碧に溺れて 第1章 | ナノ


#16 二択の行方




ローside





ひたすら走った
こんなに走ったのは久し振りだ

#name#の行きそうな場所、今の心境だと…人気の無い所だろう


思い付く場所を全て回った。トイレにでも入ったか…ならば見つかるはずがない。

#name#の性格からして、大勢の前で泣くわけがない。教室はさすがに…だが、まさかの期待を込めて足を向けた。


ほら…居ねぇ…


未だ教室の入口で突っ立ってるオレに、話した事もないクラスメートの女がオロオロと話しかけてきた


(あ、あのう…トラファルガー君)


チッ…オレは舌打ちとともに女に威圧的な目を送った


(…っ!もしかして…#name#ちゃん探してるんですか?)

#name#ちゃんなら鞄持って、校門の方へ走って行きましたよ。

オレの威圧的な目に初めはビクッとしていたが、明らかに人探しをしているオレの様子に、声を掛けてきたのだろう…


「!!」


その言葉を聞いた途端、オレはまた走り出した

そうだな…学校を出るのが一番安全だ…

そんな事を考えながら校門へと走る

校門を出ると道は二つ
左か右か…

右か…
嫌、左だ。オレはそう確信した

左に行けば駅がある。
#name#は電車通学だ。ほぼ家に帰ったで間違いないだろう
一人になる絶好の場所だ


そしてオレは再び走り出したのだ



電車に乗り、三つ目の駅で降りる。#name#の家はここから歩いて十分程だ。

#name#の父親は海外で仕事をしており殆ど留守だ。
母親もしょっちゅう父親の元へ行っているらしく、#name#は一人暮らしに近い。

今日も確か一人の筈だ。
ゆっくり話すのには都合がいい

家の前に着きチャイムを鳴らす。

応答は…ない。

まぁ、居たとしても出てくる確率はないに等しい

そうだ…携帯。
忘れていた。まず携帯にかけるのが一番ではないか。

「プルルル…プルルル…」


コールが20秒程鳴ったところで留守伝に変わる。

あまり何度も電話を掛けるのは好きではないが、この状況ならしかたない。
暫くして再度電話を掛けた。


三度目の電話をした処で、恐らく何度掛けても出ないだろうと、オレは携帯を閉じた。


だが、今日は必ず会わなければいけない。
こういうのは時間が問題だ。
時間があけば、要らぬ考えまでしてしまう。


だが…もしかしたらまだ帰って来ていないかもしれない。

家に居たとしても、暗くなればいずれ電気を付けるだろう。
そうすれば無理矢理にでも入ってやる…。


オレは家の前で待つ事にした。一応、メールをいれておこう

「話がしたい。家の前で待っている」と。

送信ボタンを押す寸前で手を止めた。

止めておこう。今はオレに会いたくない筈だ。

家の前で待っているなんてメールをすれば、電気をつけないかもしれない。
ましてや帰ってないのなら、家には近づかないだろう…

そんな事を思いながら
(ダセェな…オレは…)
自嘲気味な笑いと共に溜め息がでた。






もし…あの時…
左ではなく、右に行っていれば…

オレ達の運命は、変わっていたのだろうか…





「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -