碧に溺れて 第1章 | ナノ
#06 彼との出会い
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ローとの付き合いは順調だ
いつも一緒に帰り、たまにバラティエ、本屋なんかもよく行く。そしてローのお家。
私の家でもいいのだが、勝手知ったる我が家が落ち着くのだと、殆んどがローの部屋で過ごしている。
と言っても、ローとはあの日以来キスもしていない
あの告白の日のローは、別人なんじゃないかと思うくらい健全なお付き合いをしている。
まあ、別に不満は無いのだけど…
好きな女が横に居たら、理性が保てないと言っていた彼はどこへ?
そして今日は先生に頼まれ事をされ、昼休みに職員室へと階段を降りようとした処で、
「うわっ!!」
そう。あの日常茶飯事の出来事が起きてしまった。
しかも今回は階段だ。
落ちていく浮遊感の中、確実に怪我をすると覚悟を決めた瞬間…
「よっと、」
そんな声と共に、誰かに抱き上げられたのだ
助かった…と思いつつ、お礼を言わなければと未だに抱き上げている人物へと視線を送れば…
眠たそうな目に、鍛え上げられた身体、きれいに通った鼻筋…
そして…不思議な髪型をした人が目に飛び込んできて、私の思考は暫し停止してしまう。
「…あ、ありがとう御座います」
お怪我はないですか?
意識を取り戻し、一通りのお礼を述べた処で、
「っ! いや、大丈夫だよい」
あんたこそ大丈夫かい?そんな独特の語尾で話す彼から今度は何故か目が離せなくなってしまった。
「おぃ!マルコ!いつまで抱き締めてんだよ!」
変態バナナめ…などと言っている友達の呼び掛けに、マルコさんって言うのかなどと冷静に思っていると、
「うるせぃよぃ サッチと一緒にすんなよぃ!」
私の頭上で鬼の形相をしたまま怒鳴っているマルコさんに少しビク付きながらも、あたしも何時まで抱き締められているんだろうと身体を起こそうとした瞬間、 ズキッっと右足に痛みを感じた。
その痛みから捻挫でもしたかと頭を抱えていると、またもや頭上から声がする。
「ほら、立てるかい?」
さっきとは打って変わって、優しい顔のマルコさんに手を差し伸べられた。
「あ、はい。あ、でも私、このままもう少し座っていたい気分なので…」
どうぞ、お気になさらず行ってください。
少しシドロモドロになりながらも助けてもらった上に要らぬ心配をかけるわけにはいかないと、捻挫を悟られない様に笑顔を貼り付けて言えば、
マルコさんは眉間に皴をよせ、こちらを怪訝な表情で見ていた。
「…いいから、立てよい」
すると今度は、私の両脇に手を入れ立たせようとする彼。
そんな予想だにしなかった彼の行動に驚きの声をあげた瞬間、足の痛みに顔が歪んだ。
「どしたい? まさかどっか怪我したのかい!?」
どこだよいっと、身体をペタペタ触りだされる。
ここですかさずサッチさんが突っ込む。
「マルコ!!羨ましい事してんじゃねぇよ!」
そして問題の右足に触れた時…
「痛い!!」
私は顔を歪ませ叫んだのだった。