先生ver vol<img src="//img.mobilerz.net/img/i/63880.gif" border=0 align=absmiddle /> | ナノ

#50 押しに弱い彼




『マルコ先生、ありがとうございました』

『あぁ。気つけて帰れよい』

『はい!!』


私はいつもの様に、放課後彼のもとへ足を向けたのだが…
そこで私は、彼の部屋から出てくる恋する乙女を目撃してしまったのだ。

「マル…」

「ん?おぅ。」

「おぅ。じゃないですよ!何ですか!?今の子は!?」

「は?あぁ、オレの担当してる生徒だよい」

「…彼女の顔に、ハートが乱舞してましたけど?」

「へぇ。そうかい」

「何してたんですか?密室で…」

「何って…相談に乗ってただけだよい」

「相談…目をハートにさせて…何の相談してたんですか?」

「はぁ。#name#が疑うような事はなんもねぇよい」

「でも!…心配です」

「なんもねぇよい。生徒だろい」

「…私も生徒ですが?」

「あぁ…そうだったねい」

「……先に帰ります」

「あ?あぁ、今日の晩飯は和食がいいねい」

「では洋食で。さようならマルコ先生」

「おぃ……なんだよい」


私の勝手な思考だが、彼のあの部屋は私にとって自宅と同じくらい神聖な場所だ。

勿論、理不尽な思考なのはわかっているが、それでも女生徒と二人きりで過ごされるのは頂けない。

しかもあの子の目。
あれは間違いなく恋する乙女の眼差しだ。


それから当て付けの様にコッテリと洋風料理を作り、彼の帰りを待つ。
しかし私も鬼ではない。スープはお味噌汁にしてあげた。

「…お帰りなさい」

「あぁ、ただいま」

「………」

「………なんだい?」

着替えを手伝いながら、私は無言で彼を凝視する。

「いいぇ」

「ククッ。いっちょ前に嫉妬かい?」

「っ! いっちょ前って!」

「なんもねぇって言ってんだろい?」

そうケタケタと可笑しそうに笑いながら、彼は頭を一撫でし部屋を出ていった。

いっちょ前…何か腹の立つ言い方だ。
それに嫉妬は唯一私に与えられた特権の様なものじゃないのか?
それに彼だって、嫉妬と伺える行為は何度もしているというのに。

そんなやるせない気持ちのまま彼の後を追いリビングに向かうと、キッチンに立ち、不思議顔でお鍋を覗き込んでいる彼。

「#name#…何でビーフシチューなんだい?」

「今日は洋食が食べたいって、言ったじゃないですか」

「オレは和食が食べたいって言ったんだかねい」

「へぇ。聞き間違えました。あ、でもお味噌汁」

お味噌汁は和食ですよと、きっと、本気で洋食が出てくるとは思っていなかったのだろう彼は、酷く残念顔だ。

「…まぁいいよい。それじゃ"要望"の洋食を頂こうかねい」

「…はい。すぐに用意しますね、"要望"の洋食を」

「……」

売り言葉に買い言葉。
私も負けじと彼の皮肉に立ち向かった。
この位しか彼を困らせる手段が思い付かない。

「まだ疑ってるのかい?」

「疑ってなんかいませんよ。いっちょ前に嫉妬してるんです」

「…ったく。何があるっていうんだい?」

「それは…。ほら、相談ついでに抱き着かれたりとか…迫られたりとか…」

「ハハッ。ねぇよい」

「マルは無くてもあの子からしてきそう…で、心配なんです」

「させなきゃいいんだろい?それに、あり得ないよい」

「…でも、あの子の目は恋する乙女でしたもん」

「オレが相手にしなきゃいい事だろい」

「マルは…押しに弱いから」

「…弱くねぇよい」

「だって実証済みですよ!?」

「#name#は特別だろい?はい。もうお仕舞いだよい」

「もう!まだおわ」

「お仕舞いだ」

そんな感じでこの話しに終止符を打たれた私は、未だに納得出来ずにいたが、彼がそこまで言うのならと渋々頷いたのだった。


それから数日後。

『マルコ先生!!いつもありがとうございます』

『あぁ、両親とも仲良くやれよい』

『はい。あのこれ…』

『ん?』

『いつでも連絡してください!』

『あ、いや…』

『よかったら今度ご飯でも誘ってください!』

『ぇ?いや…』

『それじゃ、失礼します!』

そんなやり取りを、廊下の陰からしっかりと目撃していた私は、

「はい!没収です」

「うぉ!いきなり現れるんじゃねぇよい…」

「アドレスですか…フフ、最後のハートマークがいわせてますね」

「…捨てていいよい」

「当たり前です!」

「怖ぇよい」

ほら。押しに弱い。弱すぎる。アドレスなんて余裕で受け取って…まさか私にバレていなかったら掛けてたかもしれない。

「掛けてたでしょ?私に見つからなかったら」

「掛けねぇよい」

「だって嬉しそうでしたよ。アドレスもらった時」

「んな訳あるかい」

「ロリコン…」

「あ?何か言ったかい?」

「…いえ。今日の夕食のご要望は?」

「ん?あー、そうだねい、中華なんていいねい」

「分かりました。イタリアンですね」

「おぃ…」


それから押しに弱い彼が心配で仕方がない私は、唯一の仕返しにと、事ある度に天の邪鬼なメニューをだす事になったのだった。





「これはいつまで続くんだい?」

「…押しに強くなったら、です」

「だから弱くねぇよい」

「いえ。半端なく弱いですよ」




2011/08/08


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