マルコ先生ver
| ナノ
#25 一大決心
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「ねぇ、明日買い物付き合ってよ」
そんな彼女のお願いに、最近何度も騙された私は、素直に顔を縦に振る事が出来ないでいた。
「・・・二人で?」
「そうよ。あ、今回は本当だって。」
新しい服が欲しいのと、彼女は言っているが、
「その話が事実だと言う証明は?」
「あんたも疑い深いわね・・・」
じゃぁ、うちに迎えに来てよ。待ち合わせじゃなかったら、大丈夫でしょ。なんて言っているが、ほんとに大丈夫だろうか・・・不安だ。
「わかった。何時?」
そうして、日曜日はナミと"二人"で買い物に行く事になったのだ。
「あ、これ可愛いわね。わっ!こっちもいいわ」
服を買うと決めてきた彼女は、目を輝かせ吟味中だ。
「私も何か買おうかな・・・」
せっかく来たのだから、何かないものかと目を配らせる。
「ねぇ、これどう思う?」
そうやって、騙される事なく無事買い物も終わり、どこかでお茶でもと街をぶらつく。
暫く歩いた所で、いきなり勢い良く腕を取られ方向転換させられた。
「わっ!!痛いよ、もう」
「あ、ごめん。あ、あ、あっち!!」
あっちに確か美味しいケーキが食べられるお店があったと、グイグイ腕を引っ張る彼女に、
「え・・・?どうしたの、急に・・・」
ふと、今まで向かっていた方向に目をやった私は・・・
見なければよかったと、心底後悔する事になる。
「ぇ・・・マルコ・・・先生と・・・」
私が見たものとは、なんともナイスバディな綺麗な女の人と、マルコ先生が、腕を組んで歩いていたのだ。
「あぁ・・・遅かったか」
ナミは私に見せまいとしてくれたのか。
気付かなくてごめんね。
そう友人の行為に感謝しつつ、私は二人に釘付けだ。
半ば強引に腕を取られ、少しうんざりした表情の彼だが、しっかりと彼女に付き合っている感じがした。
どこから見ても、お似合いの大人なカップルだ。
私はそんな光景を見ながら、くらりと眩暈がした。
あんな素敵な彼女がいたなら、言ってくれればいいのにと。
あれ程言ったじゃないか。彼女がいるなら教えてくれと。
そんな彼の嘘と、目の前で見せ付けられた行為に、私は嫉妬心やら切ないやらで、息をするのも忘れそうな程、胸が苦しくなった。
「#name#・・・大丈夫?」
「だ、大丈夫じゃない・・・」
心を許せる唯一の友人だ。
嘘なんか付く必要はない。
その直後、とめどなく流れてくる涙に私はどうやって帰ったかも分からない程、頭の中が真っ白だった。
「・・・止めちゃいなさいよ!マルコ先生なんか」
嘘つきはダメよ。と、未だ放心状態の私を気遣ってくれる彼女。
「ぅ・・・暫く立ち直れそうにない・・・」
「まぁ、気持ちは分かるけどさ・・・」
「ねぇ、もしかしてもしかすると…親戚の人かも」
「んな訳ないじゃない!」
「ふぇっ・・・だって・・・ヒック」
「あーもう、そうだ」
やっぱり、次の恋を探すのが一番よと言い出す彼女に、
「当分無理。次なんて無理無理」
無理に決まっている。彼への思いは、そんなに簡単に諦めれる様なものじゃない。
「打って付けがいるじゃない。トラファルガーがさっ」
「・・・・・ロー?」
「そう。彼に忘れさせてもらいなさいよ」
いいじゃない、お金持ちだし、カッコイイし、なによりあんたの事思ってくれてるのよ?と、彼をゴリ押しする彼女。
「忘れさせてくれるか・・・」
ローが?私の中から、マルコ先生を追い出す事なんか出来るのか・・・?
「何か・・・嫌だな。ローってとこが」
「贅沢言わないの。早く忘れちゃいなさい」
だいたい、貴重な高校生活をあんな脈もなにもない先生に捧げるなんて、勿体無いのよと、彼女の人生論は夜遅くまで続いたのだった。
そして次の日、幸いマルコ先生の授業はなかった事に胸を撫で下ろす。
彼女がいる事を隠していた彼。
きっと、問い詰めても口を割る事はしないだろう。
だったら、初めから言っていた筈だ。
何故隠していたのか・・・先生として、生徒を傷つけない為?
だったとしたら、とんだ勘違いだ。
今の私は、底なし沼の様に深く傷ついて、そして怒りすら覚えている。
所詮、彼からしたら子供の戯言としか思われていなかったのだろう。
とは言っても、いきなり嫌いになれる訳でもなく、まだ未練たっぷりな私は、最後の賭けにでる事にした。
これで、ダメだったら…
きっぱり諦めようと。
私は一大決心を決め、彼の元へ向かったのだった。