マルコ先生ver
| ナノ
#21 現状維持
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「880円になります」
「ありがとうございました」
「わぁっ」
私が何に歓喜の声を上げたかと言うと…
「このマルコ先生物凄くカッコイイっ!」
そう。花火を見ている時に不意討ちで撮った写真が仕上がったのだ。
出来上がった写真は、コレクションの中にはない表情の彼が写し出されており、初めてのツーショットは間違いなく部屋に飾るつもりだ。
勿論、10枚程焼き回しをしており、彼にもあげるつもりでいる。
その日は朝から、何度も写真を眺め私の顔はおかしなくらい緩んでいたに違いない。
「いつにも増してきしょく悪いわよ」
「いいの!私は幸せなの」
そんなナミからの罵声をさらりとかわし、また写真を眺め1人ニヤケる。
「…。それはそうと、今日ちょっと付き合ってくれない?」
そう発言する彼女に疑いの眼差しを送った。
「また変態ローのお出ましじゃないでしょうね…?」
以前騙された私は信用深く問い詰める。
もう、あれは御免だ。
「彼じゃないんだけど…合コン」
人数足りないのと、可愛くお願いポーズをとる彼女だが、
「パス!行かない」
間違いなく行っても楽しくも何もないに決まってる。
「お願い!居るだけでいいから!」
だが、とことん食らい付いてくる友人に、少々面倒になった私は渋々了承してしまった。
合コンか…本当に行きたくない。
マルコ先生に言ったら何て言われるかな。
彼の事だから、"遅くまで遊ぶなよい"なんて、ありきたりな事を言うんだろうな。
よし。試しに聞いてみよう。まさかの"行くな"を期待して、私は彼の元へ足を向けた。
「お邪魔虫です」
「ついに虫になったのかい?似合ってるよい」
「…。言葉遊びですよ」
「ククッ。どうした?」
彼のボケを受け流しながら、早速本題に入ってみる。
「合コン!」
「…主語がねぇよい」
「合コン行ってもいいですか?」
「……。何でオレに聞くんだい?」
勝手に行ってこいと、机に目線を向けたまま言葉を投げられる。
その至極冷たく予想通りの対応に、私は腕にすがり付きながら悲願する様に口にした。
「行くなって言ってくださいよ!」
お前はオレのだ!とか、そういうやつを期待していましたと口にすれば、
「はぁ…。行きたいんだろい?」
「付き合いです」
「じゃ、付き合ってこいよい」
まぁ、初めからこうなる事は分かっていたが、やっぱり寂しい。
少し悔しくなった私は隙を見て、毎度の如く向き合う形で膝に座り込み、腕を巻き付けもう一度聞いてみた。
「ほんとに行ってもいいんですか?」
「…その前に、何て格好してんだよい」
どこで覚えたんだと、心底呆れ顔で私を降ろそうと悪戦苦闘している彼。
「嫌だ嫌だ!離れたくないです」
彼の苦闘に対抗する様に更に抱き着き、居心地のいい温もりを堪能する。
「ったくよい。#name#」
呆れた様な、そして少し困った様な口調で、私の名を呼び肩をやんわり押し返すマルコ先生。
「ほんとに困った子だねい」
少し顔を近付ければキスを出来てしまう距離にいる彼は、目尻を下げ、優しい眼差しでそう口にした。
そんな目で見られたら何だか期待してしまう。
この間から、まるで私の気持ちを受け止めてくれたかの様な態度に、私は思わず喉まで言葉が出掛かった。
「っ……」
でも、この言葉を吐き出して、玉砕する覚悟はまだ出来てない。
今はまだ、このままでいいと、甘えさせてもらおうと思った。
マルコ先生を諦める覚悟ができるまでは。
「キス…してください」
「……」
優しくて狡い彼にそう告げれば、ゆっくり近づいて来る唇。
もうっ。ほんとにいつか刺されますよ!私に。
「はい!スペシャルプレゼントです」
「スペシャルって…これがかい?」
「そうですけど、何か?」
「……ありがとよい」
「机に飾ってて下さいね?」
「…飾れる訳ねぇだろい」