先生ver vol<img src="//img.mobilerz.net/img/i/63880.gif" border=0 align=absmiddle /> | ナノ

#46 未来への約束




ガサガサと、袋が擦れる音を立てながら部屋へと入ってくる彼。

「ほれ、お土産だよい」

「…あ、ありがとうございます」

「…」

ギクシャクと彼の手から袋を受け取り、目も合わせない私に彼はかなり困惑している様子だ。

「あ…ケーキ、ですかね?冷蔵庫、入れてきます」

気まずい雰囲気のまま、キッチンへ逃げ込んだ。正直、よからぬ事を言いそうな自分が怖い。

普段の何倍も遅い動作でケーキの入った箱をしまう。ついでに冷蔵庫の片付けなんかも始めていると、ふわりと後ろから抱き締められ一瞬息が止まったかと思った。

「どうしたんだよい?」

「べ、別に何も…」

「はぁ…言いたい事があるなら隠すなって、前にも言ったよねい?」

「だから、何にもないですって!」

少し強めな口調を出してしまった事に嫌な汗が流れた。
何をしているのだろうと。これじゃ、子ども扱いされても文句は言えない。

「はぁ…。オレの事…嫌いになったのかい?」

「っ!?き、嫌いだなんて…思ってませんよ」

「じゃぁ、なんだい?避けてるだろい?」

「マ、マルコ先生こそ、私の事…」

待て、私。それを言ったらきっと、彼への不信感がどんどん言葉となって出てきてしまうんじゃないだろうか…

全部言ってしまったその後は?彼がその事に肯定したら?そんな事になったら…この前の失恋騒ぎどころじゃ済まないだろう。
そのままベランダから飛び降りかねない。

「#name#。何を考えてるかは…知らねぇが、オレは本気で#name#の事愛してるよい」

「っ…ぅ、うそ」

「はぁ…やっぱりねい、疑ってたんだろい?この間の事が原因かい?」

「っ…だって、あれは…」

だってあれは、そういう事なんだと思っても仕方がないじゃないか。

「思ってる事、全部言ってみろい」

その言葉と共に後ろから抱き締められていた腕に力が入る。
言ってしまおうか。彼だって、言えといっているではないか。

私はきりきりと痛む胸を押さえながら、覚悟を決め彼に胸の内を明かしていった。

全て話し終わった後、彼の返答を聞くのが怖くて少し体が震えていたと思う。
そんな私を更に強く抱き締めなおしたマルコ先生は、

「怖いのは…オレの方だよい」

「…?何が…ですか?」

「オレは、#name#に捨てられるのが怖いんだい」

「わ、私が?マルコ先生を?」

「あぁ。#name#はまだ若い。出会いなら…幾らでもあるだろい。こんなオヤジなんか…すぐに熱が冷めちまうと思って、よい」

そんな、途切れ途切れに口にする夢にも思わぬ言葉に、ぐるりと彼に向き合った。
そこで目にした彼の目は、不安げな、そして今にも泣き出しそうな、そんな儚い瞳を私に向けていた。

「そ、そんな事!そんな事絶対ありませんよ!!」

「未来の事なんて、誰にもわかんねぇだろい…」

「なんでそんな事言うんですか?じ、自信は?私とずっと一緒に居るって、幸せにするって自信はないんですか!?」

「あるよい。あるけどよい…さっきも言ったが、#name#に愛想をつかされるのが怖いんだよい」

「そんな事ありませんよ!失礼な!!」

「ぉ、おう。そんなムキになるなよい」

「私にとって、マルコ先生は運命の人なんです!絶対に私から別れたりなんかしませんよ!!もう!!」

「ああ、わかったよい。悪かった」

「ッ…グズ…もう、マルコ先生の、バカ!」

「あぁ…悪かった。だから泣くんじゃねぇよい。」

彼がそんな事を思っていたなんて、心底驚いた。
歳をとると臆病になるだの、冒険が出来なくなるだのと、そんな戯言ばかり口にする彼に寂しい気持ちに襲われながらも、私は皆とは違うのだと、世間の統計で私の心まで決めないでと、泣きながら胸の内を吐露していく。

「#name#…。すまなかったよい」

「グズ…もう、絶対そんな事、思わないでくださいね」

「あぁ。約束する。」

「…じゃぁ、結婚は?」

「ククッ。切り替えが早いねい」

「初めから切り替えてなんか…ないですもん」

「ククッ、そうかい。」

「……」

「そうだねい…#name#が卒業したら、な。」

「な、って…それって!!」

「ククッ、あぁ。」

「あぁ、とか、な。とかじゃなくて、ちゃんと言ってくださいよ!!」

「うぉっ、落ち着けよい…」

「マルコ先生!!」

「…チッ」

「チッ!?」

「あーー、卒業したら…結婚するかい?」

「チッって何ですか!?」

「おい…今プロポーズしたんだがねい」

「え!?いつしました!?」

「はぁ…もういいよい」

「ごめんなさい!!聞いてませんでした!もう一度お願いします!!」

「二度も言えるか…」

「いや、ちょっと!マルコ先生!?」




それから鉄壁有言実行の彼はやはり二度は言ってくれず、せっかくの感動の瞬間を逃した私だったが、卒業と共に結婚してくれるという彼にとても幸せな気持ちになった…が、言葉では不安だったのでしっかりと誓約書まで書かせ、その紙を、大事に大事に胸に抱え込んだのだった。






「おい…そんな紙より、実物がここにいるだろい」

「今はこの紙が、なにより大事なんです」

「お、オレよりかい?」

「はい! この子は嘘偽りなく、私を裏切ったりしないですもん」

「オレがいつ裏切った?」

「そうだ!!宝箱買いに行こう!」

「お、おい!!」




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