先生ver vol<img src="//img.mobilerz.net/img/i/63880.gif" border=0 align=absmiddle /> | ナノ

#45 彼への疑惑




あの日、動かぬ証拠まで突きつけたにも関わらず、マルコ先生は首を縦に振ってはくれなかった。

"#name#にはまだ早い"

その言葉が酷く胸に突き刺さる。
まだ私が何も知らない未熟な人間な事は…分かってるつもりだ。

それでも、彼を思う気持ちは偽りではないし、恋愛には歳だの未熟だの関係ないと…私は思ってる。

これから先、私の好みが変わる?
何でそんな事彼に分かると言うのだろうか…。

じゃぁ、十代で結婚した女の子達は皆、後悔の渦に巻き込まれているというのか?
そんな訳、ないと思う。
そうでない人もきっと沢山いる筈だ。

今、マルコ先生と結婚しても私は後悔なんてしない。これは神に誓って言えると思う。

そんな私の心中察する事なく、駄々を捏ねる子どもを宥める様な彼の態度。

物凄く傷付いたし…それに、やはり彼の私への気持ちが信じられなくなってくる。

私が間違ってるのか…
それとも彼の言ってる事に従えば、私は幸せになれるのだろうか…

でも私には、あの言葉は "オレ以外にイイ奴が現れる"と言われている気がした。オレじゃないと、否定された気がしてならない。

でも要は、彼が私を幸せにし後悔させない自信がないという事なのではないのか?

じゃなきゃ、あんな事…言う筈がない

きっとそういう事なのだろう。私にとっては全てを捧げられる相手でも、マルコ先生にとっては…違うんだと。


そんな彼の気持ちを自分なりに解釈し、深い谷底に落とされた気分になった。

「もぅ…いやだな」

思わず漏れた言葉。
何が嫌なのか自分でもよく分からない。

すかっりマルコ先生の恋人でいる事に不安感を覚えてしまった私は、全てを投げ出すようにソファーに身を沈めた。

「旅に…出たい…」

そんな意味不明な事を口にする程、私の心はぐちゃぐちゃだった。




それからなんとなく、彼との距離を置くようになった。

毎日欠かさずしていた電話もメールもしない日があったり、放課後も彼の元へ行かない日が増えた。

彼の元へ行ったと言っても、あまり会話はせず、ただ横に座っていただけだ。

勿論、物足りなさと寂しさで押し潰されそうになったが、それ以上に、彼への不信感の方が勝っていたのだ。

そんな日々が、数週間ほど経った頃、今日は彼の元へは行かずそのまま自宅に帰ってきた。


最近、頻繁に出る溜め息。こんな状況にも関わらず、マルコ先生はいつも通り自ら連絡もしてこなければ逢いに来てもくれない。

「愛してるって…言ったのに」

あの日、優しい目でそう言ってくれた彼を思いだし少し涙腺が緩んだ。

あれも、酔った勢いで言ったのではないだろうか…?
もう、彼の素行全てが胡散臭く感じでくる。

きっと私が別れを切り出せば彼は止める事なく、否、むしろ応援しながら送りだしそうだ。

何故だろう?
もっと我が儘や欲を出して欲しいのに、彼は仮面を被るかの如く自分を見せない。

唯一、あの酔って家に来た日。
これが素なのかと、すごく嬉しかったのに…素面になった途端あれだ。

ほんと何でだろう…
歳上だから?
それとも、私を信用していないのか?

そんな事をじめじめと考えていると、着信を知らせる音に思考が呼び戻される。
ゆっくりとそれに手を伸ばせばディスプレイに映る彼の名前。

ボタンを押す手が戸惑った。彼からの着信は、本当に用事がある時のみだ。

こんな状態の私達だ。何か嫌な予感がするも、恐る恐るボタンを押した。

「……はい」

《家かい?》

「はい…」

《今から行くよい》

直ぐにぷつりと切れた電話。あんなに戸惑ったのが少しバカみたいだ。

彼が来る。実を言うと、彼が来るのはあの日以来だ。
学校では何度も逢っているのだが、いざ、部屋に二人きりとなると…何か気まずい。

そうして私は不安に襲われる。

きっと彼は聞いてくるだろう、避けていた理由を。
素直に話すべきか?

もし、私の考えに肯定的な返事がかえってきたら?
私はどうすればいいのだろうか…

そんな、頭の中でぐるぐると巡る仮説と推測がなんの出口も見出だせないまま、玄関の戸が開く音がしたのだった。




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