マルコ先生ver
| ナノ
#34 彼の休日
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マルコside
また、#name#に嫌われちまったよい。
あの日、偶然入った図書室で眠っていた#name#。
その寝顔を見て、思わず胸が締め付けられた。
触れたい衝動を何とか押さえその場を去ろうとしたが、体が勝手に動いちまった。
寝ている彼女に上着を掛け、意図的に関わりを持とうとした。
彼女の事だ。必ず返しに来るだろう。
そうして、いつもならとっくに帰っていると言うのに、彼女が来るのを、今か今かと待ちわびていた。
暫く経った処で、扉の前に人の気配を感じる。
やっと来たかと、高鳴る鼓動を落ち着かせ戸を開けた。
だが、折角彼女と話せるチャンスが訪れたと言うのに、帰りたがる彼女を何とか引き止めたかったオレは、気の利いた台詞一つも出で来やしない。
オレの目を見ようとしない彼女。
オレの問いに答えてくれない彼女。
そして、泣き出しそうな目をしていた彼女。
あんな顔させたい訳じゃねぇんだ。
なぁ、#name#。もう一度オレにチャンスをくれよい。
次に、お前から求めてきたら、しっかり受け止めてやる。
オレは、そんな卑怯な考えしか出来ずに、ただ彼女に願うしかなかった。
そんな出来事から数日後、溜め息ばかり吐きながら、自宅の門を潜った。
何もかもが億劫に思っていたオレに、兄弟の浮ついた話が飛び込んでくる。
それはまだ大学生のハルタが、女を連れ込んだと言う話だった。
他人ならどうでもいいのだが、兄弟となれば話は別だ。
上手くいけばいいなと、応援してやった。
それからまた数日後、皆で寛いでいた処、ハルタが皆に問い掛けてきた。
「ねぇ、女の子ってさ、何処に連れて行けば喜ぶの?」
「お!例の彼女か?ん?」
「そんなんじゃないって。で、何処?」
「またまた。あー、そうだな、何処だろな?マルコ?」
「オレに聞くなよい」
「なんだよ!いつも女子高生に囲まれてるくせによぉ!!」
「仕事だろい・・・」
「くそっ!オレも教員免許取ればよかったぜ!!」
「で!?何処だよ!?」
「ハルタ、人に依るからねい。どんな子なんだい?」
「どんなって・・・何かほっとけないって言うか」
「ハハ。なんだいそりゃ?」
「ふとした時にさ、悲しそうな目をするんだ。」
「だからよい、系統だよい。系統。」
「系統?・・・普通かな?」
「ダメだこりゃ。」
「だねい。遊園地でも行って来いよい」
「あ!!子ども扱いしないでよね!もう、いいよ」
「あ、拗ねちまった」
「ククッ。いいねい若い奴は。」
そんな兄弟を温かい目で見ながらも、以前の#name#を誘ったら、遊園地なんて喜んで行きそうだなと、叶わない妄想を思い浮かべていた。
そして今日は休日。
特に用事もなかったオレは、本でも買いに行こうかと腰を上げる。
出掛けに、ハルタがいそいそと支度をしているのを見つけ、
「なんだい?デートかい?」
「だから、彼女とはそんなんじゃないんだって!!」
少し顔を赤らめながらそう口にする兄弟に、運転だけは気を付けろよと付けたし、家を出た。
あの様子を見ると、まだ付き合ってはいないのだろうと思いながら、兄弟の初々しさに頬が緩んだ。
「全く、羨ましいよい」
そんな本音を独り言の様に呟き、車に乗り込んだ。
#name#は今頃何をしているのだろうか・・・
そう言えば、休日の彼女の行動はあまり聞いた事がなかったなと、今では全く来なくなった、ブログの様に送られてきたメールを思い出し、自嘲的な気分に覆われる。
「女々しいねい、オレは・・・」
そうして適当な書籍を見つけ、落ち着いた雰囲気のカフェでページを開く。
適当に選んだ割には以外と興味を引かれる内容に、気が付けば読破してしまっていたオレは、ふと外に目をやると、陽が傾きかけている処だった。
そろそろ帰ろうかと、軽く背伸びをし車に向かう。
家に着き、軽くシャワーを浴びて一仕事しようかと、机に向かった。
一段落着いた所で、便所に行こうと腰を上げる。
家には便所が8ヵ所程あるのだが、何気に少し遠目の便所に足が向いた。
特に理由はない。なんとなくだ。
そして、ドアノブに手を掛けたと同時に内側から扉が開いた。
そこでオレの目に飛び込んできた映像に、オレは心臓が飛び出そうになったのだった。