碧に溺れて 第1章 | ナノ


#12 心の憂鬱




まさかの私の登場に、抱き着いていた女の人を勢いよく引き剥がした彼は目を見開いて唖然と立ち尽くしていた。

そんなローに掛ける言葉も見付からず、私は逃げる様にその場を駆け出した。


「#name#!!」

大きな声で呼ばれたが、振り向くはずもなく、ましてや彼からの謝罪や誤解だの言葉なんてものも今は聞きたくない。


ただ教室まで走り、鞄を掴むとまた走った。
全力疾走だ。

この時、私はスゴイ顔をしていたのだろう…
今思えば、すれ違う人みんなに驚きの顔をされていた。

そうして、あと少しで校舎から出るという所で、勢いよく誰かにぶつかってしまう。

サッチ先輩だ。

「#name#ちゃん?どうしたの!?泣きながら走っ…」

話の途中のサッチ先輩にごめんなさい!とだけ告げまた私は走り出した。


今は誰とも話したくないし居たくない。

先輩には悪いが、涙に免じて許して頂きたい。



そうして学校を飛び出した私は、少し走った後、海へと続く大きな川の河川敷に身を投げるようにと寝そべった。

何も考えたくないな

そう思っても、先程見た衝撃的映像が頭から離れる訳もなく

どうなるんだろ、私逹

あまり思考回路が定かでない頭で考えていた。



ナミが前に言っていた
『男ってもんは浮気する生き物なのよ。上半身と下半身が別の生き物なの』


まぁ、分からないでもないけれど…

実際の恋愛経験は無いに等しいが、恋愛関係の本はたくさん読んでいる。

女とはこうあるべきだ。こんな男を選べ。などためになるのか定かではない知識だけはある方だ。

だが、現実問題いざ自分事となると話しは別だ。
やはり知識だけでは対応しきれない。
しかも、見たくもないのにバッチリ目撃している。


浮気ならいいよ。出来心なんでしょ?

などと言える程、私は肝の据わった女ではないし大人ではない。


何十年も連れ添った夫婦でもあるまいし…

しかも私には手を出してこないのに、なぜ他の女を抱こうとするのか!?

全く意味不明だ。


私に何か問題があるのだろうか?

自慢じゃないがスタイルは良い方だ。ナミやロビン程ではないが胸だって十分にある。

しかし、そう思わずにいられない。

現にローは手を出してこないのだから…


そんな、考えても何も解決しなさそうな今の状態に目をつぶって、このまま少し寝てしまおう。
そう思った矢先


「見つけたよい」


独特の語尾で話すあの人の声がしたのだ。




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