碧に溺れて 第1章 | ナノ
#17 未知の生き物
「男は浮気する生き物だよい」
そんな衝撃発言をしたマルコ先輩を、唖然とした顔で見てしまった。
女の口から聞くのと、男の口から聞くのとでは、随分と受け止め方が変わってくる。
そんな、さも自分も浮気しますよ的な言葉に、マルコ先輩の人格を疑った…
「あぁ…#name#はどこからが浮気だと思うのかい?」
私の唖然とした顔をものともせず、話を進めていく彼。
「えっと…、キ、キスしたりとか…ですかね…」
「そうだねぃ、まぁだいたいセックスに繋がる行為をしたら…浮気になるねぃ」
それからマルコ先輩は話しを淡々と進めていった。
まず、男の源は性欲だ。から始まり、性欲の薄い男は全てにおいて器が小さい。など…
なにも、彼女を傷つけようと思って浮気をしているのでは無いんだと。
「こんな言葉があってねぃ」
「本当の男を知らない女ほど、男の浮気を許さない」
「どう思う?」
私は言葉に詰まった…。
浮気をされたらとても悲しいし、絶望感さえ感じる。そう、今の私だ…
それに、先程の言葉を否定したら…本当の男を知らない可哀想な女です。と言っている様なものじゃないか…
まぁ、実際威張れる程の恋愛経験はないのだが…
未だに黙っている私に、
「じゃぁ、話を変えるよい」
そもそも男と女のセックス概念が根本的に違うのだと。
例えばと…、マルコ先輩は例をあげてきた。
男のセックスは芸術だと、セックスはいわば作品作りで、それは射精をもって完成する。そして絵画を売ってしまうように必要なくなる。
何とも自分勝手な生き物だ…。
しかし、女は違うのだと。女は描かれた絵画の方であり、一度描かれた絵の上に、違う男にまた絵を描かれてもそれも全て体に残ってしまう。消せないのだと。
だから罪悪感が残るのだと。
男の体は都合のいいように出来ているのだと。
何とも難しい話だ。
これを理解するのには私は子どもすぎる。
何故なら、経験が乏しいからだ
「まぁ、要は男にとって、女ほど浮気は大した事じゃないって事だい」
「だが、ばれたら問題だねぃ…傷付くのは女だ。まぁ、ばれても浮気であって本気ではないと、きちんと女が納得するまで話せる男かどうかだねぃ」
浮気をしない男なんて居ないんだと、しないやつはモテない男か、性欲が薄い器が小さい男か、生身以外の女(AV等…)で満足できる変態か…
そんな絶望的な言葉を言ってきたのだ。
「マ…マルコ先輩もするんですよね?浮気…」
そこまで言うのだから、彼もするのだろうと聞いてみた。
「…するかもしれないし、しないかもしれないねぃ」
そう口にする彼は、何とも悪い笑みを浮かべながら、ニヤリと笑っていた。
そんな、私にはハードルの高い話を聞いて家に帰ってゆっくり考えてみようと思った矢先…
「さて、今度はオレに付き合ってもらおうかねぃ」
と、手を握られ、なかば引きづられるようにして歩き出したのだ。