碧に溺れて 第1章 | ナノ
#13 崩れ落ちる
ローside
昼休みになり、軽く腹に物を入れた後、普段人気のあまりない校舎の片隅で誰にも邪魔されず昼寝でもしようと足を運んだ
階段を上ろうとした所で、後から話しかけられる
「ロー!」
明らかに#name#ではない女の呼び掛けに、シカトしようと振り向きもせず階段を上り踊り場まできた所で
「待ってよ!」
と腕を絡ませてきた
あからさまに舌打ちをし、ベタベタとくっついてくる女を見る
「ああ、前に一度抱いた女か」
名前は知らねぇが…
オレは今まで自分から女を誘った事がない
勝手に女の方から寄ってくるのだ
だからいちいち名前なんか覚えちゃいねぇ
#name#と付き合う前までは、鬱陶しいが…まぁ、気が向いた時に相手をしてやっていた
が、今は違う。
#name#以外の女と関わるのも触れるのも御免だ
そんな不機嫌極まりないオレに、未だ引っ付いている女に睨みを効かせると
「もう、そんな怖い顔しないでよ」
今度は首に腕を絡ませ抱き着いてきた
「ね、抱いてよ」
耳障りな甘ったるい声で甘えてくる女を見ながら
「…あぁ」
と、ため息混じりの声が出てしまった
これは決して(抱いて)と言う女の言葉に肯定したわけではない
これが#name#だったらいいのにと、そう言えばあの日以来キスもしてねぇなと、目の前の女をシャットアウトして思いふけっていると
唇に柔らかい感触がした
それと同時に、人の気配がしたと思いそちらに目を向けると…
今にも泣き出しそうな、信じられない物でも見たような
何とも言えない顔つきで立ち尽くしている#name#が居たのだ
咄嗟に女を引き剥がし
「#name#!」
普段出したことの無い大きな声で呼んだのはいいが
バタバタと走り去って行く彼女の後を追いかける事が出来ないでいた
頭では早く追いかけろと、全くの誤解だと、煩いほど言っているのだが
オレの足は、床に縫い付けられてんじゃないかと思うくらい…ピクリともしなかったのだ
それと同時に…オレの中で大切なものが消えていく…まるでやっと完成したパズルがガラガラと音をたてて崩れ落ちて行く感覚に覆われた
#name#…
もう一度、愛しい彼女の名を絞り出した様な声で呼び
とにかく、立ち尽くしている場合ではないと…
重い体に鞭をいれ、彼女の後を追い掛けたのだ