マルコ先生ver
| ナノ
#12 彼からのご褒美
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マルコside
はぁ…#name#も懲りもせず
よくまぁ毎日毎日…
好かれて悪い気はしないが、相手は生徒だ。
下手に手も出せねぇ。
毎日、ブログの様なメールをしてくるせいで、日頃の彼女の行動が手に取る様に分かるようになった。
まるで、常に一緒に居るみたいな感覚に陥る。
それに…実を言うとかなりストライクだ。
顔、スタイル、雰囲気。
今は未だ幼さが残るが、後二、三年もしたらもっと女に磨きがかかるだろう。
この間、寝込みにキスをされた時、何で口にしないのか、少し苛ついた。
その後もトライしてきたが、寸前で止めやがった。
その辺がガキなんだよい。
オレは、頻繁に出る溜め息を吐きながら、珈琲でも飲もうと腰を上げた所で、また座り直す。
もうすぐしたら、#name#が来る時間だ。
彼女は部屋に着いたら、オレに珈琲を淹れるのが日課だ。
この間オレの誕生日にくれた、鮮やかな青のマグカップ。
そして自分用に薄いピンクのマグカップも用意し、仲良くポットの横に並べてやがる。
オレもすっかり、#name#のペースにハマってるなと、自嘲気味な笑いがでる。
いつまで、もつのやら。
彼女が飽きるのを待つか、
それとも…
コンコン
「マルコ先生」
来たか。
「喉が渇いたよい」
早く淹れろと、彼女を待っていた様な言葉を掛ける。
「は、はい!すぐ淹れますね」
ククッ。このくらいで、顔真っ赤にしてんじゃねぇよい。
そうして、両手にカップを持ち、いつもの如くピトリとくっつく#name#。
あぁ、そう言えばと
「今日飯でも行くかい?」
オレはマグカップのお礼に、飯でも連れてってやろうと、彼女を誘ってみた。
飯くらいいいだろ。
こんなに健気に通ってくる彼女にご褒美だい。
「デ、デートのお誘いですか?」
行きます!是非是非行きますと、興奮しだす彼女に、デートじゃないと言い放ち、車へ向かう。
彼女を乗せるのは二回目だなと、もう乗せる事はないだろうと思っていた自分に笑いがでた。
「あ、笑ってる!」
そんなに私とデートが嬉しいんですねと、勘違いをしている彼女に、鋭い目線を送る。
そうこうしている内に、目的地に着いた。
ここは、オレの兄弟が営む店で、かなり評判の人気店だ。
一応、席を確保する為に電話を入れたが、女か女かと煩かったので、問いには答えず電話を切った。
さて、制服姿の彼女を見てなんと言われるか…
「げげげ!お前遂に生徒に手を…」
ほらねぃ。
「違うよい…」
早く通せと、下らない事を言うアホを黙らせる。
「初めまして。次期彼女になる#name#と申します」
よろしくお願いしますと、こっちにもアホが居たと、溜め息がでた。
「お、おぅ。オレはマルコの兄弟で、サッチってんだ。」
じゃぁ、私のお兄さんになる方ですね!と、訳の分からない話で盛り上がっている…
「いいから、飯もってこいよい」
オレは下らない話しに終止符を打つように、ドスの効いた声で促した。
「おう。待ってろよ」
奴と彼女は案外息が合うようだ。アホさ加減も似ている。
「マルコ先生のご兄弟に会えるなんて」
感激です!と微笑む彼女に、少しだけつられて顔が緩む。
何にでも、素直に感情を露にできる所は、可愛いなと思う。
若さの特権か、彼女の性質なのかは分からないが。
しかし、以外としっかりしている所もあって、二人きりじゃない場所では、抱き付いてきたりは絶対にしない。
そこはホントに感心している
「はい!お待たせ」
「わぁ!美味しそうです!」
料理を見て感激している彼女に、たらふく食えと勧めた所で、サッチが口を開く。
「可愛いな〜女子高生」
まだ居たのか。あっちに行けと目で訴えるが、彼女に夢中で気づいちゃいねぇ。
「マルコの事が好きなわけ?どこがいいの?」
止めておけだの、オレにしろだの言っているが、
「嫌です!私は、マルコ先生一筋なんです!」
言うと思ったよい。
「ひゅー。お熱いな、マルコ」
「オレに振るなよい」
そうだ。オレに振らないでくれ。
こうなる事を分かっていながら、何故連れてきてしまったのか…反省だ。
「#name#ちゃん、オレ応援するよ」
「ほ、ほんとですか!?」
嬉しいです!マルコ先生、見方ができました!と騒ぐ彼女。
「…よかったねい」
サッチなんか見方に付けても、意味なんか無いと思いながらも、口にはしなかった。
何故なら、彼女の顔がとても嬉しそうで、もう少しだけ、その顔を見ていたくなったからだ。
料理も食べ終わり、制服姿の彼女を、夜に連れ回すわけにはいかないので、早速帰る事にした。
帰り際に、サッチと何やらコソコソと話していたが、どうせ下らない事だと気にせず車へ向かう。
「ご馳走様でした!」
美味しかったと、また行きたいと言う彼女に、適当に相槌をうつ。
家の前に着き、早く寝ろと、彼女が降りるのを待つが、一向に降りる気配がない。
「#name#」
降りろと、名を呼ぶ声に威圧をかける。
「ぅ…まだ一緒に居たいです」
「ダメだ。降りろ」
「もぅ少しだけ…だめですか?」
彼女にしては珍しく駄々をこねる。
いつもは、一度で引くんだが…今日は我が儘だな。
「#name#、困らせんじゃねぇよい」
これは彼女に一番効く言葉だ。もう帰るだろう。
「じゃぁ…お休みのチュウしてくれたら、帰ります」
「……」
頬っぺたでいいですからと、目を瞑っている彼女。
オレは溜め息を吐きながら、彼女の唇に触れるだけのキスをしてやった。
「…!!」
驚いて声も出ない彼女を、無理矢理降ろし、じゃぁなと車を走らせる。
オレからしたら、キスなんてどうって事ない行為だ。
減るもんでもないしな。
「ククッ」
しかし、#name#の驚いた顔が最高に面白かったと、明日どんな顔でやって来るのだろうと、
いつの間にか、彼女の事ばかり考えていた自分に、オレは気付いちゃいなかったのだ。