マルコ先生ver
| ナノ
#10 私の厄日
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「はぁー」
「はぁーー」
「はぁーーー」
バコンッ
「真横で鬱陶しいのよ!」
「痛いな、もう」
「どうしたの?マルコ先生絡み?」
「ううん。違う・・」
「じゃぁ、な・・・」
「オレだろ?」
「・・・!!!近寄るな!!」
「あら・・・逃げた」
「フッ・・・」
「ちょっと待ちなさいよ」
もう。何なのよ変態ストーカーめ。
顔も見たくない相手なんて初めてだ。
変態に会った後は、何故かマルコ先生に会いたくなる。
そう。口直しだ。
会いたいな。でも昼休みに会いに行った事がない私は少し戸惑う。
しかし彼に逢いたい衝動には勝てず、既に足は彼の元へと向かっていた。
コンコン
「先生?お邪魔しますよ・・・」
控えめにノックをするも返事はない。居ないのかな?
昼休みの行動は、把握してないので居場所の検討もつかない。
残念。放課後また来よう。
扉に向かおうと足を向けた瞬間、僅かに布の擦れる音がした。
「・・・?ソファー?」
背もたれがこちらに向いている為分からなかったが、どうやらソファーに誰か居るらしい。
誰かって・・・マルコ先生しかいないと思うが。
「わぁっ寝てる・・・」
そこには案の定彼がいて、なんと無防備に眠りに就いていた。
私は顔の前に膝ま付き、彼の顔をまじまじと覗き込んだ。
いつもの切れ長で少し怖いイメージがある彼の目は、閉じているとまるで少年の様にあどけなく、その表情に胸がキュンとなる。
こんな無防備な寝顔を見せられたら・・・我慢できる筈がない。
寝てるから気付かないよね…
私は彼の唇に…は止めといて、頬にチュっと口付けて大好きですと囁き、真っ赤になっているだろう顔を隠しながら部屋を後にしたのだ。
「・・・・・まったく」
一気にご機嫌になった私は軽やかな足取りで教室に帰還した。
「あら、急にご機嫌になって」
「うん。凄くご機嫌です」
「単純ね。そうそう」
今日放課後、少し付き合ってと言ってきた友人。
「えー、放課後はダメだよ・・・」
「マルコ先生のとこ、行ってからでいいから」
「あ、そう?」
じゃぁ、一時間以内には戻るからと彼女と約束をし、ご機嫌なまま放課後を向かえる事になった。
「どっか行くの?そこまで行こうか?」
「そうね。じゃぁ、駅前のカフェにいるから」と、
彼女と別れ、私は大好きな彼の元へと急いだ。
「お邪魔しまーす」
「・・・・」
あれ?今日はいつにもまして冷たいな。
まぁ、いつもの事だと、既に定位置となった彼の横にくっつく。
「先生っ今日も素敵です」
「はぁ・・・どうもありがとよい」
机に向かい、すらすらとペンを走らせている彼はテストの採点中だった。これはあまり邪魔すると怒られそうだと踏んだ私は、ナミを待たしている事だし早めに退散しようと、
「忙しそうなので、今日はこの辺で退散しますね」
と告げ腰を上げようとした瞬間、
「わっ!?」
珍しい事に彼に腕を引っ張られ、また椅子へと座らされた私。
「マルコ先生?」
「#name#・・・。いや、何でもないよい」
気を付けて帰れと、いつもと様子が違う彼。
そんないつもと違う行動をされ、しかも腕なんて引かれたら帰れる訳がない!
「やっぱり帰りませんっ!」
そう告げていつもの如くしがみ付く。
「…そうかい」
「……?」
今日のマルコ先生はおかしい。
こ、これは…
あんな事やこんな事をしても、もしかしたら
"そうかい"で片付けてくれるかもしれない!
このチャンスをものにしようと、私は懲りずに彼に顔を近付けてみた。
前回はこの辺で、頭をガシリと掴まれて残念な結果に終わったのだが…今回は微動だにしない彼。
残り1cm足らずで彼と念願のキスをできたというのに、その不可解さに怯んだ私は顔を元に戻してしまったのだ。
「マルコ…先生?」
だって、怖い。いつもと様子が違いすぎる。
「なんだい?止めるのかい?」
「…!!い、いいんですか?」
「チャンスは一度だけだよい」
もうダメだと、ニヒルな笑みと共に言ってきた彼。
「先生!もう一度チャンスを…」
「世の中そんなに甘くないよい」
それからどんなに頼んでも首を縦に振らない彼を横目に、しぶしぶナミの元へ向かう私。
時間よ戻れ!とぶつぶつ呟きながら、彼女が待っているというカフェの扉を開く
「………ファック」
何故!何故ナミと変態が仲良くお茶をしている!?
「あ、来たわね」
「よぉ」
これはどう言う事でしょうか?と彼女に尋ねれば、
「私は、今日から恋のキューピットよ」
と言い出す友人。
キッと変態を睨む。
「どう丸め込んだの!?」
「別に…」
嘘だ!ナミは善意だけで動く筈がない!
はっ!!まさか…
「ナミ…幾らで雇われたの?」
「あら、バレた?」
そうして、強力な見方を取り入れた変態は、ニヤリと笑っていたのだ…
今日は絶対厄日だ…