碧に溺れて 第1章 | ナノ
#03 相合傘
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入学式から暫く経ち、クラスの顔と名前が漸く一致してきた頃、初めて隣の強面主席くんに話し掛けられた。
「おぃ、シャーペンの芯よこせ」
初めて話し掛けられたと思ったら、何とも簡潔かつ俺様口調なその態度に私は眉間に皺が寄る。
しかしそんな私の不機嫌顔では、彼の凶悪顔に適う筈もないので、無理矢理笑顔を貼り付けて要望を叶えてあげた。
「…どうぞ」
恐る恐ると言っていい程ギクシャクした態度で彼に芯を渡すと、意外と可愛い顔でお礼を言われた。
そんな彼のギャップに胸が少しざわついたが、それが始まりとでも言うように、彼…トラファルガー君とはよく話す様になったのだ。
ルフィ達とは仲が良いようで、放課後よくサンジ君の実家であるお店に行っているとの事。
私やナミ達も彼らと共に過ごす事が多かったので、自然と、その放課後の定番に参加する事が日課になりつつあった。
そして今日もサンジ君のお店『バラティエ』にて
「腹減ったぁ〜」
「喉乾いたわ〜」
「ヤロー共はちょっと待ってろ!
ナミさん!#name#ちゃん!ちょっと待っててね! すぐにおいしいケーキと紅茶持って行くからね〜」
相変わらず目をハートにさせたサンジ君に、毎度の事だが、これまた冷めた口調で
「頼むわね」
と言い放つ彼女は、鞄から雑誌を取りだし読み耽っている。
サンジ君って尻にひかれるタイプだろうと、一人心の内で思いながらも、私も鞄を漁り出す。
そうして出てきた物は明日提出の課題だ。何故家ではなく、ここで課題をするかと言うと、勿論、解らない所があったら首席様トラファルガー様に聞けばいいからだ。
そして彼の出番がやって来た
「トラファルガー君、ココ!教えて」
「あ?お前…毎回毎回…金とるぞ」
「よくジュース奢ってるじゃない。ケチケチしてたらモテないよ」
「ふんっ、お前に心配されなくても女に困った事はねぇ」
初めはあんなに怯えていた私だが話すと意外と優しくそしていい人だと気付き、今ではまるで昔からの友達の様に接している。
そして、なによりトラファルガー君は非常にモテる。
顔良し、スタイル良し、頭良しときていればモテないはずかない。
しかも風の噂ではかなりのテクニシャンらしい。あくまで風の噂だ。
いつか彼の弱味を握ってやりたい。そんな小さな野望を秘めて、
「ジュースで勘弁してください」
これでもかと頭を下げお願いしてみる。
「しょうがねぇな」
至極面倒くさそうな態度の彼だが、いつも解りやすく丁寧に教えてくれる彼はほんとに優しいと思う。
でも彼に対して恋心は抱いていない
いや、抱かない様に心掛けている
ルフィやサンジ君、ゾロやウソップ君の様に、友達の関係が続けばいいなと思っているからだ。
でもそんな思いはあっさりと壊れる事になろうとは…
今日も今日とてバラティエにてワイワイと騒いでいると、
「うわぁ!雨降ってきたぜ!」
「まじかよ!オレ、雨に濡れると力がでなくなるんだよな」
「傘はあるが、数が足りねぇな、レディ優先だからヤロー共のはねぇょ」
そして、急な雨にそれぞれ家の近い者同士相合傘で帰ろうと言う事になり、
ルフィはお兄さんが迎えにき、ゾロはナミと、ウソップ君はロビンと、そして私は…
「いや、トラファルガー君とは家、反対だよね?」
「固い事言うな。このオレと相合傘なんて光栄に思え」
そうして私は、まったく意味不明な俺様発言をしているトラファルガー君と一緒に帰る事になってしまったのだった。