マルコ先生ver<img src="//img.mobilerz.net/img/i/63879.gif" border=0 align=absmiddle /> | ナノ

#28 最後のチャンス



マルコside





一体どうしたって言うんだい。何だ?彼女に何があった?

予想だにしない展開に、オレは時が止まっちまったみたいに動けなくなってしまった。

"さよなら"彼女はそう言って部屋を出て行った。
さよなら?どう言う意味だ?

オレへの気持ちが無くなったと言う事なのか?
もう、ここへは来ないという意味なのか・・・

それに、"大好きだったのに"と言っていたな・・・
だったという事は、終止形だ。
オレへの気持ちが終止符を打ったという事なのか。

何故だ?何故いきなり・・・
オレが抱かなかったからか?

バカを言うんじゃねぇよい。
こんな学校のソファーなんかで、経験のない好きな女を抱ける訳ないだろう。

だが、他に思い当たる節がない。
まさかほんとに・・・

そこまで考えてオレは目を閉じた。

彼女の事だ。明日になれば、また無邪気な笑顔で来るに違いない。
そうだ。そうに決まっている。


そんなオレの浅はかな予想は、見事に裏切られる事になった。

その日も、またその次の日も、毎日うざいくらいにあったメールと共に、彼女はパッタリとオレとの接触を断ったのだ。



今日で何日になる?
#name#との接触がない日々に、オレは日にちさえも分からなくなる程混乱していた。

授業中の彼女は至っていつも通り。
オレはそんな彼女の豹変振りに動揺が隠せずにいた。

そして今は小テスト中。
教室の中を巡回しながら、彼女に背後から近づく。

回答を覗く様に、彼女の手元にある解答用紙を手前に引こうと手を掛けた瞬間、

"グシャリ"
そう。そんな効果音と共に、#name#は解答用紙を握り潰したのだ。

「ぁ・・・すみません」

久し振りに聞く彼女の声が、胸に温かさを宿しながらも皺くちゃになった解答用紙に彼女の心の内が見えた様な気がして胸が痛んだ。

「放課後・・・顔だせよい」

少しの威圧感を込めて、彼女にそう告げたオレは、
それを理由に彼女との接触のチャンスを手に入れる事になる。



そして放課後。

彼女は来るだろうか・・・
否、必ず来るだろう。自分に非がある行為をしたんだ。
嫌でも来なくてはならない。

そろそろ来るかと扉に意識を向けると、人の気配がした。

間違いなく#name#だろう。
戸惑っているのか・・・

オレは扉に向かい勢い良く戸を開いた。

「っ!!」

その瞬間、目に飛び込んできたのは、酷く驚いた表情の彼女。

そんな彼女の手を掴み、部屋へと引き摺り込む。

いつもの椅子ではなくソファーへと彼女を座らせ、両手を握ったまま彼女と向き合った。

さあ、何から聞こうか・・・

さよならの意味か?
何故、抱いてくれなんて言ったのかか?
解答用紙の事は・・・どうでもいい。


「#name#・・・何かあったのかい?」

しかし、口から出た言葉は何とも抽象的な言葉で、自分のへタレさに嫌気がさしそうだった。

「・・・・・・・・」

そんなオレの問い掛けに、彼女は無言で俯いたままだ。

「なぁ#name#。何があったんだい?」

何故いきなり来なくなった?
オレが何かしたのか?したなら言ってくれよい。
それとも、他に惚れた男でもできたのかい?

そう聞きたい所だが、そんな事を聞ける筈もなく、ただ、彼女の返答を待つだけだ。

「・・・・・・」

それでも彼女は無言のままだ。

俯いている所為で、表情が伺えない。
一体どんな顔でオレの言葉を聞いているのか・・・

居た堪れなくなったオレは、握っていた手を解き彼女を抱き寄せる。

オレの胸にすっぽりと収まった彼女に、再度、口を開く。

「言えよい。何があった?」

「っ・・・」

僅かに聞えた、息を呑む声。
そんなに言いにくい事なのか・・・

「#name#?」

彼女の頭を撫でながら、最大限に優しい声色で名を呼んだ。

そうしてやっと彼女が口を開く。

「ゃ・・・止めてください」

「?#name#・・・?」

「離して!!」

その悲痛な叫び声と共に、オレの胸を力一杯押し返した彼女の目には、大粒の涙がいくつも流れていた。

「ぉい・・・どうし」

「何なんですか!?」

そんなに私をからかって、楽しいんですか!?
私の事なんて、なんとも思ってないくせに!!
何でこんな・・・だきしめた・・・り

そう泣きながらオレに向けて悲痛な叫びをあげる彼女に、オレはある結論がでた。

成る程なと、いつまで経っても向き合わないオレに、痺れを切らしたんだと。

さぁ、どうする。オレ。

このまま彼女に気持ちを伝えれば、その涙を止める事ができるだろう。

伝えなければ、もう彼女に触れる事さえ出来なくなってしまうかもしれない。

どうする・・・



いつまでも黙っているオレに痺れを切らした彼女が、再び口を開いた。

「・・・・・・ライ」

「・・・?」

「マルコ先生なんか、大嫌いです!!」

「っ!!」

そう吐き捨てて、部屋を飛び出していってしまった彼女を、オレは追い掛ける事が出来ずに、あの時の様に動けずにいた。

あぁ、何やってるんだい・・・オレは。

簡単じゃないか。素直に好きだと、何よりも大切だと言えばいい事じゃないかい。

何がこんなにオレを拘束しているのか・・・

だが、それだけは言えない自分がいて、体の力が全部抜けちまったみたいに、ソファーに身を預け顔を覆った。


「大嫌いか・・・・・バカだねい・・・オレは」



だが…これが、オレと#name#の結末だ。

彼女は待てなかった。
そういう事だ。





そうして、最後のチャンスを自ら逃したオレは、この時の事を、後々後悔する事になるのだった。

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