碧に溺れて 第1章 | ナノ


#21 理性の限界




マルコside




以前、親父がフランスの町並みに惚れ込んで建てたホテルを思い出した。
オープン前に皆で泊まった時に見た夕陽が、ひどく綺麗だった事を思い出す。

少し距離はあるが、そう遠くはない。
#name#には、行き先は告げずに車を走らせる。暫くして見えたホテルの駐車場に車を停めると

助手席から、驚愕の声が聞こえる。その顔色を見ると、どうやら部屋にでも連れ込まれるとでも思っているらしい

それでもいいのだが(むしろ連れ込みてぇ)彼女はそんな事望んでいないだろう

オレは盛りの付いた犬じゃねぇ。連れ込むならきちんと同意を求める。


ここのプライベートビーチに行くんだと言ってやれば、あからさまにホッとした顔をしやがった


少し脱落気味な気分になりながらも取り敢えずフロントに顔を出しに行く
支配人と少し会話をしながら、一応(何があるかわからないからねぃ)スイートの部屋の鍵を受けとる


テラスへ出ると前と変わらぬ景色に、#name#は目を輝かせ感動している様だ。

夕陽に染まってなんとも幻想的な砂浜を暫く並んで歩く。
あそこのベンチにでも座ろうかと、少し歩き疲れたであろう彼女に問いかけ腰を下ろした。


「はぁ……なんだかこんな素敵な景色を見ていると、さっきまで泣いていたのがどうでもよくなってきました」と言う彼女の言葉に

それは何よりだと、連れて来た甲斐があるってもんだと頬が緩んだ。


こんなシチュエーションの中限界ぎりぎりまできている理性を抑えてるオレを…
誰か褒めてもらいたい


取り敢えず、彼女は今後どうするのか聞いてみよう。まずはここからだ…
それから、彼氏の元へ戻ることのないよう策をたてなければ…

だが、彼女の答えは曖昧なものだった。

まぁ、たしかに答えを出すには早過ぎるねぃ…考える時間も与えていなかった事に気付く


それならば、今も変わらず思っているのかくらい分かるだろう。
まぁ、聞かなくても答えは分かりきっている事だが…

少しの沈黙の後、#name#の口から”好き"と言う言葉を聞いたと同時に、分かりきってたとはいえ心が沈んでいくのがわかった。

聞いておきながら聞きたくない言葉だ。


だが、次の言葉でオレのぎりぎりだった理性の糸がプツリと切れたのだ。

”わからない”…そんな夢にも思わなかった言葉に、頭より先に体が動いた。
この…愛しくて堪らない存在を思うがままに抱きしめたのだ。

体が勝手に動く中、キスをしようと顔を近づける…と同時にはたりと理性が戻ってきた。

拒まれたらどうする?キスをした後、頬をたたかれる可能性だってある。

女に拒まれた事なんかないオレは、拒まれた後の彼女の行動に竦み上がった。

惚れた女に拒まれた時の悲しみはきっとオレが思っている以上に辛いに違いない。


だがここまできて止める訳にもいかない…

彼女に選択権を与えてみよう。自分の逃げ道を作る為でもあるが…

”嫌なら、拒め”と何とか口にし、彼女の答えを待つ…

そんな…オレらしくない考えをめぐらせていると、抱きしめている腕が僅かに震えた

人は恋をすると、ここまで臆病になるものなのかと…自分を嘲弄していると



ゆっくりと目を閉じていく#name#を捉えた刹那、再びオレの理性の糸は完全になくなってしまったのだ



惚れた女とのキスは、こんなに良いものだったのかと、我を忘れる程#name#の唇を味わった

今までこんなにキスに熱狂した事はなだろう。

何度も角度を変え、啄むようなキスを何度もし、割れ目にそって舌を這わせればうっすらと口が開く。
そこからねっとりと舌を差し込めば、突然の異物に#name#は身をよじった
だが離すばずもなく、頭に回している腕に力を込める


暫く堪能した後、ゆっくりと唇を離すと…少し潤んだ目と、しっかりとオレの胸元を掴んでいる姿に、#name#への気持ちがじわじわと高揚していくのを感じた。


今日は、このまま#name#を帰す気なんて…微塵も無くなっちまったオレは

彼女がどんなに嫌がろうと、泣き叫ぼうと、知ったものかと、#name#の耳元で
今日は、帰さないと呟いたのだった。


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