碧に溺れて 第1章 | ナノ


#01 衝撃的な彼




特に理由があって入った訳ではない。自宅からそんなに遠くないのと、仲の良かった友人が決めた学校に便乗しただけだった。

そんな私はこの高校で、これからの人生で掛け替えのない存在になる人と出会う事になる。





新たな生活の節目となる今日、肌を掠める心地良い風と、ポカポカと春の暖かい気候の所為で思考が定まらず、


「痛ーい!!」

教室の前の廊下にて、何もないというのに豪快にこけてしまうという、端から見ればお馬鹿丸出しの私からすれば日常茶飯事な出来事をやってのけた。

それを、中学からの友人ナミに同情と哀れみの目で見下ろされ、

「はぁ…、あんたは毎度毎度…早く行くわよ。入学式始まっちゃうわ」

「まっ、待ってよ」

急いで立ち上がり、手も貸してくれない友人を急いで追い掛ける。

日常茶飯事の転けに、ナミはいつからか手を貸してくれなくなった。
甘やかすと、あたしの為にならないらしい。

少し寂しい気持ちになるが、呆れる彼女の気持ちも分かる。


そうして訪れた体育館では既に式が始まろうとしており、急いでナミと共に席に着く。

定番の挨拶などが一通り終わった所で、新入生首席の挨拶が始まった。


「新入生首席の挨拶…トラファルガー君前へ!」

司会の先生の言葉に、やたら長い名前に疑問と興味が湧きながらも、前に立ち今まさに挨拶を始めようとする人物に注目した。

「うわぁ…」

思わず言葉を発してしまい、慌てて口を押さえた。主席と言うくらいだ。眼鏡を掛けた秀才的な人を想像していた。

しかし私の想像を遥かに越える目の前の主席さんは、恐ろしいくらい目付きの悪い、腕にびっしりと刺青をした風貌だった。
そうして気だるそうに首を回しながら、無言で立ち尽くしている。

「ねぇ、あの人がほんとに主席なの?」

小声で隣の友人に問い掛けながらも、挨拶を中々始めようとしない彼に再び視線を送る。

「…………」



一向に言葉を発っさない彼に、今度は少し心配してみた所で友人らしきキャスケット帽をかぶった彼が小さなメモを渡しに彼に駆け寄って行くのを目で捉えた。

それを受け取り、さも読まされていますという態度でメモを読み上げた主席くんは、何事もなかったかの様に席に着いてしまった。


あんな態度であの風貌。どこからどうみても危なそうな彼に、少しの恐怖とこの学校への不信感が植え付けられた所で式は終わった。


しかし人は見掛けに寄らないなと、私の洞察力もまだまだ甘いなと反省しながらも、あの衝撃的な彼に少しだけ興味を抱き、あたしの高校生活は始まったのだった。





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