夢に出てくるのはいつも同じ場所だ。
楽園と呼ばれる土地。空中庭園。永遠の極楽を約束する別天地。
その場所の真実を知るのはごく僅かの人々で、一握りの選ばれた馬鹿者たちだ。
「被験体が限界をこえました」
「こいつも駄目か……個体値は一番良かったのにな。仕方ない、処分しろ」
「はい」
 すべてが真っ白な世界で、何本も液体が入ったカプセルのようなものが等間隔に並んでいる。
複雑なパネルを操作して、助手と呼ばれる白づくめの男が中にいたモノを排出した。それはそのまま地上に繋がったパイプで真っ逆さまに落ちていく。空中都市の下の大地は、そんな腐敗したモノで覆われていた。何個も何個も、失敗と判断されたモノは捨てられていく。排除されていく。
「残ったのはあの出来損ないか?」
「はい……それなのに、すべてのテストに耐えました。なにか特別な抗体でも持っているのでしょうか」
「わからんな。――実験を、続けよう」
 隅で縮こまっていた少年を、二人はじっと見つめる。博士と呼ばれる彼は爬虫類のような瞳でひたすら、少年をただの物のように見つめる。
ここでは、身分を持たない個体などただの実験道具でしかない。真民と呼ばれる身分の者だけが人間だと見做される。それ以外はすべて無用のものか、実験の道具としか思われない。奴隷よりももっと性質が悪い。個性や自我を否定された者たちは、ひたすらに表情を消して道具に徹して生きている。
空中都市は見せかけの楽園だ。それはこの都市で生きる者しか知らない事実。
地上の人間は、真実を知らないまま、空中の地獄に憧れる。








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