先生ver vol<img src="//img.mobilerz.net/img/i/63880.gif" border=0 align=absmiddle /> | ナノ

#47 嫉妬と喧嘩




オレの事を未だ疑っている#name#をなんとか安心させてやりたくて、オレは…オレは、彼女と婚約をしちまった。

まぁ、まぁいいよい。彼女の事は本気で惚れてるし、何よりオレもこの歳だ。身を固めるのもいい頃合いだろう。

親父にこの事を話せば、まだ早いと断ったにも関わらずすぐに用意された新築マンション。

その事を彼女に話せばすぐにでも一緒に暮らしたいと駄々を捏ね出し、来週から共に暮らすことになっちまった。勿論、彼女の親にも了承済みだ。

しかし、しかしだ。
世間の目が…否、兄弟達の目が非常に怖い。特に、ビスタとハルタだ。まるで彼女を丸め込んだパイナップルでも見るようなあの眼差し。正直、今にもむしり食われそうで…恐ろしすぎるよい。

「マルコ、来週から#name#と暮らすそうだな?」

「お、おう。」

「へぇ。って言うかさ、この家で暮らせばいいのに」

「ん?それはいい提案だな。部屋なら十分空きもある」

「いや、それは…」

「え?なに、マルコ。オレ達が邪魔とでもいいたいの?」

「何!?そうなのか?マルコ」

「はぁ…何なんだよい」

「ほらほら、あんま苛めんなって」

「いや、しかしだな」

「兄弟の門出第一歩だぜ?快く送ってやろうじゃねぇか」

「…そうだね。マルコ、#name#ちゃん泣かせたら張り倒すからね」

「じゃぁ、オレは殴り飛ばしてやろう」

「だから何なんだよい…」


そうして、何かと小言を呟く二人をかわし、兄弟の手伝いに助けられながらも無事引っ越しを終えた今、

「こんなものですかね?後は…」

「今日はこの辺でいいだろい。#name#、ちょっと来いよい」

「はいはーい!まるたんっ!」

「…変な呼び方やめろい」

「え?だって…婚約者を先生付けの方が変でしょ?」

「じゃぁ、その"たん"はやめろい」

「え!? "たん"がポイントなのに…」

「頼むから、やめてくれい」

「じゃぁ…マル。で」

「何で一文字省くんだい…?」

「だって…私だけの、特別な呼び方がいいんです、もん」

「はぁ…わかったよい。…ほら」

「ん…!!これは!?」

「婚約指輪だよい。一応な」

「マルっ! 嬉しいです!大好きです」


そんな感動に涙さえ流しそうな彼女と、暮らし始めて二日目の今日。
授業も終わり自室へと向かう途中、同じくオレの元へと向かう彼女と鉢合わせた。

「あ!マルコ先生」

「おう、あー先に」

「#name#。見つけたぞ」

オレに駆け寄る彼女に、先に帰って晩御飯の支度をしておけと伝えようとした刹那、#name#を呼ぶ聞き覚えのある不愉快な声に思わず眉間に皺が寄る。

「何?私忙しいんだけど」

「美味いケーキ屋を見つけたんだ。行くぞ」

「は?行かないよ。じゃわっ!?」

「行くんだよ。あ?何ですか?マ・ル・コ・先・生?」

「いや。別に」

「っ…!?ちょっと離してよ」

「いいから行くぞ」

「嫌!!マルコ先ー生!!」

「チッ…」

オレは引き摺られながら連れて行かれる彼女を引き止める事も出来ず、ただその後姿を睨むことしか出来なかった。

「先生!大丈夫ですよ、私が着いて行きますから」

「…あぁ。頼んだよい」

「貸し一ですよ」

「…」

そうして、唯一#name#との関係を知る彼女に任せ、二人きりという状況は避けられたものの、仕事を終え家路に着いても彼女は帰ってきておらず同棲二日目だというのに早速トラブル発生だ。

「はぁ…飯はどうすんだよい」

彼女は夕飯はどうするつもりなのだろうか…。外食してくるなら連絡くらいしろと言うのだ。
それから、何か作ろうとキッチンに立つも、料理などろくにした事のないオレが出来る筈もなく、彼女を待つか、出前を取るか…そんな事を考えながらも、時間は刻一刻と過ぎてゆく。


そうして、時刻が午後九時に指しかかろうとした頃、やっと彼女から連絡が入った。

「すみません!!なかなか逃げれなくて」

「…今何処だい?」

「それが…」

聞けば彼女は、元住んでいたマンションに居るのだと。家まで送ると聞かない奴を振り切れず、以前の住まいに逃げ込んだと言ってきたのだ。

「はぁ…ちょっと待ってろい」

なんて面倒な事になってるんだと、溜め息を吐きながら彼女を迎えに行く。
すまな顔の彼女を車に乗せ、空腹も加担し、苛々絶好調のオレは、彼女を咎め始めてしまった。

「連絡ぐらいしろよい」

「う…すみません」

「ったく、なんで断らない?」

「断りましたよ!でも、マルとの事一番怪しんでるし…それに」

「もっと上手くやりゃいいだろい。ベタベタ触られやがって」

「ぅ…ほんとすみません」

「あいつと…なんかあったのかい?」

「なんかって何ですか?」

「そういう関係になった事があるのかって事だい」

「そういうって…ないですよ!!」

その時オレは、以前奴が言っていた言葉を思い出し、苛々の所為で口がどうにも止まらず彼女への罵声が止まらなかった。

「あるだろい。正直に言えよい」

「なっ…未遂ですよ。私の意志じゃありません」

「…未遂ってなんだよい」

「っ…いちいち聞かないでくださいよ!過去の事でしょう!?」

「あ?ふざけんなよい」

「なっ…!!マルだって私以外の人とそういう事したことあるでしょう!?」

「男と女は違うんだよい。それに、この歳で初めての方がおかしいだろい」

「歳とか関係ないじゃないですか!!もう、一人で帰ります!!」

「お、おい!!」

そう言い捨てて、彼女は車を降り一人歩き出した。
言い過ぎちまったと後悔するも、エンジンを掛ければすかさず振り返り泣き出す彼女。

まったく。だが、これはオレが悪いだろうと改め、素直に仲直りをしようと車を降り彼女に歩み寄った。

「すまない。悪かったよい」

「グス…」

「ほら、帰るよい」

「ヒック…マル…」

「…年甲斐もなく嫉妬しちまった」

「っ…?マルが…嫉妬?」

「あぁ…悪かったよい。帰るぞ」

「っ! はい!!」


そんな醜いオレを見せちまった事に少し後悔と羞恥に覆われたが、これから長い付き合いだい。たまにはいいだろうと思い直し、まだ瞳は濡れたままなのにもうはしゃいでいる彼女を横目に、幸せの溜め息を吐いたのだった。







「で?あいつに何されたんだい?」

「以外としつこい性格だったんですね」

「…しつこいんじゃねぇよい。嫉妬だい」

「それを、しつこいって言うんですよ…」

「…で?」

「…」


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