碧に溺れて 第1章 | ナノ
#19 シンデレラ街道
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マルコ先輩に今度はオレに付き合え、と言われグイグイと引っ張られていく
家へ帰るつもりだったが、こちらも付き合ってもらったのだ、断る訳にはいかない。
私もとことん付き合ってやろうではないか。
「車を持ってきてくれ」
そんな声にマルコ先輩を見あげると、通話中だった
いつの間に…と思いながらも、ドライブにでも行こうかと言う誘いに素直に行きたいと頷く。
綺麗な景色でも見て、憂さ晴らしをするのも必要だと。
助手席に乗せられ、なにげに運転中のマルコ先輩を見つめる。
二つしか歳が離れていないにも関わらず、凄く大人な人だと思った。
先程の話といい、立ち振舞いといい、自分をしっかり持っていて全てを託してしまいたいと思わせる何かがある。
何より、他人とは明らかに違うオーラを漂わせているのだ。
以前会った時はそんな事微塵も思わなかったのに、ローと言う彼との仲が危うくなった途端、優しくしてくれる男性に興味を持つなんて―
私もなかなか現金な女だなと。
そう言えば…
「マルコ先輩は、彼女はいないんですか?」
私としたことが重要な事を聞いてなかった。
「ハハ…いる訳ねぇだろい」
居たら、#name#を追いかけて胸なんか貸さねぇよぃ。そう告げる彼に少しホッとした。
それもそうだなと、私もいたらビックリだ…
いるなんて言われたら、とんだプレイボーイと見た。
「そうですよね…ハハ…」
わ、話題を変えよう。
「あ、マルコ先輩。どこに連れてってくれるんですか?」
「ん、取り敢えず…着替えようかねぃ」
お互い制服のままじゃ動き辛いだろうと、そうして何だか高そうなお店の前に車を停めた彼。
「え、買って着替えるんですか?」
生憎、服を一式買うお金なんて持ち合わせていない。
「おう。金なら心配すんなよぃ。オレが全身コーディネートしてやる」
そう言いながら、断り続ける私の手を先程よりも強く引っ張って行くマルコ先輩。
服なんて買ってもらったら、それこそマルコ先輩に頭が上がらないじゃないか…
そんな私の心中などお構いなしに、何やら服を物色している彼に困惑な眼差しを向ける。
「これがいいねぃ。#name#!これ着てみろよい!」
そんな視線をものともせず、またもや強引に服を押し付けられフィッティングルームに押し込まれた。
前にも思ったが、ここは何を言っても無駄だろう…
そう確信し渡された服に目をやった。
うん。こういう服は嫌いじゃない。むしろ好きな方だ。そうして着替えながら何気に値札に目をやると…
ワンピースが九万円!!
何と高い店に連れてきてくれたのだろう…。
カーディガンと靴まで合わせると、…。
一介の高校生が易々手を出せる代物ではない。
車の時も思ったが、見た事もない高級外車だった。
マルコ先輩って…お金持ちなんだなぁ。
何者なんだろうまったく。
そんな疑惑を思い浮かべながらも、着替え終わった私は高い服に恐縮してオロオロと外に出た。
するとマルコ先輩も着替えており、
「よく似合ってるねぃ」
オレの見立ては中々だろう。行くよいと手を取られ車へ向かう。
「マルコ先輩…こんな高い服…申し訳ないです」
自分には敷居が高すぎますと言えば、
「何言ってるんだい、女は着飾るのも大切だよぃ」
少し位高いもん身に付けて、背伸びをすればいい。
そうやって、女を上げていくんだよい。
またまた大人発言だ。
たしかに、安い服より高い服を着た方が気分も変わるだろう…
身なりは大切だ。
そして私は、本日二度目の衝撃発言を聞く事になる。
「オレが、これから#name#を最高に良い女にしてやるよい」
悪戯な笑みを浮かべて、その愛の告白とも言えそうな言葉を口にするマルコ先輩に私の心臓は破裂するんじゃないかと思うくらい、煩く鳴り響いていた。
その時…
私の心臓と同じくらい煩く震えている携帯電話に、
私は…気付く筈もなかったのだ。