碧に溺れて 第1章 | ナノ
#16 二択の行方
![](//static.nanos.jp/upload/j/jyuira/mtr/0/0/20110915235804.gif)
ローside
ひたすら走った
こんなに走ったのは久し振りだ
#name#の行きそうな場所、今の心境だと…人気の無い所だろう
思い付く場所を全て回った。トイレにでも入ったか…ならば見つかるはずがない。
#name#の性格からして、大勢の前で泣くわけがない。教室はさすがに…だが、まさかの期待を込めて足を向けた。
ほら…居ねぇ…
未だ教室の入口で突っ立ってるオレに、話した事もないクラスメートの女がオロオロと話しかけてきた
(あ、あのう…トラファルガー君)
チッ…オレは舌打ちとともに女に威圧的な目を送った
(…っ!もしかして…#name#ちゃん探してるんですか?)
#name#ちゃんなら鞄持って、校門の方へ走って行きましたよ。
オレの威圧的な目に初めはビクッとしていたが、明らかに人探しをしているオレの様子に、声を掛けてきたのだろう…
「!!」
その言葉を聞いた途端、オレはまた走り出した
そうだな…学校を出るのが一番安全だ…
そんな事を考えながら校門へと走る
校門を出ると道は二つ
左か右か…
右か…
嫌、左だ。オレはそう確信した
左に行けば駅がある。
#name#は電車通学だ。ほぼ家に帰ったで間違いないだろう
一人になる絶好の場所だ
そしてオレは再び走り出したのだ
電車に乗り、三つ目の駅で降りる。#name#の家はここから歩いて十分程だ。
#name#の父親は海外で仕事をしており殆ど留守だ。
母親もしょっちゅう父親の元へ行っているらしく、#name#は一人暮らしに近い。
今日も確か一人の筈だ。
ゆっくり話すのには都合がいい
家の前に着きチャイムを鳴らす。
応答は…ない。
まぁ、居たとしても出てくる確率はないに等しい
そうだ…携帯。
忘れていた。まず携帯にかけるのが一番ではないか。
「プルルル…プルルル…」
コールが20秒程鳴ったところで留守伝に変わる。
あまり何度も電話を掛けるのは好きではないが、この状況ならしかたない。
暫くして再度電話を掛けた。
三度目の電話をした処で、恐らく何度掛けても出ないだろうと、オレは携帯を閉じた。
だが、今日は必ず会わなければいけない。
こういうのは時間が問題だ。
時間があけば、要らぬ考えまでしてしまう。
だが…もしかしたらまだ帰って来ていないかもしれない。
家に居たとしても、暗くなればいずれ電気を付けるだろう。
そうすれば無理矢理にでも入ってやる…。
オレは家の前で待つ事にした。一応、メールをいれておこう
「話がしたい。家の前で待っている」と。
送信ボタンを押す寸前で手を止めた。
止めておこう。今はオレに会いたくない筈だ。
家の前で待っているなんてメールをすれば、電気をつけないかもしれない。
ましてや帰ってないのなら、家には近づかないだろう…
そんな事を思いながら
(ダセェな…オレは…)
自嘲気味な笑いと共に溜め息がでた。
もし…あの時…
左ではなく、右に行っていれば…
オレ達の運命は、変わっていたのだろうか…