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恋人のもとの平等



なんだか今日は恋人が、妙にぶすくれていて、おいおい勘弁しろよ、特別な日だぞ、と俺は思うわけだ。
ケーキも食べたし家族からも友人からもその他諸々、色んな人から祝福された。運命の人が目の前にいる以上女の子にモテたいと考える必要もない。
喧嘩腰で問いただせばじっとりとした目のままこちらを向かれる。そんな姿を可愛いとも思う。

「だってなんでおえは八月うまえなのに、二月うまえのもいやまさんよい年下なんですか」
「生まれた年が違うからだろ。…いや、年は同じか」
「うぅぇっ」
「へんな顔すんなよ…六ヶ月も同い年なんだからガマンしろって」

ぽんぽん頭をはたいてもいつものように怒ったりしない。全く突然なんなんだろう。
年齢がどうとか、そういうことを気にするような奴じゃないと思っていた。この分だと卒業式もぐずられるかもしれない。

「おえ、もいやまさんのこと大好きっすからね」
「知ってるよ」
「ほんとにほんとに大好きなんっす」
「ありがとう」
「でもおえ…うぅ」

丸まった背中を叩いて続きを促す。だぶん今、早川は涙を零さないように食いしばってるんだろうなあ。

「かえしが年下だと、カッコつかないじゃないですか」
「そんなこと気にしてたのか、お前」
「そんなことじゃない。おえはもいやまさんより身長が低かったらきっとぎいぎいまで告白もしてませんでした」
「たった四センチで?案外ロマンチストだよな、お前」
「もいやまさんこういうの好きでしょ」

もいやまさんが世界で一番好きだかあ、おえはもいやまさんにもっともっと好かれようと必死です。
鼻の頭と目元を赤くしてようやくこちらを向く。やめろよ上目遣い。可愛いから。

「…お前はちゃんと格好いい彼氏だよ、馬鹿だなあ」

バカじゃないっすよぉ。堪えきれなくなったのか、ぽろっと涙がこぼれてしまって、ばっと慌てて目元を拭うもんだから、思わず笑ってしまった。

「俺もお前が宇宙で一番大好きだよ。ありがとう早川」




140310



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