マルコ先生ver<img src="//img.mobilerz.net/img/i/63879.gif" border=0 align=absmiddle /> | ナノ

#27 彼の代わり



頭が真っ白だった。

初めての恋。
報われなかった恋。
期待して裏切られた恋。
嘘をつかれた恋。

本当に、本当に大好きだった。
あなたを好きだった自分さえも、大好きだった。

私が子供だから?
先生と生徒だから?
それとも、恋人がいたから?

彼は何を思い、私に接してくれていたのだろう。
無理矢理にでも聞き出せばよかった。

じゃないと、この心のもやもやが晴れそうにない。

部屋に戻り、ふと、彼と二人で写っている写真に目が留まる。

「・・・・・・・」

これで良かったのかも知れない。
世の中に、偶然なんてないんだと、どこかの哲学者が言っていた。

ではあの日、真実を知ったのも、必然なんだと。

いつまでも、叶わない恋なんてするなと、神様からの贈り物だったのかもしれない。

私はその写真をそっと抜き取った。
小さめの、少し頑丈な箱を用意し、今まで集めた宝物とも言える写真達を仕舞う。

最後に、彼から貰った誕生日プレゼント。
毎日、肌身離さず着けていたネックレスを入れて、蓋を閉める。

胸を、力一杯締め付けられた様に苦しい。

本当に、このまま彼を諦めていいのか。

好きでいるだけならいいんじゃないのか。

でも、もう彼には纏わり付かないと決めたのだ。

彼に触れないまま、密かに思いを寄せるなんて・・・きっと頭がおかしくなってしまうだろう。



深い溜め息をつき、こんなに苦しいものだったのかと、自分で出した決断に自問自答を始めてしまう。



「マルコ先生…」

切ない。切な過ぎる。
もう二度と会わないでいいのなら、まだ救われたのに。

後一年以上、私は嫌でも、彼を見なければならない。

「はぁ…」

学校行きたくないな…
否、頑張れ私。

この結末は、想定内だった筈だ。

そう自分に喝を入れ、箱をクローゼットの奥深くへ仕舞った。

大丈夫。きっといつかこの思いは消えうせていく。
素敵な思い出に変わっていく事を願って、私は眠りに就いた。







そして、翌日からマルコ先生という日課がなくなってしまった私は、ただ学校へ行き、勉強をし、帰宅すると言う、なんとも味気ない生活を送る事になる。

あの日から、彼の元へ行かなくなって、四日目だ。
マルコ先生は、いつもと変わらない様子で授業を進める。

勿論、連絡はない。

何度も、彼のアドレスを消そうとした。
でも・・・出来なかった。

完全に忘れてしまうまでは、残しておきたかったのだ。

それに、もしかしたら連絡があるかもしれない。

そんな淡い期待を胸に、日に何度も携帯画面を見つめていた。



「はぁ……」

「もう、あんた溜め息ばっかりよ?」

そんなんじゃ、幸せが逃げちゃうわと、彼女が呆れている。

「だって…まだ無理だよ」

まだ四日だ。そんなに都合よく切り替えが行く訳がない。

「…そうね」

「はぁ・・・・・」

「はぁ・・・もう。うつっちゃったじやない。よし!今日パァーっと遊びましょう」

丁度明日休みだしね!と、あまり乗る気ではないのだが、彼女の好意だ。素直に乗る事にした。

「となれば…トラファルガー!」

「は?ちょっとナミ!」

「今日暇?だったら・・・」



それから強引なナミに促され、この間の合コンメンバーで遊ぶ事になってしまった。






「でさぁー」

「うそ!凄いわね」

「だろ、でそれからよぉ」

《ギャハハハハ…》

皆の愉しそうな会話を聞きながら、私はその輪の中に入れずにいた。

「どうした?浮かない顔して」

「…何でもない」

「抜けるか?」

「…嫌だ」

「行くぞ」

「…っ、嫌だって…」


相変わらす強引なローに、引き摺られながら外に出た。

「もう!嫌だって言ったじゃない」

「フフ…あのまま居ても退屈だったろ」

「…そんな事ない」


それから、川沿いのベンチに移動し、溜め息と共に腰掛ける。

「………」

「……………」

何…この空気。
つまらない。皆の所に帰ろう。

「私、戻るね」

そう決めた私は、有言実行と腰を上げる。

「待てよ」

その呼び掛けと同時に腕を取られた。

「あいつの事、諦めるんだって?」

ナミに聞いたのだろう。
彼の耳に入る事は想定内だ。

「…うん」

「へぇ…それは願ったりだな」

そのまま抱き寄せられ、お互いの息がかかる距離まで、顔が近づいてきた。

「忘れさせてやるよ」

「……」

言うと思った。

そんなお決まりの言葉を吐く彼に、出来るのならそうしてくれと言う様に、私はゆっくりと、目を閉じたのだった。

「#name#…好きだ」

重ねられた唇に、マルコ先生を思い浮かべてしまった私は、彼とは違う唇の感覚に涙が溢れてきた。

そんなローとのキスは、少し冷たく、そして涙の味がしたのだった。



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