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日記のような独り言

笠松先輩、愛してる。


ずっと
その一言が重荷だった。
その響きに苛立った。
その光が気色悪かった。

寝起きの、自分が今どこにいるのかわからないあの感覚。
分かってるはずなのに、見失いたいままでいたい。もう一度眠ってしまいたいような。
夢だったら良かったよ。そう思うのは俺だけか。どれだけ考えたって時間は進まないんだから。


「お前は愛を過信してるんだと、俺は思う。黄瀬」
「なんで?」
「お前は、なんでもかんでも愛してるからとか、愛があるからとか、愛、愛、愛で全部片付けるだろ」

だったら愛ってなんなんだ。愛ってそんな便利なものだったけか。
お前はその答えを見つけぬままに、俺へそれをぶつけてきたのか。
それは、不誠実とは違うのか。

俺は黄瀬を攻めた。言葉で絞めた。視線で刺した。
黄瀬は俺を閉じ込める。手で口を塞ぐ。眼蓋をそっと下ろす(俺は死人じゃない、と、思う)。

「…よくわかんないっスよ。だって愛だと思うんだもん…そういうの、ダメっスか?」
軽薄な声だろう。そこに嘘はないのだろうけど。
「駄目だとは、言ってないだろ。ただ納得はいかないし受け入れ難いよ」

宛てがわれた手の、指をゆるうり噛んで外す。眼蓋を持ち上げることを咎められたりはしなかった。
黄瀬は、そっと笑んで、俺を見ていた。困惑。

わからないんだ、手にも取れないもの。目にも見えないもの。お前それ、手放しで喜べるのか。
そんなもんに苦しんで、一喜一憂して振り回されるの、気持ち悪くないのか。
だったら愛ってなんだよ。誰のための愛だ。楽しいのか、それ。真心なんて戯言だよ。きっと。


「先輩は怖い?」
「多分な。そうなんだろうな」
「あっは、先輩幽霊とか信じてないでしょ」
「お前...よりにもよって、幽霊と愛を同じに語るのかよ」
「やだ、言葉のアヤじゃないっスか」

けらけら。お前は楽しそうに笑うよ。俺には不可解極まりないよ。
こんな曖昧なもの、夢だったら良かったのにな。



俺もお前を愛してる。だなんて。




はいはいこじつけおつおつー^^
愛について哲学したことを笠松さんにやらせてみました。考えろ。悩んだところで答えはない。黄笠ちゃんの日おめでとう。
131111




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テーマ「人外ファンタジー」
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