尻をグィっと押し運転席に滑り込むと、何事も無かったかの様に華麗なハンドル捌きで右折したのだった。しかし私は、頭から後部座席に激突したままだ。

「ん?おい、大丈夫かい?」

「…お、」

「お?」

「押す事無いじゃないですか!!顔!顔からいきましたよ!顔!!」

「そりゃ…ククッ、悪かったよい」

「笑いましたねー!!ひどーいでーす!」

「いひゃいふぉい…ひゃにゃせ」

絶対態と押したのだと踏んだ私は、後ろから彼のほっぺをこれでもかという程引っ張ってやった。何時ぞやの仕返しも込めて。

「あー、スッキリです」

「#name#てめぇ…お仕置きが必要だねい」

「ふふーん。どうぞ?」

「へぇ、余裕じゃねぇか。お仕置きが何か知ってんのかい?」

「はい!焦らして焦らしてイヤンバカーンでしょ?」

「何だいそれは…」

「え?違うんですか?じゃぁ…あ!マルにご奉仕しまくりとかですかね?」

「#name#…どこで覚えてんだい、そんな卑猥な言葉…」

「んー?ナミと普通に話しますよ?変ですかね?」

「…程々にしとけい。それよりお仕置きは#name#の大好きなプリントだい」

「プ!プリント!?い、嫌ですよ!絶対嫌です」

「と、プラスアルファ」

「プラスアルファ?何ですかそれ?」

「ククッ、直ぐにわかるよい」

「…?」


そうして彼の向かった先は私達の住むマンション。そこで私はプラスアルファの意味を知る事になったのだった。そして思い知る。彼に悪戯はしてはいけないと。







「ぁっ…もう、すごいですね今日のマルは…」

「あぁ、溜まってたからねい…」

「溜まって…そ、そうですか」

「さ、もう一汗流すかい?」

「え?いや、そろそろ帰りませんか?ほら、明日も学きゃぁ!」

「今までがプラスアルファでよい、これからが…本番だよい」

「ぃ…いやぁーーー!!」


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