マルコ先生ver
| ナノ
#33 重ねた想い
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「ねぇ、ご飯食べて帰れば?」
「いえ!大丈夫です」
「そお?あ、制服乾いたら送ってあげるね」
「はい。すみません」
「フフ。#name#ちゃんは謝ってばかりだね?」
「…っ」
「あ、そのネックレス、可愛いね。もしかして…彼氏から?」
「い、いえっ」
「ふぅーん」
「……」
そうして、初めはぎこちない会話を交わしていたが、最後の方はかなり打ち解け会話も弾み、無邪気な笑顔の彼と時を過ごしながら私は制服が乾くのを待っていた。
そう。下に、彼が居るとも知らずに。
「お帰りなさいませ」
「ああ」
「晩御飯召し上がりますか?」
「そうだねい、もらうよい」
「畏まりました」
「お、マルコお疲れさん。」
「ああ…」
「そうそう、ビッグニュースがあるぞ」
「ビッグニュース?」
「ああ、ハルタの奴が女連れ込んでるらしいぜ」
「へぇ。珍しいねい」
「だろ?だが見せてくれねぇんだ」
「ハハッ。邪魔すんなよい」
「分かってるよ」
そんな会話が交わされているとは露知らず、私は暢気にハルタさんの部屋で寛いでいた。そうして他愛もない会話をしていると、控えめなノックと共に先程のお手伝いさんが顔を出し綺麗にたたまれすっかり乾かされた制服を手渡され、この偶然出会った彼との時間に終止符の鐘が鳴る。
「あ、先出てて?左の黒い車ね。はい、これ鍵」
「はい」
すぐ来るからと言う彼に頷きを返し、一足先に車に乗り込み浅い溜息を吐いた。何事もなかったといえ、初対面の男性の家にほいほい着いて行きお風呂まで借りるとは。
そんな貞操なさなさの自分を少し心配しながらも、それでも、理屈では言い表せない親近感の様なものをもったハルタさんに不思議な感情が芽生えだす。
「お待たせ!行こうか」
「はい。お願いします」
そうして帰りの車内でもまるで昔からの知り合いの様に会話は弾み、初対面ながらかなり打ち解けた私達はアドレスを交換してまた会う約束をした。
「では、また今度」
「うん!次はご飯でも行こうよ」
「そうですね、今日は本当にありがとうございました」
「いいって。じゃお休み#name#ちゃん」
「お休みなさい」
家へと辿り着いた私は、今日は何だか凄い体験をしてしまったなと思い返していた。
ハルタさんは年上なのにとても可愛くて、失礼だが何だか弟の様な感じかした。
でも、何であんなに打ち解けられたのだろう…
そう疑問に思った処で、ふと気付いた事があった。
匂い…
そう。ハルタさんから、そして家から、僅かにマルコ先生の匂いがしたのだ。
居るんだ。同じ匂いの人って…
だからハルタさんともあまり警戒もせず過ごせたのかと、納得した私は少しだけ嬉しい気持ちになっていた。
マルコ先生と同じ匂いか…
そうして、彼にマルコ先生を重ねた私は、また彼に会う事を少しだけ楽しみにしていたのだった。