マルコ先生ver | ナノ
#02 私の発見
人生初の告白は見事にスルリとかわされてしまった。
「#name#どうした?頭でも打ったかい?」
それもそうだろう。ろくな会話もした事が無い一生徒に、いきなり告白されても信憑性も何も無い。
「打ってませんよ。マルコ先生が好きなんですよ!」
至って正常である事をアピールしつつ、今、たった今恋に落ちましたと、未だ不思議顔の彼に力説したが、
「そ、そうかい」
じゃ、早く帰れよい。と、少しだけ心配そうな(きっと私の頭を)ニュアンスを含ませた声色で、それでもしっかりと私の告白を何事もなかったかの様に消し去り扉へと背中を押された。
ぐいぐいと出口へと導かれながら、ここで引いてたまるかと私は無駄に良い頭を使い後一歩で扉に辿り着く寸での処でピカリと頭に電球が灯った。
「まってください!か、帰りたくても帰れません・・・実は・・・」
コンタクト事件の事を話し、送ってくださいとお願いしてみる。
「・・・しょうがないねい」
その言葉にニヤリと上がる口角を隠すように俯き心の中でガッツポーズをとる。
すると、心の声は聞えていない筈なのに、
「・・・嘘じゃないだろうねい?」
なんて意外と鋭い洞察力を披露し怪しみの眼差しが突き刺さった。
「嘘じゃないですよ!」
咄嗟に否定しこのままじゃ車に確実に引かれます。と真意を伝える。
これは本当の事だから後ろめたさもなにも無い。
少し顔が緩むがなんとか平常心を保ち、少し待ってろと言うマルコ先生の隣にさも当たり前の様にピトリと引っ付く。
「邪魔だよい…」
「気のせいですよ」
何度も離れろと押されたが、暫くすると諦めてくれたのか私を空気のように扱ってきた。
これはチャンスと、首に腕を回しスリスリと大好きな匂いを嗅ぐ。
「匂いを嗅ぐんじゃねぇよい…」
「わかってないですねぇ、マルコ先生…」
いいですか?匂いは凄く重要なんです、全く分かっていない彼に私は力説をお見舞いした。
まず、『MHC』と呼ばれる、あ、これは(主要組織適合抗原複合体)と言ってですね、すなわち白血球の血液型の事なんですが、これが…
「ああー!わかったよい」
私の力説を中断させ、もくもくと机に向かうマルコ先生を拗ねるように見つめ、まだ続きがあるんだけどなと、思いながらも
「いい匂いです」
としがみ付く。
「……こんな積極的な生徒は初めてだよぃ」
お初で結構!
マルコ先生も私の初恋の相手なので、お初ですと伝えれば、
「はぁ…」
溜め息で返される返事。
それにしても自分の行動に驚きだ。
男性に自分から抱き付いたのも初めてだし、いきなり告白もないだろうと。
何より相手は先生。
案外、私は大胆だったんだなと新たな発見をする。
きっと…この初恋は叶わないだろう。
何故かそう感じた。
でも…でも!気持ちが抑えられない。これが…恋!!
「耳元でぶつぶつ煩いよい!」
「え?声に出してました?」
「はぁ…帰るよい」
そんな飽きれ顔のマルコ先生が鞄を持ってソソクさと出ていく。
「わっ!待ってください」
慌てて彼の後を追おうとした私はありとあらゆる所にぶつかり、そして、こけた。
「ほんとに見えないみたいだねぃ…」
信じていなかったのか…
酷いです…マルコ先生。
そして、無理矢理手を繋ぎ車まで辿り着く。
そうして私は、まんまと思惑に乗らされたマルコ先生と共に初下校と言う記念すべき時を迎えられたのだ。