マルコ先生ver
| ナノ
#16 彼の看病 vol![](//img.mobilerz.net/img/i/63879.gif)
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「はい!プレゼントです」
「…お返しするよい」
「ダメですよっ!受けとってください」
「嫌だよい」
何故こんなに、私からのプレゼントを彼が拒否するかと言うと、
「もし私が、不審者に部屋で監禁されたら、誰が助けるんですか!?」
「残念なお知らせだと、心に閉まっておくよい」
「なっ!?相変わらず酷い」
そう。そのプレゼントは私の部屋の合鍵。
現在、日本で私の部屋の合鍵を持っているのは、私と管理会社くらいだ。
「もしもの為ですよ!」
持っててくださいと、彼に押し付ける。
「はぁ…使う日が来ない事を祈るよい」
そうして無事合鍵を渡す事のできた私は、いつにもなくご機嫌だ。
「24時間、何時でも来てください」
「呼ばれても来ないだろうよい」
「………」
あの、私のバカ発言から彼とはキスをしていない。
してくれるのならば毎日して欲しいのだが、あの怒った顔が怖すぎて踏み出せないでいる。
それでも彼に触れていたい私は、いつもピトリと引っ付いているのだ。
放課後になると、ネクタイを取っている為彼の鎖骨がチラリと見えて何とも魅惑的だ。
彼の鎖骨を見るのが今私の一番のお気に入りになっていた。
「今日も素敵で、イイ匂いですね」
「…そうかい」
「そうですよ!冷たいなぁ」
いつもながら冷たい。
そんなに私に興味がないのか…。
もう片思い期間一年を過ぎてしまった。
このまま片思い歴三年で、彼と会えなくなってしまうのかなと、憂鬱な気分になる。
「マルコ先生。大好きですよ」
「なんだい?改まって」
「いや…中々伝わらないので」
改ためて言ってみたのだと言うと、
「伝わってるよい」
じゃないと、一年も通わないだろうとそろそろ諦めろと言う彼。
「諦め…られたら…どんなに楽か」
「……」
私だって、諦めたい。この恋は辛すぎだ。
急に大人しくなった私に、よしよしと頭を撫でだすマルコ先生。
「そういうのが…狡いんですよ」
「生意気言うんじゃねぇよい」
やはり彼は優しい。
その優しさは、私には辛い行為なんだと彼は気付いてしているのだろうか…
それから、数日後。
《うっ…声が出ない》
私は、風邪を引いた。
声が出ないのと、かなりの熱があるのだろう。
体が思う様に動かない。
それでも無断欠席はいけないと、ふらつく足取りで携帯を探しにベッドをでた所で、私の記憶はない。
《ぅ…ぅん》
「起きたかい?」
…?マルコ先生の幻聴が聞こえる。
熱でおかしくなったのかと、虚ろな思考を無理やり叩き起こす。
「何か飲むかい?」
声の方に目線を向けると、愛しの彼の姿。
《…マルコ先生の幻覚だ》
私生きてるよね?
それとも夢か…
有り得ない現実に、可能性をあげてみる。
「大丈夫かよい…ったく」
やけにリアルな幻覚だな…。私の妄想も大したものだと自分を誉めた所で、
《マルコ先生!?》
声にならない言葉を吐きながら体を起こした。
幾ら高熱だからといって、私はここまで妄想癖はない。
「起きるなよい。点滴が外れるだろい」
何故彼がここに?点滴…?
目線だけで、私の心を読み取った彼は、
無断欠席なんて有り得ないと言うビスタ先生に、様子を見てきてくれと頼まれ、渋々来てみれば、リビングで倒れている私を発見し、医者を呼んでくれたのだと。
《か、感激です!!》
両手を胸の前で組み、精一杯気持ちを伝える様に目を潤ませた。
「大事に至らなくて良かったよい」
ポンポンと頭を撫で、何か食って薬を飲めと寝室をでていく背中を見詰めながら、まさか、マルコ先生手作りのお粥なんかが登場するのかと、期待に胸が膨らむ。
暫くして、戻ってきた彼の手には…
《お粥!!》
凄い!私も遂にエスパーの仲間入りだと、目を輝かせる。
「ククッ。嬉しそうだねい」
《もちろんですよ!》
ウンウンと頷く私に、冷ましているのかぐるぐるとスプーンを回しながら、
「それにしても、綺麗にしてるじゃねぇか」
もっと汚い部屋を想像してたよいと、失礼な言葉とともに目線を室内に配らせている無礼者に未振り手振りで噛み付いた。
《酷いです!私は、綺麗好きなんですよ!》
「はっ、何言ってるかわかんねぇよい」
そう小馬鹿にした様に笑いながらも、お粥を食べさせてくれる仕草は至極優しい。
しかし、喉が痛くて何も食べたくはない。
二口程で、もう要らないと態度で示せば、
「ほぉ…食わねぇ気かい」
その"ほぉ"に、どれだけの意味が込められているのか…
ゾクリと悪寒が走った私は、無意識に口を開けてしまった。
「よし。イイ子だ」
その後も、苦い薬を飲まされ、まだ彼と絡みたかった私は強制的に寝かされてしまった。
《傍にいてください》
目線と彼の手を握り、意思を伝える。
「一度、学校に戻らないとねぃ」
また来るよいと、まさかの発言に、嬉しさと安心感で私は目を瞑ったのだ。